追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第4話(4)闇夜の下山

同じ頃 19:30

 弥生を先頭にしながら山を下る日菜子たちの耳に、悪魔の悲鳴がこだまして聞こえてくる。弥生の横を歩いていた明宵は、それを聞いてブツブツと呟いた。

 

「…ここまで幸紀さんの霊力が伝わってくる…悪魔もどんどん倒れてます…凄まじいですね…」

 

「当然だよ、幸紀さんだもん」

 

 明宵の言葉に、日菜子が自信に満ちた表情で頷く。四葉も便乗して頷いた。

 

「えぇ!でも甘えてばかりもいられません!早く行って出口を確保しましょう!」

 

「止まって!」

 

 先頭を歩いていた弥生がメンバーたちを止める。次の瞬間、地面の枝が踏み折られる音がしたかと思うと、彼女たちが歩いていた道の脇にある草むらから、5体の悪魔が姿を現した。

 

「悪魔…!」

 

「ニンゲン!コロシェエエエ!!」

 

 悪魔たちは声を上げると、手に持っていた棍棒を振り上げながら日菜子たちに迫ってくる。弥生と共に先頭にいた明宵は霊力で本を形作ると、それを広げながら前に出た。

 

「…下がって…!」

 

 明宵がそう言って悪魔たちの前に立ったかと思うと、次の瞬間、明宵の持っていた本から、灰色の光が立ちのぼり、次の瞬間、その光が全長3メートルほどの筋骨隆々の獣人の上半身を形作る。

 

「これは…!?」

 

「明宵ちゃんの武器だよ!霊獣人《れいじゅうじん》を使役できるのが、明宵ちゃんの能力なんだ!」

 

 驚く結依に、弥生が状況を説明する。そんなことも気にせず、悪魔はさらに明宵に近づいていた。

 

「明宵ちゃん!」

 

 日菜子が明宵の名前を呼ぶ。しかし、明宵は冷静に本を持つ左手を伸ばした。

 

「『サンフォール・ターン』…!」

 

 明宵が小さく叫ぶと、明宵の本の上にいる獣人は雄叫びを上げ、迫ってくる悪魔たちの顔面を、樹木のように太いその腕で殴り抜ける。迫ってくるもう一体の悪魔も、回転して逆の腕の裏拳で殴り飛ばし、そのまま獣人は腕を伸ばして回転し、ダブルラリアットを放つ。

 思い切り獣人に殴りつけられた5体の悪魔たちは、吹き飛び、黒い煙になって消えていった。

 一瞬で5体もの悪魔を倒した明宵に、メンバーたちは思わず拍手を送っていた。

 

「すごい…!5体もいたのに、あっという間にやっつけちゃった…!」

 

「冥綺さん、強いんですね!」

 

 日菜子と四葉は驚きを隠せずに明宵に言う。明宵はニヤリと笑うと、本を閉じて獣人を光の粒に変え、本自体も光の粒に変えた。

 その間に弥生はライトで周囲を見回す。そして、周りに敵がいないことを確認すると、前に歩きながらメンバーたちに声をかけた。

 

「よし、大丈夫、ついてきて!」

 

 弥生が先導するのに従って、メンバーたちは続いていく。山道を下りながら、明宵は弥生の隣にやってくる。すぐに明宵は持っていたスマホを弥生に見せた。

 

「…弥生、これを見てください」

 

「え?…うん?」

 

「どうしましたか?」

 

 明宵に見せられた画面に弥生が首を傾げていると、四葉が後ろから尋ねる。明宵はすぐに状況を説明した。

 

「…データによれば、この付近の霊力爆弾が作動しているはずなんです…この画面のバツ印がどんどんと消えているでしょう…?」

 

「なのに爆発音が1回も聞こえてこないなんておかしいの!悪魔が罠にかかったなら、絶対に爆発するはずなのに!」

 

 明宵と弥生がスマホを見せながら、他のメンバーたちに言う。不思議に思いながらも、日菜子は自分の考えを口にした。

 

「きっと、幸紀さんが倒した悪魔の悲鳴でかき消されちゃったんじゃないかな?」

 

「でも爆発音って大きいよ?山頂にいても聞こえたんだから、近くだったらもっと聞こえるはずだよ!」

 

「えぇ…?うーん…なんなんだろう…」

 

 弥生に反論され、日菜子が戸惑っていると、日菜子の後ろにいた結依が足を止め、メンバーたちの進行方向の足元を指差した。

 

「あ、あれ、なんですか!?」

 

「!」

 

 結依の言葉に、すぐさま弥生はライトを向ける。照らし出された山道の先から姿を現したのは、人間の膝くらいの高さほどの大きさである、半透明な青色をした、スライムのようなもの。しかし、その不定形な体からは対照的な赤黒い触手のようなものが2本伸びていた。

 

「スライム…に、触手…?」

 

 晴夏が呟いていると、そのスライムはゆっくりと這いずってメンバーたちに近づいてくる。

 地面にあった枝と、そのスライムが触れ合うと、次の瞬間、枝は蒸発し、消滅した。

 

「通ったところが溶けてる…!近づかれたら危険です!下がりましょう!」

 

 四葉がそう言うと、全員スライムと距離を取るように後ろに走る。ある程度距離を取ると、弥生はライフル銃を、結依は自分の武器であるボウガンを発現させた。

 

「遠距離攻撃なら安全なはず…!食らえ…っ!!」

 

 結依はスライムに銃口を向け、霊力で作った弓矢を放つ。弥生もライフルの引き金を引いてスライムに銃弾を放った。

 弓矢と銃弾がスライムに直撃したその瞬間、そのふたつは蒸発し、煙になって消えた。

 

「嘘…!?」

 

 結依が思わず言葉を失ったその瞬間、スライムは触手を伸ばし、結依を捕まえようとする。結依の足が止まったその時、弥生が結依の前に出ると、触手に何かを持たせながら、結依を庇った。

 

「辰馬さん、あれは!?」

 

 四葉が剣を発現させながら弥生に尋ねる。弥生はニヤリとしながら、弥生の持たせたものをスライム本体に運んでいく触手を眺めつつ答えた。

 

「霊力爆弾だよ!外からの攻撃が効かない化け物でも、内側からなら!」

 

 弥生が話しているうちに、触手はスライムの中に弥生の霊力爆弾を吸収する。スライムの半透明な体の中に、弥生の爆弾が取り込まれた。

 

「2…1…!」

 

 弥生がカウントダウンをすると、それに合わせて爆弾がスライムの体内で爆発する。

 辺りが強い光に包まれる。

 その場にいた全員が目をもう一度開いたその瞬間、スライムがまだ生きていることに気がついた。

 

「そんな…!?」

 

 弥生は目の前の光景が信じられずに言葉を失う。しかしそのスライムは気にせず、自分の本体から新たに4本の触手を生やし、合計6本の触手を、女性たちに向けて伸ばし始めた。

 

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