追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第19話(4)壊れてしまったガラス細工 -明宵と雪奈-

「貴様ら…また聖火を失ったのか!!」

 

「…待ってください…お願い、ぶたないで…!」

 

 恐怖しながら懇願する明宵に対し、村長は真正面から鞭を振り下ろす。叩かれた明宵は、その場に膝を折り、声も上げずに俯いた。

 

「お願いします!やめてください!」

 

「黙れ!!」

 

 明宵を守ろうとした雪奈に対しても、村長は鞭を振るい、雪奈をたたき伏せる。直後、村長の背後にいた村人たちが声を上げ始めた。

 

「何が『人を守るのが役目』だ!この役立たず!能無し!」

 

「悪魔の手先どもめ!!」

 

「せめて役に立ってから死ね!!」

 

 次の瞬間、罵声と共に、明宵と雪奈に向けて石が飛び始める。必死に身を守る彼女たちだったが、霊力と体力の消耗も激しく、ただ両腕で身を庇うことしかできなかった。

 石が明宵の頭に当たる。

 明宵はその場にうずくまり、無言で頭を抑え始める。

 そんな明宵の様子を見て、雪奈は背後を見てから咄嗟に叫んだ。

 

「あ、悪魔ですよ!!しかも、さっきの黒い悪魔です!!」

 

「えっ!?」

 

「ここは私たちが何とかしますから、逃げてください!!」

 

「う、嘘だ!」

 

「雪奈は悪魔の子なんですよ?悪魔の気配くらいわかりますけど?もうすぐそこまで来てますよ!!」

 

 雪奈のハッタリに、村人たちは恐れ慄き、背を向け、走って逃げ出す。そんな彼らから少し遅れて、村長も慌ててその場を走り去るのだった。

 

 

 

 ものの数秒もしないうちに、その場にいるのは、ボロボロになって座り込む雪奈と、傷だらけになって倒れ込む明宵だけになった。

 

「はぁ…はぁ…明宵さん…!」

 

 雪奈は明宵の様子を見る。明宵が右手で押さえている部分は、村人からの石が直撃した部分であり、そこからは血が滲んでいた。

 

「うぅ…待っててください…今、冷やし…」

 

「…だ…」

 

「え?」

 

「…もう…いやだ…!!」

 

 地面に突っ伏しながら、明宵が突然声を上げる。彼女はそのまま、いつもの冷静さもかなぐり捨てて叫び始めた。

 

「嫌だ!!もういやぁっ!!なんで!なんで…!!私たち、必死に頑張ってるのに!!なんでこんなことされるの!!?村の人たちのために頑張ってるのに…こんなに頑張ってるのに…!...痛いよぉ…痛いよぉ…お母さん…お父さん…うわぁあぁ….」

 

 明宵は叫んだかと思うと、そのまま大粒の涙をこぼしながら地面に突っ伏す。雪奈はそんな明宵の背中をさすり、彼女を抱きしめる。明宵は雪奈の胸にもたれかかった。

 

「みんな…みんな…私が頑張ったら褒めてくれるのに…!!なんで…こんな痛い思いしなきゃいけないの…!?私…悪くないのに…!!」

 

 明宵は雪奈の胸で泣きながら言葉を発する。そんな明宵の頭を撫でながら、雪奈は優しく話し始めた。

 

「そうですよ。明宵さんは何も悪くありません。だから大丈夫。正しいことを続けていれば、いつか必ず報われる日が来ます。大丈夫です」

 

 雪奈はそう語ると、空を見上げる。そして、改めて明宵を見下ろし、優しく微笑んだ。

 

「雪奈も、何もしていないのに、いろんな人から悪口を言われてきました。悪魔の血が入っているから…でも、雪奈のおばあちゃんだけは、絶対に雪奈の味方になってくれました。『雪奈は悪くないんだよ』『雪奈が誰かのために頑張れば、みんなわかってくれるよ』って」

 

 鞭で叩かれた痛みで、雪奈は一瞬表情を歪める。しかし、すぐに優しい表情に戻すと、話を続けた。

 

「…だから、雪奈は星霊隊で頑張れているんです。明宵さんや、幸紀さんたちが、雪奈のことを認めてくれるから。明宵さん、今は雪奈が明宵さんのおばあちゃんになります。雪奈はなにがあっても明宵さんの味方です。だから、一緒に村の人たちのために頑張りましょう?」

 

 雪奈が励ますのに対し、弱り切った明宵は何も言わず、ただ泣きじゃくり続ける。雪奈はそれでも優しく微笑み続け、周囲を見回した。

 

「大丈夫ですよ。聖火はあとひとつあります。これを守り抜けば、村の人たちもきっと考え直してくれます。頑張りましょう?」

 

「…もし…守れなかったら…?」

 

 雪奈の言葉に、明宵は弱々しく尋ねる。雪奈は、しばらく沈黙したが、ようやく言葉を返した。

 

「守り抜きましょう。星霊隊として」

 

 雪奈のこの言葉に対して、明宵は何も言えなかった。ただ涙を流しながら、肩を震わせているだけだった。

 

 そんな彼女たちのもとに、先ほど退散したはずの村長と村人たちがやってくる。彼らは手近な農具を手に持ち、構えていた。

 

「おい、白いの。貴様、我らを騙したな?」

 

「…」

 

「なんとか言ったらどうなんだ!!」

 

 村長が早速鞭で雪奈を叩く。雪奈は明宵を守るようにして、村長の鞭を無言で受け止めていた。

 

「情けで生かしてやっているのに、この不遜な態度…!こうなったら貴様らを始末してやる…!」

 

「村長!!村長!!」

 

 村長が雪奈たちへの殺意をむき出しにした瞬間、村人が駆けつける。その村人は、息を切らしながら状況を報告した。

 

「北だ!北から黒い悪魔が来てる!!」

 

「なにっ!北は最後の聖火があるんだぞ?悪魔め、わかってて来たのか…!」

 

「...雪奈たちが守ります!」

 

 村長に対して、雪奈が声を上げる。そんな雪奈の言葉に、村人たちは疑いの目を向けるが、雪奈は怯まなかった。

 

「やらせてください!今度こそ、みなさんの前で、聖火を守ります!」

 

 雪奈がそう言うと、村人たちの間で動揺が広がる。しかし、すぐに村長がそれを鎮めた。

 

「いいだろう。おい、この小娘どもの正体を俺たちの目で見届けるぞ!」

 

 村長が言うと、村人たちは声を上げる。村長は屈強な数人の村人に指示を出すと、明宵と雪奈の腕を押さえさせながら歩き始めた。

 

「小娘ども、お前たちの正体を暴いてやる」

 

「絶対に、みなさんを守ります。明宵さん、証明しましょう!」

 

「…はい…」

 

 村長の脅し文句に対し、雪奈が明るく切り返すと、明宵も弱々しいながらに返事をするのだった。

 

 

 

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