追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

104 / 104
第18話(2)奸計-弥生と紫黄里-

同じころ

 

 辰馬弥生は、レストランの外に出ると、正面に見える山を見上げていた。

 

「うーん!やっぱり山はいいなぁ!あー、久々にキャンプしたいなぁ…」

 

 弥生はひとり、誰もいない中で背中を伸ばしながら能天気に言葉を発する。そんな彼女が目を山から地上に向けると、黒い翼のようなものが、車の間をしゃがんで隠れながら山の方へと歩いていくのが見えた。

 

(…うん?なにあれぇ?)

 

 弥生は目を凝らしてその黒い翼を目で追いかける。さらに、黒い翼の進んでいく先に、紫色の悪魔の背中が見えた。

 

(あの羽は…えっと…紫黄里、ちゃんだっけ?じゃあ、あの子、ひとりで悪魔を追いかけてるのかな?危ないから止めてこよ)

 

 弥生は単純にそう思うと、黒い翼を追いかけ始めるのだった。

 

 

 柳生紫黄里は、車の影に隠れながら、ポラリスを追って山道の入り口までやってきていた。

 紫黄里は車の窓越しに、山の中に入っていくポラリスを見つめる。

 

(よし、追いかけ…)

 

「やっほー、紫黄里ちゃん」

 

「!!?」

 

 立ちあがろうとした紫黄里の背後から声が聞こえてくる。紫黄里は驚いて声をあげそうになったが、それを堪えながら振り向くと、弥生が平然とした笑顔で立っていた。

 

「なにやってるの?ひとりじゃ…」

 

「しっ!!」

 

 話を続けようとする弥生の口を慌てて塞ぎ、背中越しに去っていくポラリスの姿と弥生の顔を交互に見ると、紫黄里は慌てた様子で状況を説明し始めた。

 

「弥生さん、今、敵を追跡中なの…!だから、邪魔しないで…!」

 

 紫黄里が切羽詰まった小声で言う。しかし、弥生はすぐに自分の口を塞いでいた紫黄里の手を外すと、いつも通りのトーンで話し始めた。

 

「でも、紫黄里ちゃん、ひとりで追いかけたら危ないよ?」

 

「いや、それは、そうなんだけど…!でも、でも…と、とにかく、追いかけないと!」

 

「あ、ちょっと!」

 

 紫黄里はそう言うと、弥生の制止も振り切ってポラリスが歩いて行った山道へと走り出す。弥生もそんな紫黄里の後を追って山を駆け上がっていくのだった。

 

数分後

 ポラリスは、山の中腹にある木々に囲まれた広場にやってくる。その広場の中には、1階建ての山小屋のようなものがあり、ポラリスは何も言わずにその山小屋の中に入っていく。周囲に悪魔の姿はない。

 近くの草むらに潜んでいた紫黄里と弥生も、当然そんなポラリスの後ろ姿を目撃していた。

 

「あの小屋が悪魔の拠点…あれくらいの大きさなら、そんなに数もいないはず…!ここでポラリスを倒せば勝ちに近づける…!」

 

 紫黄里はそう呟くと、草むらから立ち上がってポラリスの後を追いかけようとする。しかし、隣に座っていた弥生が紫黄里の腕を引いてそれを引き留めた。

 

「待って待って。さすがに一旦戻ってみんなを呼んだ方がいいよ、危ないって!」

 

「でも、今じゃないと…!敵も増えちゃうかもしれないし…!倒すなら今しかないよ!」

 

「そうかなぁ…そうかも…でも…うーん」

 

「と、とにかく、行くね!」

 

「あ、ちょっと!」

 

 紫黄里は言うが早いか、左手に武器である弓を発現させながらポラリスの入っていった山小屋へと走り出す。弥生は紫黄里を引き止めようとしたが、間に合わず、結局弥生も紫黄里とともに山小屋へと走り始めた。

 

 山小屋の扉の前まで走ってきた二人は、軽く周囲を見回して敵がいないことを確認する。弥生が扉から少し離れてライフルを構えたのを見てから、紫黄里は扉を肩で押し開け、小屋の中に突入した。

 

「ポラリス、覚悟っ!...って、え…?」

 

 紫黄里は小屋の中に入るなり声を上げ、弓矢を構える。弥生も少し遅れて小屋の中に入り、ライフルを構えたが、すぐにその小屋の中の「異常」に気がついた。

 

「誰もいない…?」

 

 弥生が小さく呟く横で、紫黄里は状況を理解しきれないまま、建物の2階などにも目をやるが、やはり誰もいない。中にあるのは木製のテーブルと、暖炉、そして東西の向きにあるふたつの窓のみだった。

 

「そんなはずない、さっきポラリスは中に入ってた…!きっと、そこに…!」

 

 紫黄里はそう言って暖炉を覗こうとする。しかし、弥生はそんな紫黄里の腕を掴んで止めると、窓の外を指差した。

 

「紫黄里ちゃん、やつは、あそこにいるよ」

 

「え?」

 

 紫黄里は弥生の指さす先を見つめる。ガラスの窓越しに見えたその先には、ポラリスの姿と、その背後に無数に立ち並ぶ悪魔たちの姿だった。

 

「う、嘘…なんであそこにいるの…!?しかも…この状況…もしかして、囲まれてる…!?」

 

 動揺する紫黄里を気にせず、弥生は山小屋の扉を閉めると、そこにワイヤーを張って罠を仕掛け始めた。

 

「そうみたいだねー。私たち、罠にかけられちゃったみたい。とりあえずここに籠るしかなさそう」

 

「そ、それは、そうですけど、なんでそんなに冷静なんです…!?もっと慌てたりとか…」

 

 紫黄里が平然としている弥生に驚いていると、西側の窓ガラスが甲高い音を立てて割れる。思わず紫黄里がしゃがみ込みながらそちらを見ると、2体の悪魔が窓枠を乗り越えて侵入しようとしていた。

 

「…!」

 

「紫黄里ちゃん、追っ払って!」

 

「は、はい!」

 

 弥生の指示を受けると、紫黄里は慌てて弓の弦を引き絞り、入ろうとする悪魔に対して弓矢を放つ。

 弓矢が悪魔の体に突き刺さると、悪魔はまるで痺れたかのようにその場で動きを止める。

 紫黄里は、改めて弓を引き、悪魔2体の眉間に弓矢を放つと、悪魔たちを黒い煙に変えた。

 

「よし…こんな感じなら…」

 

 紫黄里が小さく呟いた直後、今度は反対側の窓ガラスが割れる。紫黄里が音に驚いていると、新しい悪魔が3体、窓枠を乗り越えて小屋の中に入ろうとしていた。

 

「下がって!」

 

 紫黄里が動けないでいると、弥生がライフルを構えて引き金を引く。弥生は霊力で作ったライフルの引き金を引くたび、存在しないはずの空薬莢を手動で排出する。

 そんなことを3度やっているうちに、悪魔たちは黒い煙に変わっていた。

 

(す、すごい…動いてる相手の頭を、あんなに的確に撃ち抜いてる…)

 

「紫黄里ちゃん!後ろ!」

 

 弥生に言われると、紫黄里はすぐさま振り向く。今度は、窓枠を乗り越えて4体の悪魔が入ろうとしてきていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

現代に帰還したら、災厄級の従魔たちまで付いてきた~俺を溺愛するヤンデレ従魔たちの無双が晒された結果、魔王だと勘違いされて大バズりしています~(作者:むらくも航@書籍&コミカライズ発売中)(オリジナル現代/冒険・バトル)

少年『久遠カナタ』は転移した異世界から現代日本に帰還した。だが、現代では一日しか時間が経っておらず、色々と不思議な事が起こっていた。▼ダンジョンが出現していたこと。▼ダンジョン配信が流行していたこと。▼そして何より、異世界から従魔達が付いてきたこと。▼現代の魔物に比べ、最強の従魔達は明らかに過剰な戦力だ。従魔が暴走する度、主のカナタは勝手に崇められ、大きな注…


総合評価:209/評価:-.--/連載:57話/更新日時:2026年04月08日(水) 07:06 小説情報

TS転生系Vtuber、時々ダークヒーロー【第一部完結】(作者:ムーンフォックス)(オリジナル現代/冒険・バトル)

TS転生しました!! Vtuberになりました!! でもダークヒーローになるなんて聞いてないんですけどォッッ!?▼ ※本作は特殊タグを多く使用しております。ご注意ください。▼ 第一部完結しました。ありがとうございます。


総合評価:678/評価:7.16/未完:19話/更新日時:2026年03月16日(月) 15:00 小説情報

底辺Vtuber昔やり込んだロボゲーの続編でバズり散らかす(作者:ロボワン)(オリジナル現代/冒険・バトル)

底辺Vtuberの根黒万太郎。▼十年前にやり込んでいたロボゲーの続編やったら動きが変態過ぎて大バズり!▼闘争を求めてやって来る強き変態たちに万太郎は更なるバズりを求める。▼果たして、万太郎は底辺を卒業しトップVtuberとなれるのか?▼(☆):他者視点有りのマークです。


総合評価:1172/評価:7.78/連載:48話/更新日時:2026年05月23日(土) 20:31 小説情報

ただのモブ(大嘘)がTSした原作主人公の代わりに逆転世界で頑張る話 ―女性特効ラスボスは俺が倒す―(作者:つくもいつき)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

ラスボスが女性特効なのに原作主人公が女体化した。▼……世界、詰んだ?▼モブに転生した男がTSした原作主人公の代わりに世界を救う物語。▼ただし、この世界の男は原作主人公以外は〈女神の呪い〉のせいで弱いものとする。▼ターゲット:世界を救うついでにモテる主人公を見たい人用▼旧題:腕力逆転(女>男)世界で、主人公の代役に! ―女性特効ラスボスは俺が倒す―▼本作はカク…


総合評価:3797/評価:8.64/連載:89話/更新日時:2026年05月22日(金) 21:00 小説情報

ガーディアン解任(作者:slo-pe)(原作:魔法科高校の劣等生)

高校入学前に達也が深雪のガーディアンを外されるお話。▼沖縄侵攻に深雪がいなかった設定なので、深雪は達也に否定的です。▼※pixivに投稿していたものを、こちらにも投稿することになりました。


総合評価:1473/評価:8.44/連載:128話/更新日時:2026年05月22日(金) 15:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>