追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
前回までのあらすじ
ついに悪魔軍の本拠点の目前まで迫った星霊隊と幸紀。ポラリスの策略により、食料とバスを奪われそうになるが、華燐と珠緒の活躍によりフェルカドを撃破。さらには敵の重要拠点まで落とし、いよいよ最終決戦の日が近づいてきていた。
6月26日 昼 12:00 冬城県 冬城市 アカツキ攻略悪魔軍総司令本部
悪魔軍の本拠点である、冬城市の時計台。ここの最上階では、ポラリスが両手を鎖で繋がれ、後ろ手で縛られた状態で、悪魔軍の幹部たちが見下ろす中、総指揮官であるテルギアの前に跪いていた。
テルギアはポラリスの方を見ず、少し高いところに置かれた椅子に足を組んで腰掛け、爪にやすりがけをしていた。
「テルギア様!このポラリスめは、大言を吐きながら何度となく人間たちに敗北し、ついには眼前の城まで奪われました!にも関わらずのうのうと生きて帰ってきて…即刻死刑にするべきです!」
悪魔軍の幹部の1体が、ポラリスの行いを声高に糾弾する。ポラリスは全く動じずにその声を受け止め、顔を上げていた。
一方のテルギアは爪を削り続けるだけで、興味がなさそうな様子だった。
「テルギア様!!」
「聞こえている。大きな声を出すな」
テルギアは爪を削りながら、低い声で短く言葉を返す。テルギアは爪に息を吹きかけると、ポラリスを見下ろした。
「ポラリス。貴様にはフェルカドとかいう腹心がいたはずだが」
「はっ…先ほどの戦で…死にました」
「ほう…そうか。では、フェルカドの死を以って、貴様は許してやるとしよう」
テルギアはポラリスに短く言う。テルギアのそんな対応に悪魔軍の幹部たちがざわめいた。
「テルギア様!それではあまりに刑が軽すぎます!」
「ポラリスに死を!」
幹部たちの声を、テルギアは片手を挙げるだけで制す。そして、テルギアはニヤリと笑って話し始めた。
「では、ひとつゲームをしよう。勝てば殺さずにおいてやる。負ければ…その命をもらうとしよう」
「して、その『ゲーム』とは?」
テルギアの言葉に幹部たちがざわめく。
テルギアは椅子の肘掛けで頬杖をつきながら、片手を動かす。
テルギアの椅子の背後から、布で隠された何かを、悪魔たちが持ってきた。
ざわめく幹部たちをよそに、テルギアは片手を動かす。
部下の悪魔たちが布を外すと、そこには、人間大のサイズのガラスケースが姿を現す。その中に入っているのは、漆黒の肌に、銀色の髪、体のところどころに輝く青色のラインが入った、悪魔。
「そいつは…!」
「コーキ…!」
「敵のはずでは…!なぜここに…!?」
幹部たちは一斉にざわめく。無言で見つめるポラリスを見下ろしながら、テルギアは語り始めた。
「これは、コーキではない。複製だ。これを使って、『ゲーム』をしようではないか」
テルギアはそう言ってポラリスの顔を見る。ポラリスはじっとコーキのクローンを見つめていた。
「…正面からそれと斬り合え、と?」
ポラリスはテルギアに尋ねる。テルギアは呆れたようにため息を吐いた。
「つまらん。お前如き、捻り潰して終わるだろう。余興にもならん」
「…」
「だが、『星霊隊』ならどうだ?」
「…!」
テルギアの言葉で、ポラリスはテルギアの意図を察する。テルギアはポラリスの表情を見て、満足げに微笑んだ。
「そうだ。この複製を使って、『星霊隊』を倒す。それがこのゲームだ。複製への指示は、ポラリス、お前がやれ。もしお前の指示で、『星霊隊』とコーキを葬ることができたなら、貴様を生かしてやろう。それができないなら…命はないぞ」
テルギアがそう言うと、テルギアの部下たちがポラリスのそばに近づき、ポラリスを繋いでいた鎖を外し、ポラリスを立たせた。
さらに、テルギアはマイク付きのヘッドセットをポラリスの足元に投げつける。
「ありがたき幸せ…!」
ポラリスは跪いて礼を言うと、ヘッドセットを拾い上げる。
そうして、コーキのクローンの顔を見上げ、息を吐いた。
「さぁ、『ゲーム』の始まりだ」
テルギアが静かに言うと、コーキのクローンは悠々と幹部たちの間の中央を歩いていく。
部屋の壁の一角に、コーキの見えている視界の映像が映し出されると、ポラリスはその映像を睨むのだった。