追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
「紫黄里ちゃん!後ろ!」
弥生に言われると、紫黄里はすぐさま振り向く。今度は、窓枠を乗り越えて4体の悪魔が入ろうとしてきていた。
「!し、痺れろぉっ!」
紫黄里は自分を励ますかのように強気な言葉を吐き、左側の2体に向けて、先ほどと同様の、麻痺効果を持つ弓矢を放つ。
弓矢は直撃し、2体の悪魔の動きを止めたが、紫黄里が次の矢を番えているその間に、残りの2体が紫黄里に肉薄していた。
「シネェエアア!!」
「!」
紫黄里が弓を向けるよりも早く、悪魔の1体が紫黄里に掴みかかる。悪魔は、紫黄里の首を強く締め上げた。
「ぐぁっ…!」
紫黄里が悪魔の腕を振り解こうとするが、その間に、もう1体の悪魔が棍棒を構え、紫黄里の首を絞めている悪魔ごと、棍棒で紫黄里を殴り抜いた。
「あぐぅっ!」
「紫黄里ちゃん!!」
吹き飛ばされて倒れた紫黄里を見て、すぐに弥生が紫黄里を攻撃した悪魔たちの頭を連射で撃ち抜き、紫黄里に駆け寄って介抱する。
「大丈夫?紫黄里ちゃん?」
紫黄里は痛みを堪えながら何度も頷く。しかし、紫黄里はすぐに弥生の背後を見て叫んだ。
「後ろ..!」
「!」
弥生は紫黄里に言われると、ライフルを持って即座に振り向く。直後、弥生の脳天を目掛けて、悪魔が力任せに棍棒を振り下ろしてくる。
弥生は咄嗟にライフルで棍棒を受け止めたが、悪魔の力が強く、弥生の目の前に棍棒が迫る。
「うっ…!」
「弥生さん…!」
紫黄里はすぐに弓を構え、麻痺矢を悪魔に向けて放つ。悪魔の力が弱まったのを皮切りに、弥生は悪魔を押し返し、至近距離から銃撃を浴びせ敵を黒い煙に変えた。
小屋に攻め込んだ部下が一掃されたポラリスは、一度部下たちに待機を指示すると、状況を考え始めた。
「ふむ…敵は遠距離戦を得意とするふたりか…ヤヨイとシオリとか言ったか…?それにしても、もっと敵を釣れると思っていたが…とにかく今は数を減らす方が先か…者ども、攻撃を…」
ポラリスが声を上げようとした瞬間、小屋の窓から何かが転がってくる。ポラリスが嫌な予感を覚えたその直後、「何か」は爆発し、周囲に強い光と、甲高い爆音を響かせた。 (閃光手榴弾…)
ポラリスはそれに気付くと、その場で目を覆う。直後、閃光手榴弾は爆発し、強い光と甲高い音が辺りを包んだ。
悪魔たちが怯む中、平然としていたポラリスは、すぐに目から腕を離して様子を確認する。すると、小屋の中にいる弥生の銃口が、ポラリスを捉えていた。
銃弾が悪魔たちの間をすり抜け、ポラリスの眉間へと飛んでくる。
しかし、ポラリスは少し首を捻ると、あっさりとその銃弾をかわした。
「ふん…」
「外した…!」
一方、小屋の中にいた弥生は、狙い澄ました一撃が当たらなかったことに歯噛みする。ムキになった弥生は、すぐさま弾薬を排莢すると、もう一度ポラリスに狙いを定めて引き金を引く。だが、次の銃弾も、ポラリスはあっさりと回避した。
(普通にやっても当たらないのか…!)
「弥生さん!こっち側の窓、塞ぎました!」
拳を握りしめる弥生の背後から、紫黄里の声がする。弥生が振り向くと、テーブルの木材を利用して、紫黄里が片方の窓を塞ぎ終えていた。
「お!ありがとう!こっちも奴を倒さないと…!」
弥生はそう言って改めてポラリスに狙いを付ける。瞬間、ポラリスが声を張った。
「総員、盾を展開!隠れながら包囲を狭め、一点集中で押し込め!」
悪魔たちはポラリスの声に呼応するように、背後の悪魔から正面の悪魔に向けて盾を渡していき、正面の悪魔が盾を展開する。悪魔たちの体は、弥生たちから見てちょうど盾の陰に隠れていた。
弥生はすぐさま盾に向けて銃撃する。しかし、盾は簡単に弥生の銃弾を弾いた。
「嘘っ!?銃が効かない…!」
「よし、このまま隊列を維持して進め!」
弥生が動揺するのも気にせず、ポラリスは号令をかける。弥生は慌てて銃撃をするが、銃弾はやはり盾に弾かれていく。
「これじゃ…負けちゃうよ…!」
弥生は目の前の状況を見て小さく呟く。紫黄里もそんな光景を見て動けずにいたが、何かに気づくと、弓を窓の外に向けた。
「下がっててください!」
紫黄里はそう言うと、弓を窓の外、ちょうど悪魔たちが進む進路上の地面に向け、弓矢を放つ。
弓矢は地面に直撃したかと思うと、紫色の液体が地面に広がる。構わず悪魔たちはその液体を踏みしめ、歩き寄っていた。
「や、やっぱり、効かなかった…!」
「紫黄里ちゃん、今のは何!?」
「えっと、その…」
「アギャァアア!!」
紫黄里が動揺していると、紫色の液体を踏んだ盾持ちの悪魔たちが次々と倒れていく。その様子を見て、ポラリスは即座に命令した。
「進軍停止!あれは毒だ!決して触れるな!盾を再展開!指示があるまで待機!」
ポラリスの声に従い、悪魔たちはすでに倒れた悪魔たちを無視して新たに隊列を組み直し、先頭が盾を展開する。しかし、目の前に広がる紫の液体を避けて進むのは困難でありそうだった。
「なるほど…西は毒沼、東は封鎖。南の入り口にはトラップが仕掛けられていて迂闊に手は出せない、か…『星霊隊』、やはり侮れないな」
ポラリスは目の前の状況を冷静に分析して呟く。すぐに彼は号令をかけた。
「次の作戦に移行する!」