追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
同じ頃 桜丸病院内 病室
安藤の放送が流れると病室の前で待機していた四葉は、星霊隊のメンバーたちを集合させるため、病室に入る。病室の中には雪奈と咲来がおり、2人はベッドに横たわる老婆と話していた。
「霜山さん、風音さん」
四葉が2人に声を掛けると、雪奈と咲来はすぐに四葉の方に向く。四葉はすぐに話し始めた。
「おそらく、『星霊隊』にもこの後何かしらの指示が出ると思います。いつでも動けるように集合をお願いします」
四葉が言うと、一瞬雪奈の表情がなくなる。しかし、雪奈はすぐに明るく返事をすると、ベッドの老婆に話しかけた。
「…わかりました!おばあさま、雪奈、行かなければならなくて…」
「いいのよぉ。気をつけるんだよ?雪奈はいい子だから、他人のことばかり気にしちゃうだろうけど、自分自身も大切にするんだよぉ?」
「はい!雪奈、頑張ります!」
「咲来ちゃんもねぇ。雪奈、ちょっと頑張りすぎちゃうから、見ててあげてねぇ」
「はいぃい!裏に表に隅々までなんなりとぉ!」
咲来が大袈裟な返事をすると、老婆は四葉に気がつく。四葉は小さく会釈をした。
「すみません、お話し中なのに…」
「いいんですよぉ。私たちを守ってくださるんでしょう?助けてくれる人に文句なんて言えません。どうか、私の孫と、お友達の咲来ちゃんと、ここの皆さんをよろしくお願いしますね」
「…はい!」
老婆に言われると、四葉は姿勢を正して返事をする。老婆はそんな四葉に微笑んだ。
そうしていると、病室の扉が開き、璃子と麗奈が入ってくる。その背後には、日菜子のほか星霊隊のメンバーたち全員が立っていた。
「今から皆さんを搬送します。落ち着いて指示に従ってください。『星霊隊』の皆さんは、あちらの患者さんを。くれぐれも激しく動かさないように」
「わかりました!」
璃子の指示に従って日菜子は他のメンバーたちを率いながら指示された患者の方へと動き出す。そうして四葉たちとも合流すると、キャスターのついたベッドごと、患者たちを病室の外へと搬送し始めた。
その頃 桜丸大学 悪魔軍拠点
病院に潜伏させている悪魔軍のスパイから送られてきた映像と音声を見聞きした、悪魔軍の指揮官、ラウムは電話の受話器を取り、自分の部下たちに命令していた。
「そうだ。全兵力を裏門に集中させろ。人間は皆殺しだ。『やつ』に病院の電源を落とさせ、コーキと人間を分断する。私も裏門に向かう。作戦を始めろ」
ラウムは指示を出し終えると受話器を置き机に立てかけていた軍刀と拳銃を腰に差した。
「弱者は死ぬのみ。弱いのが悪いのだ」
ラウムはひと言そう呟くと、自らの体を一度黒い煙に変えるのだった。
9:00 桜丸病院地下駐車場
日菜子たち星霊隊のメンバーたちは、ベッドに載った患者たちとともにエレベーターで地下駐車場にやってきた。
エレベーターが到着するなり、弥生がライフルを構えて駐車場の中を警戒して偵察する。敵がいないことを確認した弥生がハンドシグナルを送ると、エレベーターの中にいた璃子を先頭に、日菜子たちがベッドを押してエレベーターから患者を出した。
「あまり良くはないのだけど、あそこにトラックが見えるでしょう?あれを使って患者を安全なところまで運ぶわ」
「了解です!」
璃子が目の前に見えるトラックを指差しながら言うと、日菜子たちは患者たちの載ったベッドを押しながら返事をする。璃子は1人先にトラックの荷台まで走ると、その中にあった板を斜めがけし、スロープを作った。
「さ」
璃子の誘導に従い、先頭にいた日菜子が急造のスロープを上らせるようにベッドを押す。日菜子は力一杯にベッドを押すが、人の重さとベッドの重さもあり、かなり手間取っていた。
「くっ…!」
「貸して」
日菜子が手間取っていると、璃子がベッドの逆側を片手で軽々と引っ張り、ベッドを荷台の中に引き上げる。璃子の腕力の強さに、日菜子は思わず目を丸くした。
「次!」
璃子は全く気にせず、荷台の中でベッドを整列させると、晴夏が下から両手で押してきたベッドと患者も、同じように片手で引き上げた。
「…もしかして璃子さんって、ものすごい怪力?」
「いや、もしかしないね。間違いない」
日菜子と晴夏は、璃子の腕力の強さに、小声でやり取りする。
そんな時、突然地下駐車場の電気が消え、辺りは暗くなった。
「!?」
「敵襲ー!」
弥生の声が地下駐車場内にこだますると、銃声とギターの音が聞こえてくる。日菜子がすぐに表情を鋭くしていると、四葉が日菜子に声をかけた。
「患者さんたちは私と狭間さんが引き受けます!桜井さん!」
「わかった!晴夏!明宵!雪奈!一緒に来て!」
日菜子は四葉の言葉を受けると、仲間たちの名前を呼びながら、弥生たちのいる方角へと走っていくのだった。
その頃、弥生と咲来は、地下駐車場の出口であるスロープの近くで悪魔たちがやってくるのを目撃すると、それぞれ自分の武器であるライフルやギターで応戦していた。
「ひいい!敵が多すぎますですよぉ!!」
咲来が弱音を吐く通り、咲来がつむじ風で敵を3体ほど吹き飛ばしても、次の瞬間には10体以上が奥から湧いて出てくる。弥生は近くにいた悪魔の眉間を銃撃で貫くと、咲来に声をかけた。
「ここの道塞げない!?さっきの竜巻みたいなやつで!」
「無理ですぅう!!あれ魔力が暴走してたからできただけなんですよぉ!!無能でごめんなさああい!!」
「うーんそっかぁ」
弥生は咲来の言葉を聞きながら、やってくる悪魔に銃撃を浴びせて倒していく。しかし、数で勝る悪魔たちは、犠牲を気にせず弥生と咲来のもとに近づいてくると棍棒を振り上げた。
「シネェエエエヤァ!!」
(やば、間に合わない!)
弥生は自分に向けられたその攻撃を回避できないことを悟った。
「オッラァ!!」
その瞬間、弥生の背後から青白い電撃が走ってきたかと思うと、弥生を殴ろうとしていた悪魔が黒い煙に変わる。弥生が見ると、そこには悪魔を殴り抜けた晴夏の姿があった。
「あ、晴夏ちゃん!」
「へへ、オレだけじゃねぇぜ」
晴夏がそう言ってアゴを動かすと、その方角からは日菜子、明宵、雪奈が走ってきていた。
「雪奈!入口を塞いで!」
「了解しました!『フリーレン』!!」
走ってきた日菜子が雪奈に指示を出すと、雪奈は持っていたステッキで地面を突く。その瞬間、氷の蔦が地面を走っていったかと思うと、次の瞬間にはスロープの出入り口まで伸びていき、そこを通ろうとしていた悪魔ごと氷漬けにするようにして分厚い氷の壁が出来上がった。
「ナ、ナニィ!!?」
分厚い氷の壁の内側に残された悪魔たちは激しく動揺する。数こそ多いものの、その悪魔たちは完全に浮き足立っていた。
「よし、みんな、やっちゃえ!!」
日菜子が声を掛けると、それに呼応するようにその場にいたメンバーたちは動き出す。動揺して抵抗できない悪魔たちに、日菜子たちは自分たちそれぞれの武器で襲いかかるのだった。