追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第19話(1)村の聖火 -明宵と雪奈-

前回までのあらすじ

 功を焦り、弥生も巻き込んで窮地に立たされた紫黄里だったが、幸紀の登場によって敵を撤退に追い込むことに成功する。

 紫黄里たちへの攻撃の指揮を執っていた悪魔ポラリスは、幸紀の攻撃によって左手を切り飛ばされたが、命からがら逃走に成功していた。

 

 

6月23日 18:00 山取県 笠頭(かさこうべ)村 

 

 

「いってええええええ!!!!」

 

 悪魔回廊から転がり出てきたポラリスは、黒い煙を出している自分の腕を押さえながら、その場の木に寄りかかった。

 

「ちくしょぉ…!!こんな傷…!!」

 

「ボロボロだな!ポラリス!」

 

「誰だ…?」

 

 傷ついた体のポラリスを見下ろすように、何人かの人間が現れる。しかし、ポラリスはその人間たちの正体を見破った。

 

「…(よう)族の悪魔か…会ったことはないはずだが...」

 

「俺はミツニィ。ここの管轄を任されている悪魔だ。ポラリス、ここまで逃げてきたということは、敵が来ているのだろう?ここは我らに任せて早く撤退するがいい」

 

「…やたらと物分かりのいいやつだな」

 

「紫虫ごときに軍の指揮など荷が重いだろう?さっさと尻尾を巻いて逃げるんだな」

 

 ポラリスはミツニィの態度に感心していたが、ミツニィの発言に一気に顔をしかめる。しかし、怒りを一気に飲み込むと、ゆっくりと立ち上がり、その場を後にした。

 

「…ひとつだけ言っておく。奴らとまともに戦おうとするな。同士討ちを誘発させろ」

 

「ふん。覚えておいてやろう」

 

 背中越しに指示を出すポラリスに対し、ミツニィは背を向けて鼻で笑い飛ばす。ポラリスはそれを聞くと、目の前の悪魔回廊へと足を踏み入れていくのだった。

 

 

数時間後 20:00 笠頭村付近

 霜山(しもやま)雪奈(せつな)冥綺(くらき)明宵(あけよ)のふたりは、夜の森と茂みの中、悪魔を追いかけて走っていた。

 

「待て…!」

 

「『スノー・ゲイル』!」

 

 雪奈は声を上げると、ステッキを悪魔の背中に向け、そこから鋭く尖った氷の弾丸を放つ。しかし、悪魔はそれを回避すると、森から飛び出た。

 

「逃がさない…!『ネクロ・バスター』…!!」

 

 明宵も森から飛び出ると、霊力で作った本から、霊獣人の幻影を発射する。霊獣人は逃げていく悪魔の背を追いかけ、すぐに追いつくと、悪魔を抱き抱えて空中浮遊し、そのまま地面へ真っ逆さまに悪魔の頭を叩きつけ、黒い煙に変えた。

 

 黒い煙は風に吹き流され、明宵たちの近くにあった、背の高い灯火の炎を消す。

 

 明宵と雪奈はそれを気にせず、悪魔を倒せたことに安堵し、微笑み合った。

 

「明宵さん!さすがのパワーです!すごく頼もしいです!」

 

「…ふふふ、雪奈さんのおかげですよ…それにしても…深追いし過ぎてみなさんと(はぐ)れてしまいましたね…戻りましょう。私が案内しますから、逸れないでくださいね、雪奈さん」

 

「はい!うふふ、明宵さんは、お姉さんみたいです!」

 

 明宵と雪奈は明るく和やかに言葉を交わしつつ、明宵が霊力で作った本を開き、本の上に矢印を浮かび上がらせた。

 

「…皆さんはどちらにいるでしょうか…」

 

「あああ!!我らの聖火が…!」

 

 明宵と雪奈がその場を立ち去ろうとしたその瞬間、先ほど消えた灯火の側に、少なくない数の民衆が集まり、嘆くように声を上げる。明宵と雪奈が振り向くと、民衆はその灯火の近くに跪き、声をあげて泣き叫んでいた。

 民衆のひとり、鞭を持った若い男がふと明宵と雪奈の存在に気がつく。彼はふたりのそばににじり寄った。

 

「お前たち、この聖火が消えた理由を知らないか!」

 

 男に尋ねられると、明宵が不思議そうにしながら答えた。

 

「…悪魔との戦闘の弾みで、私が消してしまいました…しかし、火はまたつければ…」

 

「この不信心者がぁっ!!」

 

 明宵の言葉が終わるのを待たず、男は鞭を振るい、明宵の体に叩きつける。明宵は、鞭の鋭い痛みに、声もあげることができず、その場にうずくまった。

 そんな光景に、雪奈は明宵を庇いつつ声をあげた。

 

「明宵さん!!おじさん、なんで明宵さんをぶつんですか!明宵さんは、悪魔を倒したんですよ!?」

 

「黙れ小娘!」

 

 罵声と共に、雪奈にも鞭が飛ぶ。雪奈の胸の辺りに鞭が直撃すると、その男は声を荒げながら話し始めた。

 

「この聖火は100年にわたって我らの村を守っているのだ…!予言書にもある…『4つの灯火が消えた時、この村に災いが起きるだろう』と…!そしてそのひとつが今消えた!貴様のせいでだ!」

 

「…そんな非科学的な伝承は」

 

「黙れ!」

 

 男は反論しようとした明宵に対して鞭を振るう。痛みのあまりに倒れ込んだ明宵に、男はさらに何度も鞭を振るい下ろした。

 

「貴様悪魔なのだろう!?我らの村に災いを呼びにきた、悪魔の子なのだろう!」

 

「ち…ちが…いたっ…!」

 

「やめてください!!雪奈たちは悪魔と戦うのがお仕事なんです!悪魔なんかじゃありません!」

 

 悲鳴をあげる明宵に対し、雪奈が必死に訴えるが、男が雪奈を強く睨みつけると、雪奈は怯んで言葉を失った。

 そんな中、男の背後から誰かが駆け寄ってきた。

 

「村長!!東から、あ、悪魔が来てる!!みんな殺されてる!!」

 

「なんだって!?」

 

 報告を受けた、鞭を持った村長は、雪奈たちを改めて睨んだ。

 

「おいお前ら!悪魔と戦うのが仕事と言ったな!」

 

「は、はい!」

 

「だったらさっさと行け!!何をボサっとしているんだ!」

 

 村長はそう声を荒げ、雪奈と明宵の足元を鞭で叩き、音を鳴らす。悲鳴をあげた雪奈と明宵だったが、すぐに雪奈が返事をした。

 

「は、はいっ!みなさんを守ります!」

 

 雪奈はそういうと、明宵と目線を合わせてから頷き、報告のあった村の東側へと走り始めた。

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