追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第25話(5)対決 -焔と真理子-

「かかれぇっ!!」

 

 

 ポラリスの号令に応えるように、コーキがすさまじい速さで走り始める。

 

 一瞬のうちに、100mは離れていたコーキと焔たちが、目と鼻の距離まで肉薄する。

 

 そのまま、コーキは刀を真一文字に振るい、焔と真理子の首を狙った。

 

 咄嗟にふたりは左右に転がり、コーキの真横を取る。

 

 先に仕掛けたのは真理子で、コーキの体に向けてサブマシンガンを乱射しはじめた。

 

 だが、コーキは刀を片手で回し、銃弾を全て弾き返し、真理子の方を睨んだ。

 

(…っ!)

 

 コーキの目線に、思わず真理子の肩がすくみ、動きが止まる。

 

 コーキはそんな真理子に、容赦なく刀を振り下ろそうとする。

 

 一方、コーキが真理子の方を向いたことで、焔がコーキの背後を取っていた。

 焔は背後からコーキの刀を持つ手を掴む。

 

 そして、焔は霊力を手に集中させコーキの腕を燃やし始めた。

 

 しかし、コーキは怯まず、焔を蹴り飛ばした。

 

 刀を握っていたコーキの腕が焼け落ちる。

 

(よし…!)

 

 焔が少し口角を上げたその時、焼け落ちたコーキの腕が、新しく生えてくる。コーキは新しく生えてきた腕で、刀を拾い上げた。

 

「嘘…っ!?」

 

「一気に大量の霊力を流し込まないと何度も再生するのか…!」

 

 驚く真理子と、状況に気づいた焔。コーキはまず焔に狙いを定めると、フラフラと歩きながら焔に近づいていく。

 

 ゆっくりとした不規則な動きに焔が身構えていると、コーキは急に加速して焔に接近した。

 コーキが刀を振り下ろすと、焔は間一髪でそれを回避する。そして、霊力で自らの脚に炎を纏わせ、コーキのボディーに回し蹴りを叩き込んだ。

 

「真理子っ!」

 

「まかして!」

 

 燃え上がり、よろめくコーキの背後に、真理子はサブマシンガンの銃撃を浴びせながら接近する。

 

 コーキは振り向きながら真理子の体を両断しようと刀を振るう。

 

 だが、真理子は大きく宙返りしながらジャンプし、刀を回避しながら、頭上からもサブマシンガンの銃弾の雨を降らせつつ、焔の方へと着地した。

 

 コーキの体は燃え盛り、動かない。真理子と焔は隣に立ちながら、そんなコーキの様子を見守っていた。

 

「…」

 

 焔と真理子は気を抜かずに様子を見続ける。

 

 一方、ポラリスは、コーキの視界越しに焔と真理子を睨んでいた。

 

「…なるほど、たしかに強い女だ。そろそろ終わらせよう。いけぇっ!」

 

 ポラリスの号令がかかる。

 直後、コーキは、炎を纏いながら突然動き始め、目にも止まらぬ速さで真理子の方へ突っ込んできた。

 

「なっ…!」

 

 真理子はサブマシンガンを向けて引き金を引こうとする。だがそれよりも早く、コーキの刀が真理子に肉薄しようとしていた。

 真理子は咄嗟にサブマシンガンでコーキの刀を受け止める。

 

 だが、コーキは受け止められた刀をそのまま、真理子の胴を斬り抜こうと力押しする。真理子はなんとか押し返そうとするが、全く押し返せず、そのまま真理子はビルの廃墟の壁に叩きつけられた。

 

 廃墟の瓦礫が真理子の脚に落ちてくる。

 

「うあああ!!」

 

 真理子の悲鳴があたりに響く。真理子は必死に瓦礫から脚を抜こうとするが、動かない。

 

「刀で斬ろうとするより、掴んで魔力を流した方が霊力で防がれないはずだ、やれ」

 

 ポラリスの指示を受けると、コーキは刀を持っていない方の手で真理子の頭を掴み上げた。

 真理子は必死にもがくが、ふりほどけない。

 コーキはすぐさま真理子の体に魔力を流し込み始めた。

 

「がああああっ!!!」

 

 真理子の体に赤い電流が走り始める。全身を刺すような痛みに、真理子は悲鳴をあげる。

 

「真理子ぉっ!」

 

 そんな真理子を助けるように、焔が駆け寄り、コーキの後頭部に跳び回し蹴りを叩き込む。コーキの手から真理子が離れ、真理子は地面の上に倒れた。

 

 焔は怯んだコーキに、2撃目を叩き込むべく、掌底を放つ。

 しかし、コーキはそれを回避して焔の腕を掴み上げると、焔の腕を捻り上げ、あらぬ方向へ捻じ曲げた。

 

「ああああっ!!!」

 

 悲鳴をあげる焔の首を目掛けて、コーキは刀を振り下ろす。

 焔はなんとか、霊力による炎を纏わせたもう一方の手で、首に当たりそうな寸前で刀を受け止める。

 瞬間、刀の刃の形が変形し、チェーンソーのような形になる。

 

「っ…!」

 

 焔は今から起こることを察知すると、その場から逃れるためにもがき始める。だが、それは叶わず、チェーンソーのように震え始めた刀は、霊力で守られた焔の手とぶつかり合って火花を散らし始めた。

 

「ううっ…!!ううううっ…!」

 

「ほむ…ら…っ!」

 

 窮地に立たされた焔の様子に気づいた真理子は、なんとか立ちあがろうとするが、足にダメージを負っていて、倒れ込んでしまう。

 顔を上げた真理子の視界に、殺されそうになっている焔の後ろ姿が映る。

 

 その光景が、真理子の姉が殺された日の光景に重なった。

 

「…もう…二度と…!私は…!!」

 

 真理子は自分の脚の痛みをねじ伏せながら、無理やり自らの体を立ち上がらせる。

 

 そして、霊力を使って大きくジャンプすると、コーキの頭上へと舞い上がった。

 

 真理子は空中でサブマシンガンの狙いを定める。一度だけ引き金を引き、真理子が放った銃弾は、焔の首を狙っていた刀を弾き飛ばした。

 

「焔ぁっ!」

 

 真理子の声を受けた焔は、掴まれている自分の腕を利用し、逆に太ももでコーキの頭を挟み込む。

 

「燃えろぉっ!!」

 

 焔の叫び声が周囲に響く。同時に、コーキの頭から全身にかけて燃え上がり始めた。

 

「まずい、振り解け!」

 

 視界を焔の脚で覆われたコーキに、ポラリスは即座に指示を出す。

 コーキは歩き回り、体を振り回すが、焔はしがみついて離れず、コーキを燃やし続ける。

 

 さらに、真理子がコーキの脚をマシンガンで撃ち抜くと、コーキはその場に倒れた。

 焔はコーキの頭の上に馬乗りになる。

 

「はあああっ!!」

 

 焔は霊力を強め、コーキを燃やしていく。

 

 だが、コーキは焔の髪を掴み上げ、投げ飛ばした。

 

 コーキは燃えながら、焔へと歩いていく。

 

 そんなコーキの横合いから、真理子はサブマシンガンの銃撃を浴びせていく。

 

 コーキはジロリと真理子の方を向く。

 

 だが、真理子はもう怯まなかった。

 

「くたばれぇえええ!!!!」

 

 真理子は絶叫しながら銃撃を浴びせ続ける。

 

 コーキは脚を止めずに真理子へ近づいてくる。一方の真理子も、歩けず、その場で銃撃を止めない。

 

 燃え上がりながら、コーキは刀を振り上げる。だが、真理子も銃撃を決して止めない。

 

 銃声が鳴り響く中、コーキは刀を振り下ろす。

 

 刀が真理子の髪に触れようとしたその時、コーキの足が、黒い煙へと変わって行った。

 

 刀が落ち、黒い煙が漂う。

 

 真理子は、まだ虚空に向けて引き金を弾き続けていたが、黒い煙が吹き抜け、空が見えると、ようやく引き金から指を離した。

 

 

「…やっ…た…?」

 

 真理子は小さく呟く。真理子は焔の方を見ると、お互いに頷き合った。

 

「…やった…!やったんだ…!!お姉ちゃん…!私、やっ…いっててて!!」

 

 真理子は立ち上がって跳ね上がろうとしたが、負傷したことを思い出し、その場に倒れ込む。

 

 そんな真理子に、焔は手を差し伸べた。

 

「やったわね…真理子…!いちるさんの仇、取れたのね…!」

 

 真理子は焔の手を取って立ち上がり、思わず焔へ抱きついた。

 

「うん…!勝てた…!絶対勝てないと思ってた…でも…私たち、勝ったんだ…!!」

 

 真理子の涙声が混じった笑い声があたりに響く。焔は、そんな真理子と、黙って抱き合うのだった。

 

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