追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

138 / 139
第24話(4)存在証明 -華燐と珠緒-

同じ頃 城壁内部

 幾重にも仕掛けられた罠を力技で突破し、幸紀は、敵の指揮官がいるであろう城の天守閣の入り口まで目前に迫っていた。

 天守閣への入り口が開き、悪魔たちが幸紀の歩く狭い通路になだれ込んでくる。

 幸紀は迫ってくる悪魔たちを斬り捨てていく。

 だが、幸紀は同時に違和感を覚えていた。

 

(…数は多いが脆すぎる…さらには複雑な地形のはずが、敵を倒しているうちにここまで来れていた…ここまで誘導されていたのか…?)

 

「幸紀さん!」

 

 幸紀が戦っていると、背後から日菜子の声が聞こえてくる。幸紀は目の前にいた悪魔を軽くあしらい、振り向き、日菜子たち全員が来ているのを一瞥して確認した。

 

「お前たちか」

 

「お待たせしました!みんなで突入しましょう!」

 

 日菜子は目の前の悪魔を殴り倒しながら、幸紀に提案する。一方で、幸紀は刀を鞘に収めた。

 

「幸紀さん?」

 

「ここはお前たちに任せる。俺は一度バスまで戻る」

 

「え?」

 

「嫌な予感がする。任せたぞ」

 

 幸紀は日菜子たちにそう言うと、来た道を走って戻り始める。日菜子たちは戸惑ったが、幸紀のことを信頼すると、天守閣へ突入していくのだった。

 

 

その頃 秋露城公園

 

 フェルカド率いる悪魔軍の伏兵部隊が華燐と珠緒が守るバスを襲撃していた。

 

「せいやっ!」

 

「はぁあっ!!」

 

 華燐と珠緒は、フェルカドの部下たちを、それぞれの霊力で作った武器で一掃する。

 最後の1人になったフェルカドは、満面の笑みを浮かべながら大剣を振り回し、構えた。

 

「ほう。ただの小娘と思っていたが…面白い!このフェルカドがまとめて相手をしてやろう!」

 

「偉そうに言ってくれちゃって!吠え面かくのはアンタの方だ!」

 

 フェルカドの言葉に対し、華燐が強気に啖呵を切る。フェルカドは大きく口を開け、声を上げて笑った。

 

「その強気な言葉、いつまで吐けるか楽しみだ!でいやぁっ!!」

 

 フェルカドは言うが早いか、目にも止まらぬ速さで珠緒と華燐の元へ駆け出す。一瞬で2人に肉薄した瞬間、フェルカドは大剣を振り下ろした。

 

「っ!」

 

 珠緒と華燐は咄嗟にそれぞれ左右に転がる。大剣が振り下ろされた場所に土煙が舞い、フェルカドは大剣を構え直すと、その風で煙が吹き抜けた。

 

「さて、どちらから料理してくれようか!」

 

「そぉらぁっ!」

 

 フェルカドの背後から、華燐がフェルカドの脚を狙ってヌンチャクを振るう。

 すぐにフェルカドが振り向くと、彼はヌンチャクが当たる寸前だった脚を振り上げて、ヌンチャクを回避するのと同時に、その足で華燐の腹を蹴り付ける。

 

「くぁっ…!」

 

「せぇえい!!」

 

 怯んだ華燐の頭上に、フェルカドは大剣を振り下ろそうとする。

 そんなフェルカドの背中に、珠緒が咄嗟に飛び掛かるようにナイフを突き立てた。

 

「ぬっ!」

 

 フェルカドがナイフを抜くために体を動かすと、フェルカドの背中に刺さったナイフにしがみつく珠緒も、一緒に振り回される。

 

「ええい、忌々しい!」

 

 フェルカドは一喝すると、自らの背中にしがみついていた珠緒の髪を、左手で掴み上げ、華燐がいる方向へ珠緒を投げつける。

 

「きゃぁあっ!」

 

「うおあっ!」

 

 華燐の上に珠緒が被さるように、2人はぶつかり合って倒れる。

 2人が動けないでいると、フェルカドは2人に近づき、大剣を振り上げた。

 

 咄嗟に華燐はヌンチャクをフェルカドに投げつける。フェルカドがそのヌンチャクを回避するために見ていると、ヌンチャクはフェルカドの顔の近くで爆発した。

 

「うおっ!」

 

 さほど大規模ではない爆発。しかし、フェルカドはすぐさま飛び退き、自分の身を守った。

 

 その間に、華燐と珠緒は体制を立て直し、立ち上がる。

 フェルカドは、自分の顔に傷がついていることを悟った。

 

「ふっ…戦はやはり少し傷が付くくらいでなければな!」

 

「傷だけじゃすませないよ!!」

 

 華燐は改めてヌンチャクを発現させ、強気な言葉を吐く。その隣で、珠緒も自分のナイフを発現させた。

 

 そんなことを気にせず、フェルカドは少し首を回すと、バスに目をやる。

 

 彼はそのまま大剣を構え直し、平然と華燐と珠緒に背を向け、バスに大剣を向けた。

 

「華燐さん、あいつ、バスを壊す気です!」

 

「させるかぁっ!!」

 

 フェルカドの狙いに気がついた珠緒が声を上げ、華燐が走り始める。珠緒も遅れて華燐に続き、フェルカドの背中を狙う。

 

 珠緒と華燐がそれぞれの武器を、フェルカドの背中に突き立てようとしたその時だった。

 

「かかったな!」

 

 瞬間、フェルカドは一気に振り向く。

 

 素早い振り向きそのままに、フェルカドは大剣を真横に振り抜く。

 

「!!」

 

 鉄の塊のような質量に殴りつけられ、珠緒と華燐の細い体が大きくしなり、そのまま吹き飛んでいった。

 

「いやぁあああっ!!」

 

「ぎゃああっ!!」

 

 華燐と珠緒の悲鳴があたりに響く。2人はそのまま公園の植え込みの花壇に体を叩きつけられた。

 

(ちぃっ、間一髪、霊力で身を守りおったか…!まさか両断できないとは思わなかったが…とはいえ十分なダメージは与えただろう)

 

 フェルカドは大剣を握る手を振り直し、大剣を握り直す。そうして彼は、改めてバスに向けて大剣を構えた。

 

「…っ!」

 

 そのまま、フェルカドが大剣を振おうとした瞬間、華燐がなんとか体を起こし、指を鳴らす。

 

 直後、バスを斬り裂こうとしていたフェルカドの大剣が爆発した。

 

「ぬぅっ!?」

 

 フェルカドは爆風に吹き飛ばされ、さらに大剣の破片がいくつかフェルカドの顔に突き刺さり、思わずよろめく。

 

「でりやあああ!!!」

 

 よろめいているフェルカド目掛けて、華燐と珠緒は駆け出す。

 先に着いたのは華燐。

 彼女は渾身の飛び蹴りをフェルカドの顔面に放つ。

 フェルカドはそれを受け止める。

 瞬間、受け止めたフェルカドの腕が爆発した。

 

「なにぃいっ!!」

 

 フェルカドは片手を失う。

 

「珠緒!」

 

「せいやああっ!!」

 

 動きが止まっているフェルカドの首元を目掛けて、珠緒はナイフを突き立てる。

 

「ぐああああっ!!!」

 

 鈍い感触と共に、フェルカドの体にナイフが突き刺さり、彼の悲鳴が周囲に響く。

 珠緒はさらにナイフを深く突き刺そうとするが、フェルカドは刺されただけでは倒れなかった。

 

「くっ…ぬぉおおお!!!」

 

 ナイフを握っている珠緒の両手を、右手1本だけで押し返し、自分の体からナイフを引き抜く。

 

「!?」

 

 あまりの怪力に、珠緒は驚きを隠せず、動きが止まった。

 

 その一瞬だった。

 

「ふん!!!」

 

 フェルカドの気合いと共に、彼の爪が、珠緒の首に突き立てられ、珠緒の首元を引き裂いた。

 

「あああああ!!!!」

 

「珠緒!!」

 

(くっ…浅かった…!)

 

 首から血を流し、絶叫してその場にのたうち回る珠緒に対し、フェルカドは珠緒に致命傷を負わせられなかったことを悔やむ。

 

「テメェ許さねぇ!!」

 

 珠緒の隣にいた華燐は、怒りに任せてフェルカドに蹴りを放とうとする。

 

「うぉらっ!!」

 

「遅い!!」

 

 華燐が蹴りを放つより早く、フェルカドが爪で華燐の胴を貫いた。

 

「…!!」

 

 しかし、華燐は自分を貫いているフェルカドの手首を掴むと、霊力を集中させ、爆発を起こした。

 

「うぁああっ!!」

 

 フェルカドはその爆発から咄嗟に身を引く。

 

 一方の華燐は、爆発で吹っ飛ばされ、さらにフェルカドによる攻撃でのダメージで、地面に倒れ込んだ。

 

「はぁあっ…はぁあっ…」

 

 フェルカドの両腕のあった部分と首元から、黒い煙が噴き出る。フェルカドは、荒れた息のまま、バスの方へと向き直った。

 

(...ここまで消耗するとは思わなかった…だが、若から与えられた任を、果たさねばならんのだ…!!)

 

 フェルカドは、折れそうになる膝を無理やり伸ばし、バスの方へと歩く。

 

 そんなフェルカドの目の前に、1本の日本刀が飛んできて、突き刺さる。

 

 フェルカドが顔を上げると、黒いロングコートを風にたなびかせながら、幸紀が歩いているのが見えた。

 

「...来たのか…コーキ…!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。