追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第4話(5)異形の怪物

「下がって!!」

 

 四葉がすぐさま迫ってくる触手に剣を振るう。迫ってくるうちの1本を斬り落としたが、次の瞬間、四葉の腕と胴体を丸ごと1本の触手が縛り上げた。

 

「ううぐぅっ!!」

 

「四葉!」

 

 触手が四葉を連れ去ろうとするのを見て、日菜子は反射的に四葉にしがみつき、触手に対抗する。明宵はその様子を見て、すぐに霊力で本を発現させた。

 

「…手伝いま…」

 

 しかし、明宵が本を使って霊獣人を発現させようとしたその瞬間、2本の触手が明宵の手首と首を締め上げる。

 

「…!!」

 

「明宵!」

 

 明宵は本を落とし、さらには声も上げることもできないままスライムの方へと引き込まれていく。すぐに晴夏が明宵の体に飛びつくが、抵抗しきれず晴夏ごとゆっくりと持っていかれていた。

 

「うわぁっ!?離して!!離してよ!!」

 

「いやぁああっ!」

 

 同じ頃、それぞれの武器で抵抗しようとしていた弥生と結依も、彼女たちが引き金を引くよりも早く、触手に捕えられ、武器も使えない状態にされてスライムの方へと引きずられていく。

 

「どうしよう…!このままじゃ…!あぅっ…!」

 

 なんとか打開策を探そうとした日菜子にも、新たに生えてきた触手が迫り、日菜子の首を締め上げて持ち上げる。日菜子は必死に振りほどこうともがくが、徐々に目の前のスライムが近づいてきているのがわかった。

 

「助けて…幸紀…さん…!」

 

 日菜子は目を閉じ、思わず幸紀の名前を呼ぶ。

 

「いやっ、いやあああ!!」

 

 最初に触手に捕えられ、今最もスライムに近い四葉が悲鳴をあげる。

 

 彼女が死を覚悟したその瞬間、彼女を引き込む力が急激になくなり、宙に浮いていた四葉の体は地面に落ちた。

 

 四葉だけでなく、日菜子も、明宵も、弥生も、結依も、彼女たちを捕まえていた触手の力が、その一瞬で無くなると、彼女たちは顔をあげる。

 

 弥生の落としたライトは、いつの間にかやってきて、触手を全て両断していたその男の顔を照らし出していた。

 

「幸紀さん…!!」

 

 日菜子が彼の名前を呼ぶ。幸紀は背中越しに日菜子たち6人の女性を見ると、すぐに正面のスライムに向き直った。

 

「…ふん、狂族《きょうぞく》のペットか。初見の人間を苦しめることしかできない雑魚が」

 

 幸紀はそのスライムを見下ろして呟く。次の瞬間、スライムから8本の触手が生えると、触手は全て幸紀に迫っていく。幸紀は全く抵抗せず、触手を体に巻き付けさせた。

 

「幸紀さん!?」

 

 異様な光景に、思わず晴夏が声を上げる。次の瞬間、触手は幸紀を一気に引き込み、スライムの中に幸紀の体全体を取り込んだ。

 

「幸紀くん!!」

 

 スライムの中に完全に取り込まれた幸紀を見て、弥生は思わず叫ぶ。他のメンバーたちも絶望したその時だった。

 

「克禍斬《かつかざん》」

 

 幸紀の声が聞こえたかと思うと、スライムの半透明の体から、日本刀の刀身が突き出される。そして霊力によって刀が青白く光ったかと思うと、次の瞬間、球体状になっていたスライムの上面に、一直線に剣閃が奔る。

 直後、スライムは真っ二つに割れたかと思うと、弾けて蒸発し、その中からは液体で濡れて髪が下りている幸紀が現れた。

 

「造作もない」

 

 幸紀は下りていた前髪をかき上げると、自分を見ている星霊隊の女性たちの視線に気がつく。幸紀は持っていた刀を光の粒に変えると、話し始めた。

 

「悪魔は片付けた。さっさと行くぞ」

 

「え、すごい数いたのに、全部!?本当に!?」

 

 弥生が幸紀に尋ねると、明宵は周囲の気配を探る。そして、弥生に向けて頷いた。

 

「…魔力の気配は一切ありません…幸紀さんが本当に全て倒してくださったようです…助けてくれたこともあわせて、ありがとうございました」

 

「ありがとう!幸紀くん!」

 

 明宵と弥生は口々に礼を言う。他のメンバーたちも礼を言うと、幸紀は眉も動かさずに山の出口の方を向いた。

 

「礼はいい。それよりも、ここまで来たなら下山してしまおう」

 

「了解!じゃあ、このままみんなを案内するね!」

 

 弥生はそう言うと、メンバーたちの先頭を切って進んでいく。幸紀たちは、弥生に続いて山を下りて行くのだった。

 

 

数時間後 21:30

 幸紀が悪魔を全て倒した甲斐もあり、山道に悪魔はもう出なかった。そんな山道を下り切った幸紀たちは、山の入り口を示す立て看板の前に立った。

 

「お疲れ様!これで山は終わりだよ!」

 

 弥生が全員の前に立って言う。幸紀以外のメンバーは、ゆっくりとその場に腰を下ろした。

 

「…疲れました」

 

「私も…また歩くんですか?」

 

 明宵がぼやき、結依が尋ねる。その問いに、幸紀は何かを見つけながら答えた。

 

「いや、その必要はなさそうだ。あれを使うぞ」

 

「え?」

 

 幸紀はそう言ってひとり、目の前の駐車場へと歩いて行く。彼の歩いて行く先には、マイクロバスが1台停まっていた。

 

「あぁ、登山用のバス!」

 

「勝手に使っていいんでしょうか?」

 

 弥生が声を上げると、四葉は尋ねる。そんな四葉に、明宵が答えた。

 

「…あのバスはうちのグループ企業のものですので…クレームはうちが一手に引き受けます…それに…」

 

「それに?」

 

「…足下を」

 

 明宵はそう言って四葉の足元を指差す。弥生がライトで照らすと、誰かの靴の片方だけや、服の切れ端が散らばっていた。

 

「これ…まさか…」

 

「…先ほどの悪魔に襲われた人々、だったものでしょう…」

 

「バスに乗れる人も、もういないってこと…か」

 

 明宵の言葉に、結依が呟く。重くなった空気の中、俯いていた日菜子が顔を上げた。

 

「みんな、前を向こう。みんながみんなこうなっちゃったわけじゃない。私たちは生きてるし、他にも大勢生きている人たちはいるはずだよ。そういう人たちのために、私たち、生き延びて、強くなって、戦おう?」

 

「日菜子の言う通りだぜ。殺されちまった人たちの分まで、オレらで頑張ろう!」

 

 日菜子の言葉に、晴夏も共感し、声を張る。それを聞いた他のメンバーたちも、顔をあげ、賛同する。

 幸紀は、バスの運転席にいながら、彼女たちの言葉を聞いていた。

 

(あれだけ危険な状況に置かれても、こいつらは諦めようとしない…この図太さ、バカにできないかもな)

 

 幸紀はそう思うと、バスの運転席に挿さっていたキーを回す。エンジンがかかり、音を立て始めると、幸紀はバスから顔を出して女性たちを呼んだ。

 

「行くぞ。早く乗れ」

 

「はい!」

 

 女性たちは幸紀の言葉に従ってバスに乗り込む。彼女たちが全員乗り込むと、バスは暗闇を照らしながら、ゆっくりと前に進み始めるのだった。

 

 

 

隊員紹介コーナー

 

隊員No.5

名前:辰馬《たつま》弥生《やよい》

年齢:19

身長:160cm

体重:45kg

スリーサイズ:B79(C)/W55/H80

武器:スナイパーライフル

好きなもの:自然

嫌いなもの:自然を大切にしない人

特技:射撃、罠の設置

趣味:狩猟、キャンプ

外見:緑白色の長い髪に、緑の帽子を被ったスレンダーな体型

能力:霊力を込めた銃弾で長距離射撃をおこなう

簡単な紹介

龍明山で一人暮らしをしている猟師。

普段は持ち前の明るさでハイキングに来る人々を案内したりする。

自然の中で生きてきたこともあり、その明るく奔放な性格からは想像し難い天才的な射撃技術やシビアさをのぞかせることがある。

 

 

隊員No.6

名前:冥綺《くらき》明宵《あけよ》

年齢:18

身長:153cm

体重:48kg

スリーサイズ: B90(E)/W59/H86

武器:魔導書、使役する霊獣

好きなもの: 霊力に関する研究

嫌いなもの:運動、うるさいもの

特技:霊力に関するあらゆること

趣味:読書、霊力の研究

外見:黒髪で、前髪で目を隠している

能力:人並み外れた強力な霊力と、霊獣を使役する能力を持つ

簡単な紹介

冥綺財閥のひとり娘にして、この国を代表する霊力研究の専門家。

霊力に関する知識では、彼女の右に出るものはそういない。

目を見せない髪型と無口で声が小さいことからミステリアスな女性と思われがちだが、実は霊力の関わらないことではポンコツな部分が多い

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