追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
前回までのあらすじ
悪魔軍の本拠点を目の前に、コーキのクローンが星霊隊のメンバーたちの前に現れる。ポラリスによって操られたクローンは、幸紀との直接戦闘を避け、星霊隊のメンバーばかりを狙っていく。
しかし、焔と真理子の奮戦により、クローンは撃退され、いよいよ星霊隊は決戦を目の前に控えるのだった。
6月26日 昼12:30 冬城県 冬城市 アカツキ攻略悪魔軍総司令本部
「負けた以上は仕方がない。ルールは守ってもらうぞ」
テルギアはポラリスに言い放つ。ポラリスは何も言わず、その言葉を受け止めていた。
「誰か、この者を処刑せよ」
テルギアの冷酷な言葉が響く。同時に、幹部たちの熱狂的な声が響き渡った。
「お待ちください!!!」
そんな空気を切り裂くように、ポラリスは一喝する。
テルギアは満足げに微笑みながら、右手を挙げる。静まり返った周囲の中、テルギアは低い声で話し始めた。
「言い残すことがあるなら聞いてやろう」
テルギアの話を聞くと、ポラリスは跪きながら頭を下げる。ポラリスは冷静に、静かに声を発した。
「『星霊隊』を、コーキを、倒す策がございます…!」
「今更何を言ったところで無駄だ!」
「お前は何度も負けているではないか!!」
「恥知らずめ!!」
ポラリスの発言に、幹部たちの罵声が飛び交う。ポラリスはそれに対して反論するように声を張り上げた。
「違う!今回の戦いでようやく見えたんだ!奴の絶対的な『弱点』が!!正面切っての戦いでは決して突けないが、だが、奴に勝つならここを突くしかない!この作戦なら、必ず勝てる…!」
「命乞いか!」
「命など要らん!じきにコーキがここにくれば皆殺しにされて負けるんだ!だが、勝てる手があると言うのに、何もせず引き下がれるものか!」
ポラリスは幹部たちに対して言い張る。そしてポラリスはテルギアに対し、改めて訴えた。
「テルギア様!これがこのポラリスの最後の策です…!あなた様のお力添えがあれば、必ずやコーキにも勝てます…!どうか、お聞き入れを…!」
ポラリスの言葉に、テルギアはほくそ笑む。ざわめく幹部たちを手の動きだけで静めると、テルギアは口を開いた。
「いいだろう。貴様の策、聞いてやろうではないか」
同日 13:00 冬城県 冬城市 道路上 バス内部
幸紀の運転するバスの中、星霊隊のメンバーたちは最後の作戦確認をしていた。
「みんな、わかっていると思うけど、もう一度確認するね」
日菜子が全員の前に立ってホワイトボードを示しながら話し始めた。
「私たちの狙いは、冬城時計塔!周囲の建物は取り壊されていて、広場みたいになってる。広場は悪魔に埋め尽くされてて、簡単には時計塔には入れない」
「そこで、まず、東雲さんに正面から時計塔に突入してもらいます!東雲さんはそのまま時計塔を攻め上がってもらい、時計塔を確保してもらいます」
「私たち星霊隊は二手に別れます。一方は時計塔の入り口を確保し、幸紀の背後を守る。もう一方はバスで広場の悪魔と対峙。幸紀が時計塔の最上階にいるはずの指揮官を倒すまで、悪魔と戦闘を続ける。バスに残るのは、遠距離攻撃ができるメンバーよ」
日菜子、四葉、焔の3人が状況を説明する。バスの車内のメンバーたちが頷いたのを見て、日菜子は運転席の幸紀に声をかけた。
「幸紀さん」
「聞こえていた。俺は好きにやらせてもらうぞ」
「お願いします!」
日菜子と幸紀は最低限のやりとりをする。幸紀は星霊隊の掛け声を背中で聞き流しながら、1人静かに正面を見据えていた。
(いよいよだ…テルギア、貴様の無様な死に顔をこの目に焼き付けてやる)
幸紀は誰にも明かさない黒い思いを抱きながら、バスのアクセルを踏むのだった。
30分後 13:00 冬城時計塔から500m地点の高台
幸紀の運転するバスが止まり、幸紀と日菜子、四葉、焔がバスを降りる。
遠くに見える時計塔と、その周りを埋め尽くすように立ち尽くす黒い影。幸紀以外の3人は、思わず固唾を飲んだ。
「す、すごい数…」
「こんなに多いのは、初めてですね…」
「さすが敵の本拠地といったところかしら…」
驚きを隠せない彼女たちをよそに、幸紀は刀の刃を少し見てから、早足で歩き始めた。
「俺は先に行く。後から来い」
「え!?あ、はい!気をつけて!」
幸紀の背中に、日菜子は思わず反射的に言葉を発して見送る。幸紀が遠ざかっていく中、日菜子は四葉と焔に言葉を漏らしていた。
「作戦を立てたのは私たちだけど…あんな中に1人で突っ込んでいくなんて…本当にやっちゃうんだ….やっぱり、すごい人だな…」
「ええ…東雲さんは…凄まじい人です」
「幸紀なら当然よ。さぁ、私たちも行きましょう」
焔に言われ、日菜子と四葉はバスに戻る。すでに幸紀の背中は、そこになかった。