追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第2話(5)本当の最強

 晴夏は、遠のく意識のなか、棍棒が迫り来るのを見ていた。

 

(…あぁ…死ぬんだ…オレ…)

 

 晴夏は目を閉じ、全てを諦めた。

 

 瞬間、悲鳴があたりに響く。

 

 それは、悪魔のものだった。

 

 

(…え?)

 

「『神穿《じんせん》・零式《ぜろしき》』」

 

 あたりに低く響く男の声。晴夏が見ると、黒いコートの剣士が、悪魔たち数体をまとめて刀で貫き、黒い煙に変えていた。

 黒い煙の中にたたずむ、その剣士の名を、晴夏は呼んだ。

 

「幸紀…さん…」

 

 幸紀はそこに倒れる晴夏を、背中越しに確認する。そして少しニヤリと笑うと、目の前にいる悪魔たちと向き合った。

 

「人間の声を真似ておびき寄せる作戦か。くだらんな。どんな計略も圧倒的な力の前には無駄なあがきでしかない」

 

「シネェエエ!!」

 

 悪魔たちは幸紀の言葉を無視して棍棒を振り下ろす。しかし、幸紀は身動きひとつしなかった。

 

「幸紀さん…!危ねぇ…!」

 

 幸紀の脳天に棍棒が振り下ろされる。しかし、幸紀の脳天に棍棒が直撃しても、幸紀は少しも怯む様子を見せなければ、痛みを感じている様子も見せなかった。

 

「この程度で殺せると思ったか?」

 

「!?」

 

「『万斛斬《ばんこくざん》』」

 

 悪魔たちが思わず後ずさる。その瞬間、幸紀は目にも止まらぬ速さで刀を振るう。幸紀の刀が振るわれた場所に、赤黒い筋が残った。

 

「終わりだ」

 

 幸紀がひと言そう呟くと、残った赤黒い筋から衝撃波があたりに飛び交う。衝撃波は、寸分違わずその場にいた悪魔たち全員の首を斬り飛ばすと、次の瞬間には黒い煙があたりに漂い、幸紀ひとりがたたずむだけだった。

 

「殺すというのはこうやるものだ」

 

「晴夏!晴夏!!」

 

 幸紀がゆっくりと刀を納めていると、日菜子と四葉が駆けつけ、晴夏に駆け寄る。ボロボロになった晴夏を、日菜子は介抱した。

 

「大丈夫、晴夏!?」

 

「う、うん…」

 

 晴夏はゆっくりと起き上がる。その場にあぐらで座り込んだ晴夏は、幸紀の方に向き直った。

 

「あの、幸紀さん、助けてくれて、ありがとうございました…」

 

「礼はいらん」

 

「日菜子と、四葉も、ありがとう…」

 

「気にしなくていいよ」

 

「そうです!」

 

 晴夏は他の3人に礼を言うと、力無く俯く。そして、次の瞬間、晴夏は首を横に振った。

 

「…ごめん、みんな…迷惑かけて…こんなことになって…」

 

 晴夏の瞳から涙が溢れる。他の3人が何も言えないでいると、晴夏はさらに感情的になって言葉を続けた。

 

「オレ、もっと戦えると勝手に思ってた…調子に乗って突っ込んで…挙句殺されかけて…怖かった…!情けなかった…!オレなんか、全然強くないんだって思い知らされて、オレ、オレ…!」

 

 晴夏の悲痛な涙に、日菜子も四葉も黙り込む。

 

 顔を両手で押さえて泣く晴夏の前に、ひとつの手が差し出された。

 

「立て」

 

 晴夏の目の前から聞こえてくる低い声。晴夏が顔を上げると、幸紀がいつもの無表情で手を差し出していた。

 

「幸紀さん…」

 

「お前は言ったな。『オレが最強』と。それは確かに思い上がりだ」」

 

「…」

 

「最強はこの俺だ。お前じゃない。だからお前は好きなだけ負けていい。最強ではないのだから。そして負けた数だけ強くなれ。強くなった分、星霊隊の一員として悪魔を倒せ。そうすれば惨めな過去の自分も倒したことになる。そうして強くなり、俺がいつか死んだ時に、お前が最強になればいい」

 

 幸紀は晴夏を説得しながら、内心ひとりで頷いていた。

 

(我ながら悪魔的な勧誘だな。さして強くもない奴をおだてて地獄に引き込むとは)

 

 そんな得意げな幸紀の気持ちも気にせず、晴夏は幸紀の手を取り、勢いよく立ち上がる。晴夏は軽く涙を拭うと、幸紀に対して微笑んだ。

 

「ありがとうございます、幸紀さん!オレ、頑張るっす!」

 

 晴夏がそう言うと、幸紀はわずかに口角を上げ、晴夏に背を向けて歩き始める。それと入れ替わるように四葉が晴夏に寄り、ブレザーのポケットからハンカチを差し出した。

 

「…使っていいですよ。女の子なんですから、顔が傷ついたままなのはよくありませんよ」

 

「あぁ…ありがとう…」

 

 晴夏は四葉からハンカチを受け取ると、口から流れていた血を拭う。先ほどまでと打って変わって表情が暗い晴夏に、日菜子は声をかけた。

 

「晴夏、最初から強い人なんて、いないよ。ひとりであんなに戦えるのは、本当に幸紀さんくらいしかいないと思う。私だって、あんなにたくさんの悪魔がいたら、きっと殺されてたと思う。四葉でもそうだよね?」

 

「…そうですね。正直、私だって、全然強くはないですから」

 

 日菜子が四葉に同意を求めると、四葉はメガネを掛け直しながら頷く。日菜子はそれを聞くと、晴夏の肩に手を置いた。

 

「だからさ、みんなで一緒に、支え合いながら強くなろう?困った時は助け合って、辛い時は相談し合って、ね?」

 

「そうですよ。私たちはチーム、同じ『星霊隊』の仲間同士ですから!」

 

 日菜子と四葉は、晴夏に微笑む。晴夏は、目の前の2人の優しい笑顔に、自分も涙ぐみながら笑顔を見せた。

 

「ありがとう、2人とも…!オレ、頑張るから!」

 

「うん!じゃあ、行こう!」

 

 日菜子が言うと、3人は幸紀の後に続いて歩いていく。晴夏は、前を歩く日菜子と四葉の背中を見ながら、ゆっくり歩みを進めていた。

 

(オレは異世界に来ちまって、女の体になっちまった。超能力が使えて、無双できるかと思ったけど、全然そんなことなかった。でも、一緒に戦ってくれる仲間がいる。それに、めちゃくちゃ強くて頼れる人もいる。だから、オレはこの異世界を全力で生きてやるぜ)

 

 晴夏は内心そう決意を固めると、日菜子と四葉の間に入るようにして会話に加わるのだった。

 

 

隊員紹介コーナー

 

隊員No.3

名前:鳴神《なるかみ》晴夏《はるか》

年齢:17

身長:171cm

体重:61kg

スリーサイズ:B86(E)/W56/H84

武器:トンファー

好きなもの:運動

嫌いなもの:ややこしいこと

特技:スポーツ全般

趣味:バスケ

外見:明るい水色の髪、長身でスタイルがいい

能力:雷に関する霊力を扱う

簡単な紹介

異世界の東京というところから転移してきた高校2年生。

一見華やかな美女だが、本人はもともと男だったと言い張っている。

ガサツで開けっぴろげな性格だが、誰とでも明るく、分け隔てなく接することができる。

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