追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第27話(2)彼女たちと悪魔

同日 14:00 冬城県 冬城市 冬城時計塔 1階

 

 悪魔軍の本拠点となっていた時計塔を陥落させた星霊隊の24人の女性たちは、少し遅い昼食を取っていた。

 

 しかし、声を発する人間は誰もいない。全員が黙々と食事を続け、一切の会話をしていなかった。

 

(ねぇ、結依?何この空気?誰か死んだのぉ?)

 

 部屋の隅で黙々と食事を続ける結依の脳内に、サリーが話しかける。結依は食事をしながら、脳内でサリーに答えた。

 

(別にそういうわけじゃないんですけど…今、揉めてるんですよ。幸紀さんについて、みんな意見が割れてて…どうするんだろう…)

 

 結依は周囲を見回すが、やはり誰も言葉を発さず、互いに目線も合わせようとしない。結依は、自分の食事を終えると、部屋の隅に置かれた、ひと皿だけのカレーに目をやった。

 

「あ、あの、食べ終わったので、それ、持っていきますね!」

 

 結依は、そう宣言すると、部屋の隅に置かれたカレーを持ち、全員のいるその部屋から逃げるように、早足で去っていく。

 

 誰もいない階段を駆け上がり、3階にあるスタッフ用の個室の前にやってくると、結依は扉を叩いた。

 

「幸紀さん?いますよね?入りますよ」

 

 結依は一方的にそう言うと、扉を押し開け、中に入る。

 部屋の中では、幸紀が、1人、部屋の隅に置かれたベッドに腰掛け、黙々と刀の手入れをしていた。

 

「…結依か」

 

 幸紀は結依の方を一瞬見てから呟く。結依は小さく頷くと、入ってすぐのところにあった小机にカレーを置き、扉を閉めた。

 直後、結依の体から分離するように、サリーの姿が現れると、幸紀の隣に座り込み、彼の腕に頬擦りし始めた。

 

「あーん、コーキぃ…やっと2人きりで『お楽しみ』できるね?ちょうどベッドもあるしぃ、コーキのすっごい立派なアレで…」

 

「そんなことしてる場合じゃないですよ!!」

 

 幸紀の下半身に手を伸ばそうとするサリーを叱りつけるように、結依は声を張り上げる。結依は、幸紀の正面に立って話し始めた。

 

「どうするんですか、幸紀さん!?さっきのニュースで、みんな、あなたが悪魔だって知っちゃいましたよ!?四葉さんなんかは、ニュースを信じて、状況次第ではあなたを倒すつもりです!」

 

「上等だ。斬り捨ててやる」

 

「かっこいい!」

 

「ダメです!あの子たち、騙されているだけなんですよ!それを殺すなんて…そんなのひどいです!素直に真実を言いましょう?悪魔たちに理不尽に追放されて、その復讐のために戦っているって…!みんななら信じてくれます!」

 

「悪魔と人間は分かり合えん。いくら言葉を尽くしても無駄だ。お前もそう思うだろう、江美」

 

「へ?」

 

 幸紀が江美の名前を呼ぶと、部屋の扉が開き、江美が入ってくる。

 

「あちゃー、バレてましたか~」

 

「いつの間に…」

 

 驚く結依をよそに、幸紀は江美の方に目をやった。

 

「今回のニュースで、お前の上司にも俺の正体が伝わったのだろう?上の命令で俺を消しに来たか?」

 

 幸紀は江美に尋ねる。一方の江美は、微笑んだまま、幸紀の隣に腰掛けた。

 

「そんな物騒なことはしませんよ~。まだ命令も来てないですから」

 

「来たら殺すか」

 

「う~ん、それも微妙ですね~。私としては、あなたにはまだ死んでほしくないんですけど~」

 

 江美の言葉に、サリーが反応した。

 

「へー、白髪女、見どころあるじゃん」

 

「まぁ、私。知性派なんで~。というのはさておき」

 

 サリーの茶々を受け、江美の声が一段低くなる。

 

「天正都に悪魔が潜入しているのは間違いのない事実…それも、結界を貫通している以上、並外れて危険な悪魔。『皇牙衆』の忍びとしては、東雲幸紀以上に、天正都にいる悪魔を危険視している。それは『皇牙衆』の上層部も同じはず」

 

「江美さん、それって…」

 

「幸紀さんの力が必要ってことです~」

 

 江美はそう言うと、幸紀の方に向き直った。

 

「なので、どんな形であれ、あなたには天正都に行ってもらいますよ。『星霊隊』のみなさんと一緒に。説得を諦めるなんて言うのは、ナシですからね~」

 

「俺に指図をするな」

 

「指図じゃなくて『お願い』ですよ~」

 

 江美はそう言うと、ベッドから立ち上がり、部屋の出口へ歩き出した。

 

「それじゃあ、私はこのへんで。そろそろ他の子達にバレちゃうかもなんで」

 

 江美が部屋を去る。残された結依も、幸紀の方に向き直った。

 

「幸紀さん、みんなを説得すること、もう一回考えてみてほしいです。みんなを信じてみてほしいです、お願いします」

 

 結依はそう言って頭を下げると、部屋を後にしようとする。部屋に残ったのは、幸紀と、その股ぐらに顔を埋めるサリーだけだった。

 

「信じるとか信じないとかメンドーだね、人間って。そんなことより、コーキ、久々に、『お味見』を…」

 

「あ、消し忘れた」

 

 幸紀のズボンのファスナーに手を伸ばそうとしたサリーだったが、結依が扉を開けて呟くのと同時に、その姿を消す。結依は、背中越しに幸紀に小さく会釈をしてから、扉を開け、部屋を出るのだった。

 

 部屋の中で幸紀は1人になる。

 

 天井を眺め、そして、また刀の手入れをするのだった。

 

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