追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第21話(5)心を救う歌 -璃子と心愛-

「そのまま動くな」

 

 助けを求める心愛に対し、初音は冷淡に声を発する。

 璃子はハンマーを持った手に力を入れながら、その様子を見て立ち尽くしていた。

 

「…」

 

「そうだ、そのままじっと…」

 

 動かない璃子を煽るように初音が言葉を続けた瞬間、璃子はハンマーを振り上げ、渾身の力で地面を叩いた。

 

 地面が揺れ、思わず初音と心愛の姿勢が崩れる。

 

 瞬間、心愛は一瞬の隙を突いて初音の腕から逃れる。

 

 人質を失った初音は、心愛の背に手を伸ばそうとするが、すぐにそれができないと悟ると、初音は避難民たちのいる方向へ振り向いた。

 

「ならば、皆殺しだ」

 

「!!」

 

 初音は避難民たちのいる方向へ走り出そうとする。

 璃子は、そんな初音の背中に駆け寄ると、初音の腕を引いた。

 

「行かせない!」

 

「…璃子…」

 

 鋭い形相で初音を止めようとする璃子に、初音が戸惑ったような表情で璃子の名を呼ぶ。

 璃子は、そんな初音に思わず手が止まりそうになる。

 

(…違う…これは偽物…!もう…時間はない!!)

 

 璃子はそう覚悟を決めると、初音を引っ張り、避難民たちのいる方向の反対へ引き離す。

 しかしまだこのままでは爆発に巻き込まれる。

 璃子は、持っていたハンマーを、思い切り振りかぶった。

 

 初音と璃子の目が合う。

 

 璃子の脳裏に、初音を見捨てたあの日の光景がよぎる。

 

 璃子は目を閉じて叫んだ。

 

「許して!!初音!!!」

 

 璃子はそう絶叫すると、力任せにハンマーを振り抜く。

 

 ハンマーは初音の細い体を殴り抜き、初音の体を空へと打ち上げる。

 

 璃子は心愛を庇うように覆い被さる。

 

 直後、爆発音があたりに響く。

 

 璃子と心愛が顔を上げると、そこには、もう誰もいなかった。

 

 璃子は、ハンマーを握って立ち尽くす。そんな璃子の隣に、心愛も並んで立った。

 

「璃子、心愛」

 

 そんな彼女たちの背後から、男の声が聞こえてくる。二人が振り向くと、幸紀が歩いてきていた。

 

「遅くなった。だが、お前たちが解決したようだな。よくやった」

 

「幸紀…」

 

「人質になっていた連中は救出した。しばらくしたら部隊の再編成を行う。またあとで合流する」

 

 幸紀はそれだけ伝えると、ふたりに背を向けて歩き始める。

 

「了解…しました…」

 

 璃子は静かに幸紀の言葉に返事をする。

 

 そうして幸紀がいなくなり、草むらの影には、璃子と心愛の二人しかいなくなった。

 

 

 璃子は俯いたかと思うと、肩を震わせ始める。そんな璃子の様子を横から見ていた心愛は、思わず声をかけていた。

 

「璃子先生...!」

 

「…ごめん…今だけは…」

 

 言葉を続けようとした璃子だったが、できなかった。

 

「…ごめん…ごめんね…初音…!!うわぁああっ!!」

 

 璃子は膝から崩れ、地面に突っ伏して泣き始める。声を上げ、涙をこぼし、体を震わせ、片手で口を必死に押さえても、嗚咽が止まらなかった。

 

「いつも…どんな苦しい時でも、私を支えてくれた…なのに…私はあなたを見捨てた…今回も…あなたを殺してしまった…!!人を救うはずの医者が…二度も…私は…!!」

 

 璃子は絶叫しながら涙をこぼす。

 

 心愛は、そんな璃子の横にしゃがみこみ、璃子の肩に手を置いた。

 

「璃子先生は悪くないよ…!璃子先生のおかげで、心愛は助かったんだもん…!璃子先生はなにも悪くない…!大丈夫!一緒に前を向こう…!初音さんだって、璃子先生のそんな顔見たくないはずだもん…!だって、璃子先生と、初音さんは親友だったんでしょ…!」

 

「そう…だからこそ…私が助けなきゃいけなかった…!」

 

「ううん、人間、できないことだってあるよ…!助けられない人だっているよ…!それでも、前を向かなきゃ、助けられる人だって助けられなくなっちゃう!無理にでも、前を向いてあげて…!初音さんのためにも…!」

 

 心愛はそう言うと、立ち上がり、マイクを発現させた。

 

「自分のことを責めすぎちゃダメ!璃子先生じゃなきゃ救えない人はたくさんいるんだから、前を向いて!」

 

(璃子は昔から自分のことを責めすぎるからね)

 

 心愛の言葉に、ふと初音の言った言葉が重なって再生される。璃子は、ゆっくりと顔をあげ、心愛の顔を見上げた。

 心愛は悲しさを押し殺したような、笑顔だった。

 

「大丈夫だから!」

 

 心愛は、笑顔で璃子に言う。璃子は、そんな心愛の笑顔を見て、ようやく理解できた。

 

「…あぁ…初音…あなたは…この笑顔に救われてきたのね…この笑顔を支えに…」

 

 璃子は小さくそう呟くと、真っ赤になった顔を、無理に笑顔にして、心愛に懇願した。

 

「…市子さん…今だけは…聞かせて欲しい…とびきり明るい歌を…初音が好きだった歌を…」

 

「…うん!任せて!」

 

 人のいない草むらの中に、心愛の歌声だけが響くのだった。

 

 

 

隊員紹介コーナー

 

隊員No.9

名前:緒方(おがた)璃子(りこ)

年齢:23

身長:164cm

体重:52kg

スリーサイズ:B90(G)/W60/H92

武器:ハンマー

外見:薄紫色の短髪と、白衣

家族構成:父母

所属班:医療班

過去

あまり裕福な家庭ではないものの、人を助けたいという一心で医学部に進学。大学で知り合った初音と意気投合し、シェアハウスをしながら生活していたが、2年前、悪魔の襲撃を受け初音は死亡。

そのときの璃子は恐怖のあまり逃げ出してしまい、そのことを後悔しながら過ごしていた。悪魔への憎悪はこの一件も理由のひとつ。

 

 

隊員No.15

名前:市子(いちご)心愛(ここあ)

年齢:17

身長:150cm

体重:44kg

スリーサイズ:B83(C)/W59/H82

武器:マイク

外見:ピンク色のツインテール。ピンクのカーディガンを着用

家族構成:父母兄

所属班:医療班

過去

小学生の頃から歌とダンスのスクールに通っており、その中でも花形とされていた。景気が悪い中でも心愛をスクールに通わせ続けた両親のためにもアイドルを続けている一面もある。

なお、同じダンススクールのメンバーには同じ高校で星霊隊のメンバーの望もいた。

 

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