追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
時計塔最上階
時計塔の最上階からポラリスの死を見届けた幸紀は、何もせず、ただ刀の刀身を拭いていた。
(やつの自爆であの女達は俺に疑念を抱いただろうな…普段の俺ならば、ポラリスが自爆する直前に始末できたが…情けない、俺としたことが、動揺するとは…)
幸紀は自分を責めると同時に、螺旋階段を上る足音が近づいてきていることに気がついた。
(…あの女達を『星霊隊』に巻き込んだ時から、こんな日は来る気がしていた…俺は悪魔で、あいつらは人間。共存することなどできない。ならば、やはり戦うしかないんだ)
幸紀の背後から、扉の開く音が聞こえる。
「東雲さん」
直後聞こえてきた、四葉の声。幸紀は刀を片手に振り向く。
四葉とすみれが、それぞれの武器を構えてそこに立ち、その背後に他のメンバー達が並び立つ。
幸紀は、真正面から次に投げかけられる言葉を待った。
「東雲さんは…本当に悪魔なんですか…?」
四葉は剣を幸紀に向けて尋ねる。
幸紀は女性達の顔を見回すと、一言だけ返した。
「そうだと言ったら、どうする?」
「…必要に応じては、あなたを倒します…刺し違えてでも…!」
険しい表情で幸紀を睨む四葉に対し、幸紀はそれを真正面で受け止め、頷いた。
「いい覚悟だ」
「それで、あなたは本当に悪魔なんですか…!?」
四葉は幸紀に尋ねる。
幸紀はわずかに周囲を見る。
そして口を開いた。
「…悪魔ではない、と言っても、この状況では信用されんだろうな」
「東雲さん…!」
「あの報道は敵の工作であり、本当の敵は天正都にいる。そう言っても、信用はされないんだろう?」
「…あなたは私たちをいつでも捨てられる駒として利用してきたんですか?これからも、そうやって利用するんですか?」
「…」
四葉の質問に幸紀は答えない。四葉は俯いたのち、息を吐いた。
「…私は、この星霊隊が大切なんです…!だから、みんなを裏切って、殺すような真似はさせたくない…!東雲さん…答えられないなら、ここで…!!」
四葉は剣を掲げる。
「ちょっと待ったぁっ!!」
四葉と幸紀の間に、日菜子が両手を広げて割って入る。
「日菜子さん…!?」
「四葉、落ち着いて!みんなも聞いて!」
日菜子の声に、全員が耳を傾ける。日菜子はそのまま話を続けた。
「今、皆いろんなことを考えていると思う!でも、皆多分冷静じゃないと思うんだ!それは、幸紀さんも含めてね!だから、今すぐ結論を出すのはやめよう!」
「じゃあ、いつ…」
「明日の朝!今日は一旦休もう?焦って結論を出してもいいことなんかないし、お腹も空いたでしょ?だから、とにかく、今日はもうやめよう!」
日菜子は幸紀の方にも振り向く。
「幸紀さん。この通り、明日の朝まで、一回待ってくれませんか?この後も幸紀さんを信じて、幸紀さんと一緒に行動するか、それとも違う道で行くか…私たちも考える時間が欲しいんです。お願いします!」
日菜子が頭を下げる。
幸紀は自分の刀を見る。
今なら日菜子は完全に無防備。斬ることは容易。
(…この期に及んで、まだ俺を信じる選択肢があるのか…?四葉のように警戒するのが普通だろう…だが….もし万が一、この兵力を維持したまま、テルギアと戦えるのならば…確実に勝てる…)
幸紀は刀を鞘に納めると、刀を鞘ごと霊力の光の粒に戻した。
「…わかった」
「ありがとうございます!」
「だが俺はお前達と一緒にいないほうがいいだろう。どこか個室に篭っておく」
「…そうですね。じゃあ、一緒に、どこか部屋を探しましょう!」
幸紀は日菜子とともに歩いていく。
四葉が道を開け、他のメンバー達も次々と道を譲り、幸紀は螺旋階段を降りていくのだった。
(…人間、か)
幸紀は正面を見つめながら、1人、物思いに耽るのだった。