追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
同じ頃 時計塔1階
幸紀が切り拓いた道を進み、日菜子や焔といった接近戦を得意とするメンバーは、時計塔の入り口で悪魔達を殴り伏せていた。
飛び道具を持つメンバーたちは、江美の運転するバスに乗り込み、時計塔の周りに、未だに数多く存在する悪魔達を轢き、攻撃を浴びせ、排除を続けていた。
「幸紀さんが敵の指揮官を叩いてくれているおかげで、敵があまり強くない…!」
「でも、幸紀から敵を倒したという報告が来ない…一体何をしているというのかしら…?」
日菜子が悪魔を殴り伏せながら呟くと、焔も目の前の悪魔を燃やしてから答える。
四葉も目の前にいた悪魔を斬り裂くと、2人に提案した。
「私が上の様子を見に行きます!」
「待って!ここを維持するのが最優先よ。それに、私たちがここを離れたら、バスを支援できなくなる!持ち場を守って!」
螺旋階段を上りに行こうとする四葉に対し、焔が制止する。四葉はそれを聞き、足を止めた。
「…承知しました…!」
「大丈夫だよ、四葉ちゃん。幸紀さんなら大丈夫!私たちはここを守り抜こう!」
日菜子はやはり悪魔を殴り飛ばし、四葉に声をかける。
星霊隊のメンバー達は、高い士気を保ちながら、悪魔達との戦いを繰り広げているのだった。
一方 時計塔最上階
1階で激戦が繰り広げられているなか、幸紀は最上階でポラリスと向き合っていた。
険しい表情のままの幸紀に対し、ポラリスは両腕を失いながらもにこやかな表情をしていた。
「どうした?そんなに恐ろしい顔をして。待つのは嫌いか?」
「ああ」
「なら暇つぶしに話のひとつでもしてやろう。まぁ窓の外の景色でも眺めながら聞け」
ポラリスは幸紀にリラックスしながら提案すると、窓の外を眺めながら話し始めた。
「そうだな…我ら邪族の話をしてやろう」
ポラリスがそう声を発する間にも、窓の外では、バスが走り回り、真理子や弥生の銃撃が悪魔達を黒い煙に変えていく。ポラリスはそんな光景を眺めながら、言葉を発し始めた。
「我らが邪族と呼ばれるようになったのは、貴様ら悪魔軍に敗れ、同化するようになってからだ…尤も、そんなのは俺もお前も生まれていない、遥か昔の話だが…」
ポラリスは殺されている悪魔達と、自分たちの過去を重ねていた。
「我らの先祖は強く抵抗したが、結局は敵わず、悪魔軍に同化され、その中で生きることを強いられた。だが、我らの多くは他の種族と違い、『造魔高炉』で生産することもできなければ、戦闘能力も高くなかった。そのせいで我らは迫害され続けてきたわけだ…」
「『紫虫』…か」
幸紀はふとポラリスたちに向けられていた言葉を思い出し、口にする。ポラリスは宙を眺めながら自嘲的に笑った。
「ああ、そうだ。それが我らに向けられ続けてきた罵声だ。数も増やせず、ただのうのうと生きていると罵られてきたんだ。お前達が勝手に攻めてきた挙句にな!俺はそれが許せなかった!」
ポラリスが言葉を強めると同時に、窓の外では氷柱の雨と暴風が吹き荒れ、悪魔達が吹き飛んでいく。
ポラリスは気にせず話を続けた。
「俺は幼い時から頭が良かった。多くの邪族のものが、俺に期待を託し、最高級の学問を用意してくれた。気づけば俺は実質的な邪族の長だ。彼らの想いに応えるため、何度となく戦場に立ち、功績を挙げ、この立場まで上り詰めた!もう一度、邪族の名誉を取り戻すために!」
ポラリスは熱を入れて話し続けてきたが、ふと鼻で笑い飛ばした。
「…だがこのザマだ。俺は結局、たった一体の悪魔を葬ることすらできん…幼い頃から俺を守ってくれたフェルカドすらも失い、邪族もほとんど全員死んだ。あとに残るのは俺だけだ」
「哀れんで欲しいのか?」
幸紀はポラリスに尋ねる。ポラリスは首を横に振った。
「まさか!哀れんでやるのはこちらの方だ」
「…?」
様子のおかしいポラリスに、幸紀は警戒を強める。ポラリスはそんな幸紀の様子を見て逆に笑い始めた。
「なにがおかしい」
「だってそうだろう?お前はこれから死ぬんだ!にも関わらずその傲慢な態度!自分の立場を何一つわかっていない!こんな滑稽なことがあるか?」
「追い詰められているのはお前の方だ」
「そう思っていればいいさ。もうじきわかるさ」
ポラリスはそう言って部屋の中にある時計に目をやる。そして再び微笑んだ。
「あと5分か…ここが保つのも同じくらいだろう。楽しみにしておけ、東雲幸紀」
ポラリスは微笑みを絶やさないまま言い放つ。
幸紀はそんなポラリスの真意を掴めないままでいた。
時計塔外部広場 バス車内
江美の運転するバスの中では、結依、弥生、雪奈、紫黄里、真理子といった射撃能力をもつメンバー達がバスの窓から車外に攻撃を続けていた。
「江美さん!もうほとんど敵はいませんよ!」
「そ~ですね~。あ、正面にいるんでちょっと待ってくださいね~」
江美は結依から報告を受けると、軽い空気感で正面にいた悪魔を轢き潰す。そのまま江美はバスを走らせつつ、さまざまな方向へとハンドルを切った。
「どうですか~?敵、まだいます~?」
「もう外にはいなさそうです!」
江美に尋ねられ、双眼鏡を手にしていた紫黄里が報告する。弥生も続けて報告した。
「日菜子ちゃん達の方にも敵の姿は見えないよー!」
「あら~、結構早く終わりましたね~。じゃあ手筈通り、日菜子さんたちと合流しましょうか~」
江美はそう宣言すると、日菜子たちが待機する時計塔の入り口へとバスを走らせ始める。
緊張が解けたバスの車内では、雪奈がひと息ついて、座席に腰を下ろす。そんな雪奈の頭を、隣にいた真理子が撫でていた。
「雪奈ちゃん、お疲れ様!かっこよかったよ!」
「本当ですか!?ありがとうございます…でも、ちょっと疲れちゃいました…」
「休んで休んで!」
真理子に言われるがまま、雪奈は背もたれに背中を預け、ふと窓の外を見る。
時計塔に取り付けられた巨大なモニターが見える。電源は付いていない。
瞬間、若干のノイズが走ったかと思うと、モニターの電源が入り、グレーのスーツに身を包んだ、真面目そうな中年男性が映し出された。
「え…!?ま、真理子さん、テレビですよね、あれ?」
「う、うん、そうだね。なんで急に復旧したんだろう…?」
雪奈と真理子は突然の事態に狼狽える。状況に気づいた車内の他のメンバー達も窓からモニターを見上げる。
江美もバスを停め、通信機で日菜子達に呼びかけた。
「日菜子さん~、時計塔のモニターが復旧して、何かのテレビ番組が映っているようなんですけど、何か知りませんか?」
「え?テレビ?...ちょっとわからないです。今、みんなでそっちに行きますね!」
日菜子はそう返答すると、一緒に戦っていた仲間達を引き連れ、時計塔の入り口から離れ、バスの近くから時計塔の外部に取り付けられたモニターを見上げるのだった。
『みなさん、こんにちは。お昼のニュース、報道官の