追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
同じ頃 時計塔外部
幸紀が見ていた昼のニュースを、日菜子たち星霊隊の24人の女性達も、同じように、時計塔の外部に設置されたモニターで目撃していた。
「どういう…こと…?幸紀さんが…悪魔…?」
ニュースの内容を信じきれない日菜子が、思わず口にする。すぐさま焔が声を張り上げた。
「そんなわけがない!みなさん、聞いて!これは悪魔軍のプロパガンダよ、騙されてはいけません!」
「待ってください、灯野さん!それはおかしいです!」
「何を言っているの千条さん!?」
「だって…あのニュースのスタジオは、天正都にあるんですよ!?当然、『大結界』が張られていて、悪魔が入り込めるわけないじゃないですか!悪魔にあのニュースは作れませんよ!」
「てことは…本当に幸紀さんは…」
「スタジオでも映像でもいくらでも作れるわ!幸紀とは昔から一緒にいる、彼が悪魔であるなんてありえない!」
焔と四葉は混乱しながら口論する。彼女達だけでなく、メンバーたちは全員、その場で近くにいた仲間達と議論を交わし始めた。
「幸紀さんが悪魔のはずがねぇだろ!?幸紀さんが悪魔だったらなんで悪魔と戦ってんだよ?」
「それは、悪魔に私たちを1番都合のいいタイミングで売り渡すためじゃないの?」
「…確かに以前から幸紀さんからは魔力らしき力は感じていました…悪魔である可能性は非常に高いといえるでしょうね…」
「幸紀さんを疑うの!?あんたら何回、幸紀さんに救われてるのさ!疑うなんてひどいよ!」
女性達はそれぞれ自分の意見を主張し、収拾がつかない。
そんな状況を見かねて、菜々子が日菜子のそばに近寄り、耳打ちした。
「お姉ちゃん、これ、ヤバいよ。上手いことまとめないと、このままじゃチームが崩壊するよ」
「そんなこと言われても…」
「とりあえず、なんか言ったほうがいいって、マジで」
「うーん…うーん…」
菜々子に言われ、日菜子は考えを巡らせるが、議論の声が大きくなるばかりで考えがまとまらない。
「ねぇ、みんな、その…」
日菜子は声をあげるが、弱々しい。混乱している彼女達の中には通らない。
「お願い!聞いて!」
日菜子は改めて声を張り上げる。一瞬全員が静まると、日菜子は考えを巡らせながら話し始めた。
「えーっと、その…まず、幸紀さんの意見を聞こう!ね?もしかしたら、本人から何かあるかも…」
「お姉ちゃん、後ろ!!」
日菜子が話していると、菜々子が声を上げ、それに従い、日菜子は振り向きながら逃げる。
見ると時計塔の最上階、割れた窓からポラリスが降ってきていた。
「敵…!?」
日菜子達が身構えると同時に、ポラリスは立ち上がり、頭の傷と、胸の爆弾を見せつける。
「う…あ…あ…」
「様子がおかしい、皆、逃げて!!」
日菜子が声を張り上げると、全員ポラリスから離れるように逃げ出す。
直後、ポラリスの胸にあった爆弾が爆発した。
周囲一帯を爆風が包み、星霊隊のメンバー達は霊力で身を守る。
間一髪、星霊隊のメンバー達に被害は出なかったものの、バスは爆風で大きく揺れるのだった。
「げふっ…皆、大丈夫?」
日菜子は砂汚れを軽く叩きながら、周囲の様子を確認する。全員無事ではあったが、四葉は霊力により剣を発現させ、立ち上がった。
「あの悪魔…明らかに様子がおかしかった…それに、最上階から出てきた…東雲さんが、悪魔の様子がおかしいことに気づかないとは思えない…なのに、私たちのいる方にわざわざ落としてきたってことは…」
「四葉?」
四葉は最上階を見上げる。ポラリスが落ちてきた窓からは、下にいる星霊隊のメンバーを眺める、幸紀の姿が見えた。
「すみれ…一緒に来て…!」
四葉はすみれとともに時計塔へと歩き出す。片手に剣を持ったまま。
焔はそんな四葉の前に立ち塞がった。
「千条さん、何をする気!?戦闘は終わったわ、武器をしまいなさい!」
「どいてください!『星霊隊』の副長を任せられている以上、私だって皆さんを守りたいんです!もし東雲さんが本当に悪魔で、私たちをただの駒としか思っていないなら…!今後、皆さんがどうなるかわからないんですよ!?だったらここで…!」
「バカなことを言わないで!あなたは幸紀に命を助けられたのでしょう?その恩を忘れるの!?」
「忘れてなんかいません!今だって東雲さんが悪魔なんて信じられません!でも!今の私には信じきれないんです!皆さんの命を預けていいのかどうか、わからないんです!だから、確かめたいんです!」
四葉は焔に対して強く訴える。返す言葉が浮かばず、動けない焔の横を、四葉は会釈をして通り抜ける。四葉の後に、すみれも、武器である長斧を片手に続くのだった。
その後ろに次々と星霊隊の女性達が続く。焔と日菜子は顔を見合わせると、戸惑いながら最後尾に続くのだった。