追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
数分後 アカツキ攻略悪魔軍総司令本部
薄暗い建物の中では、悪魔軍の幹部たちが、動こうとしないポラリスに対して不満をぶつけていた。
「ポラリス!何をしているのだ!さっさと敵の拠点に攻め入り、打ち倒せ!」
「臆病者め!」
自分にぶつけられる罵詈雑言に対し、ポラリスは知らぬ顔で受け流し、単身考えを練っていた。
(馬鹿が。ここで無理に力押しすれば、コーキに加えて女たちも来て押しつぶされるだろうが。むしろここで動かないでいれば、向こうは勝手に偵察のために少人数部隊を複数方向へ展開する...そうなればコーキの救援が来る前に女たちを各個撃破できる隙が生まれるというもの。今は待ちの時間だ)
ポラリスがそう思っていると、テルギアの耳元に、部下の悪魔がやってきて何かささやく。テルギアはそれを聞き、ニヤリとしながらポラリスの背中に声をかけた。
「ポラリスよ、敵の拠点から複数の部隊が散開したようだ。お望み通りの展開になったな」
(...テルギア様だけは俺の考えがわかっていたらしい)
ポラリスはテルギアからの報告を聞くと、背後に一礼してからヘッドセットをつけなおし、声を張って指示を出した。
「余剰の魔力を活用し幻影を展開!本体は中央の最短経路を進め!」
ポラリスの指示を受けた悪魔、コーキが、ゆっくりと動き始めるのだった。
さらに数分後 国道178号
秋露城から悪魔軍の本拠点への最短ルート。ここの偵察を任されたのが、焔と真理子だった。
「...真理子、本当に大丈夫?」
廃墟に挟まれたコンクリートの路上を歩きながら、焔は真理子に尋ねる。真理子は笑顔を見せながらうなずいた。
「うん。今度こそ、バッチリだよ、焔!」
「...わかった。何度も聞きはしないわ。あなたにとって当然許せない仇だと思うけど、私にとっても大切な先輩を奪った相手。絶対に倒しましょう」
「もちろん!ま、お相手さん、ここに来ないかもしれないけどね」
「何言ってるの。ここが一番来る可能性が高いから、私たちが...」
「はいはい、わかってるよ。ジョークだってば」
焔と真理子は歩きながら雑談する。
そんな彼女たちの耳に、無線が入った。
「千条です!!東方面、敵に遭遇!」
二人の耳に入ってきた四葉の声。ふたりの表情に、一気に緊張が走った。
「始まった...!」
「東雲だ。今、東方面に向かう」
四葉の通信に、幸紀が答える。そんな中、四葉の返事が返ってきた。
「千条です!撃退に成功しました!」
「なに?」
「一撃当てたら、黒い煙に...」
「日菜子です!!西方面に敵です!」
「緒方です、南方面にも敵が!」
四葉の報告中、日菜子と璃子の通信が割って入る。無線での情報が錯綜する中、焔と真理子は顔を合わせて話していた。
「焔、これ、どういうことだと思う?」
「なんとも...でもあの敵は1体のはず...」
「じゃあ偽物ってこと?」
「そうでしょうね...だとしたら、これはおそらく攪乱...どこか一か所だけに本物が居るはず...」
100mは離れた地点から、瓦礫を踏みしめながら近づいてくる黒い悪魔、コーキに、二人は気づかない。
コーキは立ち止まり、大きく刀を振るい抜く。
焔と真理子が立っている道幅いっぱいに広がる黒い斬撃がコーキの刀から放たれると、焔と真理子はようやく迫る脅威に気が付いた。
「っ!焔!!」
「ここに居たようね...!」
迫ってくる斬撃に対し、真理子は近くの廃墟の壁を駆け上がり始め、焔は霊力を溜めた右手を地面に置く。
真理子が廃墟の壁からジャンプし、斬撃を背面飛びのような形で躱すと、焔の霊力で地面から炎が吹き上がり、炎が斬撃とぶつかり合い、焔の身を守りぬく。
灰色の煙が吹き抜けた先、荒廃した道路の先に、コーキが立っているのを、真理子と焔は目の当たりにした。
真理子は固唾を呑む。そんな真理子の肩に、焔は手を置いた。
「ここまでは読み通り。あとは勝つだけ。行けるわね、真理子」
「...もちろん!!」
真理子は威勢よく言うと、両手に霊力を込め、それぞれの手にサブマシンガンを握り、ゆらゆらと歩いてくるコーキへと向ける。
一方、コーキの視界を通して状況を見ていた悪魔軍の幹部たちは、ポラリスに向けてヤジを飛ばしていた。
「女どもを殺せ!」
「かように軟弱な奴ら、ひねりつぶせ!」
そんなヤジを無視して、ポラリスはそこにいる焔と真理子だけを見つめていた。
(奴らは星霊隊の中でも最上位の実力者たち...たとえコーキであっても、油断すれば負け、そうでなくても本物のコーキの到着まで時間を稼がれる可能性もある...だが倒すことができれば...勝利は目前だ...!)
ポラリスはヘッドセットを被りなおし、声を張り上げた。
「かかれぇっ!!」