追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

26 / 100
第5話(5)雪解け

数分後 バス車内

 日菜子たちがバスの中に入ると、幸紀が運転席に座っていた。

 

「お疲れ様でした!幸紀さん!」

 

「大変でした…」

 

 星霊隊の女性たちは、バスに入るなり愚痴をこぼす。日菜子は雪奈を運転席近くの座席に座らせる。そうしているうちに、列の1番後ろにいた咲来もバスの中に入った。

 咲来は幸紀に気づくと、その場で足を止める。

 幸紀が疑問に思っていると、気絶していた雪奈が目を覚ました。

 

「…ん…あれ、ここは…?」

 

「目が覚めたか」

 

 幸紀は雪奈に声をかける。幸紀の声で、他のメンバーたちも雪奈が起きたことに気がついて集まってきた。

 

「あ、良かった!無事だったんだね!」

 

「え?は、はい、雪奈は無事ですけど…お姉さんたちは…?」

 

 雪奈は不安そうに日菜子たちに尋ねる。日菜子はすぐに柔和な表情で話し始めた。

 

「私たちは『星霊隊』!悪魔と戦いながら旅をしてるチームだよ!」

 

「悪魔…あぁっ!咲来さんは!?雪奈たち、悪魔に捕まって!」

 

 雪奈は取り乱しながらその場にいた人々に尋ねる。すぐに咲来が雪奈の前に顔を出した。

 

「生きてますよぉ、ごめんなさい。この人たちが助けてくました」

 

 咲来はそう言って日菜子たちに対して腕を広げる。日菜子たちは笑顔を見せると、雪奈も八重歯を見せて笑い、椅子から降りて頭を下げた。

 

「助けてくれてありがとうございました!」

 

「あぁ、私も遅くなっちゃってすみません、助けてくれてありがとうございましたぁ…」

 

 雪奈が礼を言うのに合わせて、咲来も礼を言う。そんな2人を見て、日菜子が手を横に振った。

 

「礼なんていいよ。それよりも、私たち、悪魔を倒すために旅をしてて、少しでも多く強い仲間が欲しいんだ。雪奈ちゃんと、咲来ちゃん、良ければ、一緒に『星霊隊』として戦ってくれませんか?」

 

 日菜子は雪奈と咲来に手を差し出しながら言う。先に返事をしたのは雪奈の方だった。

 

「はい!もちろんです!雪奈、がんばります!」

 

「かわいい…」

 

「うん!よろしく!」

 

 小さな体を大きく動かす雪奈の挨拶を見て、四葉は思わず頬を緩める。日菜子が雪奈に挨拶をしていると、咲来も体をクネクネさせながら俯きながら声を発した。

 

「あーえーと、私もご一緒させていただきますねー…どーせ生きる価値もないカス以下の以下の人間なんですけども…」

 

「あれ?悪魔とハーフなんじゃ?」

 

「どこでその情報をぉお!?」

 

 晴夏が呟くと、咲来は急に勢いを取り戻して声を上げる。咲来はすぐに晴夏の隣に、自分の素性を詳しく知っている明宵が座っていることに気がついた。

 

「あぁ~明宵さんですねぇ?」

 

「…えぇ…緊急事態でしたので、雪奈さんと咲来さんの情報を皆さんに共有しました」

 

「いやぁ~困りますよぉ~いくら私が生きる価値のないカス以下の以下でも個人情報を流す際にはご相談をし…どわぁああ!?」

 

 咲来が明宵に話していると、急にバスが走り始める。車内にいる人間たちの中で唯一立っていた咲来は、通路に倒れたが、すぐに起き上がって運転席にいる幸紀のもとに歩み寄った。

 

「ちょとちょとちょっとぉ!今いいところだったじゃないですかア!ていうかあなた誰なんです!この美少女パラダイスでたった1人の男の人!美味しい役得ハーレム主人公のお名前は!?」

 

「東雲幸紀」

 

「ユ・キ・ノ・リ!あの幸紀の『ユ』に、幸紀の『キ』に、幸紀の『ノ』に、幸紀の『リ』で…」

 

 幸紀の耳元で騒ぐ咲来を無視し、幸紀はバスのハンドルを急に切る。咲来は姿勢を崩し、座席のひとつに倒れ込んだが、すでにそこにいた誰かに背中を支えられた。

 

「いやぁ、助かりましたー…」

 

 咲来が自分を助けてくれた人物に礼を言って振り向いたその瞬間、咲来はそこにいる人物の顔を見て固まった。

 

「はぁい、サキっち」

 

 咲来の目を見て咲来の腰を抱いているのは、妖しい目をした結依だった。

 

「結依、黙らせろ」

 

「らじゃ」

 

「ひっ!」

 

 幸紀の命令を受け、結依は怯える咲来の首もとを掴む。そして、咲来に妖しく微笑んだ。

 

「さっきの続き、しちゃいましょ?」

 

「ま、待って!私結婚するまではんんん!!?」

 

 結依は咲来の言葉を塞ぐように、熱烈な口付けをする。咲来はジタバタしたが、そのうち力を失っていくのだった。

 

「これで静かになったな」

 

 幸紀はそう呟くと車内を見ることができるバックミラーに目をやる。先ほどまで明るく振る舞っていた雪奈が、座席に座ってもの悲しそうに窓の外を眺めていた。

 雪奈の隣に座っていた日菜子は、そんな雪奈に気づいて声をかけた。

 

「雪奈?どうしたの?」

 

「…この街をこうしてしまったのは…雪奈なんですよね…」

 

 雪奈は日菜子に尋ねるように言う。窓の外に広がる景色は、ほとんど全ての建物の窓が割れ、柱などは何かがぶつかって大きく削れた後があり、乗用車は天井に穴が開いている。そのほとんどが、雪奈の霊力が作り出した氷柱によるものであることは想像に難くなかった。

 

「みんなの大切なものを奪ってしまった…雪奈のせいです…!きっと、人も大勢…!」

 

「悪魔だ」

 

 感情的になる雪奈に、幸紀がミラー越しに語りかける。雪奈は幸紀に言われると、それを肯定した。

 

「そうです!雪奈に悪魔の血が入ってるせいで…!」

 

「違う、これは全て悪魔の責任だと言っている」

 

 幸紀の言葉に、雪奈は顔を上げる。幸紀はミラー越しに雪奈を見たまま話を続けた。

 

「この街で生きてる人間は見なかった。既に皆死んだか逃げたかしたのだろう。だからお前たちが殺した人間はいない」

 

「でも…!」

 

「むしろお前たちは人間を逃がすために戦っていたのだろう」

 

「…なんで、それを…!」

 

「悪魔軍が正面切ってお前たちを捕まえられたとは思えん。おおよそ戦い疲れたお前たちを数で囲んで捕らえたのだろう。それ以降のことは全て悪魔軍がしたことだ。お前が気に病むことではない」

 

 幸紀は雪奈に背中を向けながら言う。しかし、雪奈は、幸紀のその言葉に、溢れるものを堪えることができなかった。

 日菜子は雪奈の背中を優しくさする。幸紀はそれをミラー越しに見ると、さらにアクセルを踏んだ。

 

「わかったのなら行くぞ。泣く暇があるなら悪魔を倒せ。俺たちは悪魔を絶滅させなければならん。旅はこれからだ」

 

「…はい!」

 

 幸紀の言葉に、女性たちが返事をすると、バスは溶けた氷の輝きを浴びながら、前へ前へと進んで行くのだった。

 

 

 

隊員紹介コーナー

 

隊員No.7

名前:霜山《しもやま》雪奈《せつな》

年齢:15

身長:148cm

体重:42kg

スリーサイズ:B75(A)/W63/H82

武器:ステッキ

好きなもの:おばあちゃん

嫌いなもの:サウナ

特技:アイススケート

趣味:家庭菜園

外見:青白い髪のツインテールで、青白い瞳をしている

能力:氷に関する非常に強力な魔力と霊力を持つ

簡単な紹介

無邪気で純粋、明るく素直で優しい女の子。

人間と悪魔のハーフで、強力すぎるほどの氷の霊力と魔力を有する。

一方でその特殊な体のせいで疲れやすく、強力な技を使うと自分の身体に負担がかかってしまう。

 

隊員No.8

名前:風音《かざね》咲来《さき》

年齢:17

身長:154cm

体重:44kg

スリーサイズ:B85(C)/W58/H83

武器:ギター

好きなもの:音楽

嫌いなもの:自分

特技:楽器演奏(全般的に弾けるが、主にギターが得意)

趣味:音楽鑑賞、ハードロック演奏

外見:暗い赤紫色のミドルヘア

能力:風を操る強力な霊力と魔力を有する

簡単な紹介

人間と悪魔のハーフなので風に関する非常に強い霊力と魔力を扱う女性。

しかし、悪魔とのハーフであるという体質から情緒不安定で常にテンションが安定しない。

基本的には近寄りがたいが、慣れた人間からすると変な生き物として認識されている。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。