追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第3話(3)悪魔的舞踏

数分後

 壊れた改札口を踏み越え、階段を降りると、幸紀たちは電車が来るプラットフォームにやってきた。

 10両編成の電車が1台止まっていたが、その列車の行く先は巨大なシャッターで封鎖されており、電車自体も明かりがついておらず、動きそうには見えなかった。

 

「あのさ、オレよくわかんないんだけど、この電車って勝手に使っていいの?」

 

 晴夏が四葉に尋ねる。四葉はメガネを掛け直しながら話し始めた。

 

「これは全国各地の地下鉄に設置されている避難用車両です!有事の際には駅員さんの指示で動かしますが、駅員さんが全滅してしまった場合は、特例で一般市民による操作が許可されています!侯爵の部下である東雲さんもいるので、問題はないと思いますよ」

 

「へー、詳しいなぁ。うちの世界にゃこんなのなかったぜ」

 

「高校の公民の授業で習いました!」

 

 四葉が胸を張る。それを見ながら、日菜子が話し始めた。

 

「でも、この電車、動きそうにないよ?」

 

「それはおそらく、非常用電源が落ちているからだと思います!電車の出口がシャッターで封鎖されているのも、その影響だと思います!」

 

「じゃあ、それを元に戻せば、この電車は動くんだね?」

 

「そう思います!」

 

 日菜子の質問に、四葉は答えていく。一連の会話を聞いた幸紀は指示を出した。

 

「違う駅に行くよりはここのを復旧した方が早い。復旧するぞ。日菜子と晴夏はここに待機。四葉、俺と結依を案内してくれ」

 

「わかりました!」

 

 四葉が元気よく返事をする。幸紀はそれを聞いて頷いた。

 

「日菜子、晴夏、ここを奪われないように頼むぞ」

 

「はい!頑張ります!」

 

「任しといてくれっすよ!」

 

 幸紀に言われて日菜子と晴夏は微笑む。幸紀はそれを確認すると、結依を連れて歩き出す。四葉も少し遅れてスマホのライトをつけると、幸紀と結依の横を歩き始めた。

 

 

 日菜子、晴夏と分かれた、幸紀、四葉、結依の3人は、四葉がライトで床を照らしながら駅の構内を進んでいく。暗闇の中で広さの感覚がわからなくなりそうだったが、歩いている分には広く感じられた。

 

「四葉、目的地はまだか」

 

「そろそろのはずです!この駅、広いので、時間がかかるのは許してください!」

 

 幸紀の質問に、四葉はハキハキと答える。そんな四葉の様子を見て、結依の心の中にいるサリーは、魔力で幸紀に話しかけた。

 

(コーキぃ、女の子を急かすなんてよくないよぉ~。せっかくハンサムでモテるんだから、女の子を大事にしな~?)

 

(くだらん。俺は悪魔を殺せればいい。女にどう思われようと知ったことではない)

 

(それなんだけどさ~、別に悪魔なんて放っておけばよくな~い?私はコーキのことが大好きだから付いていくけど、本当だったらどっか奴らの来ないところでテキトーに過ごすつもりだったよ~。コーキもそうすればいいじゃん。なんでわざわざ悪魔と戦うのさ?)

 

(誇りのため)

 

 幸紀の返答を聞くと、結依はふと幸紀の方を見る。幸紀の表情はいつも通り無表情だったが、その瞳の奥に何かが燃えているような気がした。

 

(誇り?)

 

(あぁ)

 

(何それ)

 

(俺は今日まで悪魔軍として活躍してきた。悪魔軍がどこかの世界を侵略するたび、俺は常に一番の功績を挙げてきた。多くの者に支えられながら、支えてくれた恩に報いるために、俺は悪魔軍の誰よりも戦い、最強になった。それが俺の誇りだ)

 

 結依は幸紀の瞳に、強い憎悪のような感情が湧いているのに気がついた。

 

(だというのに、悪魔軍は俺の功績など全て忘れ、人間の血が混ざっているというだけで俺を追放した。俺の血を汚らわしいものだと。これは俺だけでなく、俺を育て、支えてくれた名将たちや、俺を産んでくれた両親、俺に関わった全てに対する侮辱だ。俺は侮辱されたまま終われるほど性格が良くはない。だから俺の誇りを侮辱した全てを滅ぼす。俺や俺を支えてくれた者の尊厳のために)

 

「…プライド、ですか」

 

 結依が口を開いて小さく呟く。幸紀は、誰にも聞こえないほどに小さかった結依の言葉に、無言で頷く。結依は、そんな幸紀の姿に、何かを考えるのだった。

 

「ここです!非常用電源室!」

 

 そんな幸紀たちのやりとりも知らず、四葉が声を上げる。四葉が照らし出した黄色い扉には、黒い字で「非常用電源室」と書かれていた。

 幸紀はそれを見ると、ドアノブに手をかける。同時に、扉の向こうから気配を感じられた。

 

(かなり居るな)

 

(あ、そうなの?じゃ、楽しまなくっちゃね)

 

 幸紀が考えていたことを、サリーが察知する。同時に、サリーは結依の体を、勝手に、一時的に乗っ取ると、魔力で結依の両手に紫色のかぎ爪のようなものを発現させた。

 

「四葉、戦闘になるぞ」

 

「え、はい!」

 

 幸紀が言うと、四葉も霊力で自分の剣を発現させる。幸紀は両者の準備が整ったのを見て、目の前の扉を蹴り開けた。

 

 扉を破った先の暗い部屋には、テーブルと椅子があり、その奥には何かを操作する制御盤がある。そして、その手前には、様々な肌の色をした悪魔たちがおり、その中でも、青い肌で軍服を着た悪魔は、幸紀の姿を見るなりすぐさま声を張った。

 

「敵襲だ!かかれ!!」

 

「ウシャァアア!!」

 

 軍服の悪魔はそこに置いていた軍刀を振るって指示を出す。部下である10体ほどの悪魔たちは、一斉に幸紀に向けて走ってきた。

 

(中級悪魔の小隊か…指揮官を倒せばすぐに瓦解するな)

 

「シネェエエエヤァ!!」

 

 冷静に状況を分析する幸紀をよそに、悪魔たちは棍棒を幸紀へ振り下ろす。幸紀はそれを全く気にせずに宙へ跳ぶと、空中で霊力を片手に集め、自分の武器である日本刀を発現させる。

 幸紀は空中から、悪魔たちの背後に控えていた軍服の悪魔に狙いをつけていた。

 

「こ、これは…!」

 

「『斬魔刀《ざんまとう》・風切《かぜきり》』」

 

 幸紀は小さく呟いたかと思うと、霊力を使って空中から斜めに急降下し、軍服の悪魔を目掛けて突進する。

 軍服の悪魔はすぐに幸紀に対して軍刀を振るった。

 幸紀は刀を抜き放ちながら、悪魔とすれ違うように着地する。

 

「う…ウグァアアア!!」

 

 次の瞬間、軍服の悪魔の悲鳴が聞こえたかと思うと、その時にはすでに軍服の悪魔は黒い煙になり、軍刀だけがその場に残った。

 

「タイチョウ!!??」

 

 部下である悪魔たちは、軍服の悪魔があっという間に倒されたことに驚き、四葉と結依に背を向けて驚く。

 瞬間、結依は手に発現させていたかぎ爪で、悪魔の1体の胴体を貫いた。

 

「ギャァアア!!」

 

「さっきの!お返しだよ!!死ねオラァ!皆殺しだ!!あははは!!死んで詫びろぉ!!」

 

 結依《サリー》が乱暴な言葉を吐きながら、次から次へとその場に居る悪魔たちの首を爪で掻き切り、黒い煙に変えていく。

 その隣で、四葉も動揺している悪魔の背後から斬りかかり、黒い煙に変える。同時に、四葉は結依の戦いぶりを見て戦慄していた。

 

「す、すごい戦いっぷり…なんていうか、すごい…残虐っていうか…悪魔的…」

 

 四葉がそんなことを呟いていると、結依は残っていた悪魔の最後の1体にかぎ爪を突き立てると、地面に引きずり倒して頭を踏み抜く。結依は妖しい笑みを浮かべながら、自分の武器のかぎ爪を舐めまわした。

 

「ん~…カ、イ、カ、ン…」

 

「片付いたな」

 

 悪魔たちがいなくなると、幸紀が冷静に声をかける。結依に目が釘付けになっていた四葉も我に還ると幸紀の方を向く。幸紀はそのまま四葉に指示を出した。

 

「四葉、制御盤の操作を頼む」

 

「はい!わかりました!」

 

 幸紀に言われると、四葉は幸紀とすれ違うようにして、幸紀の背後にあった制御盤と向かい合う。

 幸紀は制御盤を四葉に任せて周囲を見ていると、結依が妖しい笑みを浮かべながら、自分の腕に結依自身の腕を絡ませてきた。

 

(ね、私、やるでしょ、コーキ。私、あんたのためならなんでもしてあげる。男らしく戦うあんたが大好きなんだ、私)

 

 結依の体を一時的に操っているサリーは、結依の体で笑顔を浮かべつつ、幸紀に魔力で言葉を送る。

 幸紀が結依を見下ろす。

 すると、次の瞬間、結依の表情から笑みが消えると、結依は慌てて幸紀の腕から自分の腕を離した。

 

「わ…私…私…!」

 

 結依は自分の体を見ながら後ずさる。結依の靴に、悪魔が使っていた軍刀が当たった。

 

(…ちょっと、結依!あんた何考えてんのさ!?)

 

 幸紀の耳に、結依の心の中にいるサリーの声が聞こえてくる。明らかに切羽詰まった余裕のない声。幸紀が不審に思って結依を見ていると、結依は軍刀を拾い上げ、部屋を飛び出した。

 

「なんです!?」

 

 制御盤を操作していた四葉が幸紀に尋ねる。幸紀は結依の後を追って走りながら短く答えた。

 

「後で話す、ここを頼む!」

 

「あ、東雲さん!」

 

 幸紀は四葉の声も気にせずに、扉を開けて結依の後を追う。四葉は不安になりながらも、制御盤の操作を続けるのだった。

 

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