追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
星霊隊のメンバーたちは、時計塔の外に取り付けられたモニターに映し出されたニュースを見ていた。
『みなさん、こんにちは。お昼のニュース、報道官の
時計塔最上階
幸紀とポラリスのいる部屋にも、モニターが設置されており、そのモニターがひとりでに起動すると、外部のモニターに映っているものと同じものが映し出される。
直後、そこに映った人間である中年男性、一塚を見て、幸紀は一瞬でその正体を見抜いた。
「…テルギア...!」
幸紀の驚きをよそに、モニターに映る一塚は、落ち着いた様子で話を始めた。
『今もなお、悪魔軍による攻撃がやまない状況です。しかし、国防軍と『星霊隊』の活躍により、全国的に電力が復旧、これから段階的に各地の電波通信も回復していく見通しです』
「何を言っている?国防軍も『星霊隊』も電力復旧には動いていない。お前達悪魔軍が勝手にやった話だろう」
「話は最後まで聞くものだぞ?東雲幸紀」
言葉を並べる幸紀に対し、ポラリスはニヤけながら声をかける。幸紀が眉をひそめたその瞬間、見覚えのある姿がモニターに映った。
『各地に点在する悪魔軍の拠点を攻撃中の『星霊隊』は、今現在、冬城県にある悪魔軍の本拠点を攻撃中です。その映像を、取材班が捉えました』
台本を読み上げる一塚の横に映る画像は、幸紀を斜め上から撮影したような画像だった。
「…まさか…!」
幸紀は次の瞬間、何の映像が流れるかを察する。
だが、構わず映像は流れ始めた。
『彼は、『星霊隊』の隊長、東雲幸紀です。清峰早苗侯爵から直々に任命され、悪魔軍との戦闘を行っています』
一塚のナレーションが入りながら、時計塔の周囲で幸紀が暴れた映像が流れる。
そして、カットが入り、先ほどの、建物内で斜め上から幸紀を撮影したような視点に切り替わる。
『しかし、彼の正体は…』
一塚のナレーションが入った直後、映像の中の幸紀が動き始める。
直後、ほんの一瞬だけ、幸紀の本当の姿である、悪魔の姿が映ると、映像はそこで止まった。
『そう、東雲幸紀は、悪魔だったのです』
一塚が読み上げる。
幸紀は、その瞬間、いつどこでこれが撮影されたのかを理解した。
(この部屋に入る直前…ほんの一瞬だけ変装が解けたあの瞬間…!あの時を撮られたのか…!奴らの狙いは最初からこれか…!)
考えを巡らせる幸紀をよそに、映像がさらに切り替わる。
『この悪魔は、過去に一般住民も襲撃しています』
一塚のナレーションと同時に、幸紀の本来の姿、コーキが一般の人々を襲撃している映像が流れる。
(焔と真理子を襲った、俺のクローンを利用して撮影した動画か…)
『また、現在攻略中の敵拠点でも、悪魔と会話している光景が撮影されています』
再び映像が切り替わり、つい先ほどまで幸紀とポラリスが会話をしていた映像がモニターに映し出される。
幸紀が奥歯を噛み締めているのをよそに、一塚は、わずかに微笑んだような表情を見せた。
『東雲幸紀は、悪魔軍と通じているスパイであり、星霊隊はその手先であります。彼らは、人類の敵なのです』
「ふ…ふははは!!!」
モニターの電源が落ち、ポラリスの高笑いが響く。
幸紀は即座に振り向き、刀を向ける。だがポラリスは落ち着いていた。
「これでテルギア様の居場所はわかっただろう?お前達の住む国の首都、天正都だ」
「…これが貴様の策か!」
「おいおい落ち着け。俺たちはただ単に『事実』を言っただけだ。『東雲幸紀は悪魔である』、当たり前の事実だろう?」
「質問に答えろ!」
「ああそうだ、俺の策だよ!ふはははは!いい顔をするなぁ、コーキぃ!」
幸紀はポラリスの首元に刀を突きつける。だがポラリスはヘラヘラしながら話を続けた。
「お前、ずっと自分が悪魔であることを隠してたんだろう?悪魔軍を裏切り、人類の味方をするのなら、素直に人間にも正体を明かせば良かった。でもそれをしなかった。なぜか!『星霊隊を敵に回すのを恐れたから』だ!」
「なにを…!」
「どこまで行っても所詮お前も悪魔。つまり、『霊力』を浴びせられれば消滅する!お前が星霊隊を集めていた理由は、悪魔軍への復讐と同時に、自分に対する最大の脅威を、最も身近なところで監視するためだ!!『星霊隊』はお前にとって最大の武器であり、同時に諸刃の剣なんだよ!!」
ポラリスが声を張り上げる。その言葉に、幸紀は反論できない。ポラリスはニヤけながら言葉を続けた。
「このままテルギア様を倒しに天正都に戻るか?いいだろう。だがその道中、お前は悪魔も、人間も敵に回すことになるぞ?」
「俺は最強だ。人間ごときを敵に回したところで…」
「逆だろう?お前は悪魔より人間を恐れている。そりゃ、悪魔だけではお前には勝てないさ。だが、人間に背後を脅かされたお前が、果たして今までのように好き勝手暴れることができるか?」
ポラリスは勝ち誇ったような表情で幸紀に尋ねる。幸紀はただ睨んでポラリスに刀を突きつけることしかできなかった。
すると、ポラリスは幸紀の刀の刃に、自分から頭突きし、額を貫かせた。
「…?」
幸紀は突然のポラリスの奇行に、反応できないでいた。それをよそに、ポラリスはフラフラと、時計塔の1番大きな窓の方へと歩いていく。
「…ふ…ふふ…俺の…策は…ここからだ…!」