追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
麗奈の右手に霊力が集まると、彼女の右手に武器が握られる。短い棒の両端に、剣のように光が伸びた、両刃のビームソードだった。
「悪くない霊力だ。この小娘の相手は任せたぞ」
「おい!」
幸紀は一方的に安藤と璃子に言い放つと、麗奈の後ろに控えているラウムのもとに駆け出す。
麗奈の剣が幸紀の首を切ろうとしたが、幸紀はしゃがんでそれを回避すると、ラウムの前に立ち上がりながら刀を振り上げる。
ラウムは間一髪それを回避すると、腰に差していた軍刀を抜いた。
「全く…お前だけは面倒だから相手にしたくなかったんだ…!楽に勝ちたかったのによ…!」
ラウムはそう愚痴をこぼすと、幸紀の顔面を目掛けて軍刀を突く。しかし幸紀は首の動きだけで何度も飛んでくるそれを回避すると、ラウムを睨んだ。
「『楽に勝ちたい』そのために抵抗できない弱者を囲んでリンチ、か」
「あぁ!勝てば良いからな!」
ラウムはやたらめったらに幸紀を目掛けて軍刀を振るう。しかし幸紀はその全てを悠々と回避しながら、ラウムを鼻で笑い飛ばした。
「ふん。貴様には誇りも何も無いようだな」
「勝てば誇りは付いてくる!」
「違うな。勝利とは、抵抗してくる相手を力でねじ伏せて得るもの。名誉は強者を相手にした勝利にのみに伴う。だからこそ強者であることが名誉であり誇りになるのだ」
「説教を垂れるな裏切り者!」
ラウムは怒りを込めて渾身の力で幸紀を突く。ラウムの軍刀は幸紀の体を貫いたが、血は一滴も出ず、幸紀は肩をすくめた。
「そうしたこともわからんとは、やはり悪魔軍も地に堕ちたものだ」
「!」
幸紀は呆れたようにそう言うと、手に持っていた刀を、ラウムの頭上から振り下ろす。刀はラウムの脳天から真っ直ぐに胴体を縦にふたつに切り分けると、次の瞬間にはラウムは黒い煙になった。
幸紀は自分の体を貫いている軍刀を雑に抜いてその場に捨てると、ラウムのいたあたりに、何かのメモリーカードが転がっているのが見えた。
(これは…もしや…)
「うはぁっ」
幸紀がメモリーカードを拾っていると、安藤の悲鳴が聞こえてくる。見ると、安藤は麗奈に蹴り飛ばされ、璃子は麗奈の連撃にハンマーによる防戦一方だった。
「くっ…!麗奈、やめて…!」
麗奈は璃子の言葉に一切返事をせず、機械的に連撃を加えていく。そして、璃子に一瞬の隙ができると、1本の剣を分離して2本の剣にし、そのうちの1本で璃子の顔面を突いた。
「…!」
回避できない。璃子がそう察して目を閉じたその瞬間、麗奈の左手の剣は横へ弾け飛ぶ。麗奈が見ると、幸紀がそこに立って刀を振るった後だった。
「こっちだ。ロボット」
幸紀が言うと、麗奈は右手に握っていた剣を幸紀に向けて振るう。しかし、幸紀はあっさりと麗奈のその手を掴み、背中を向けさせると、麗奈の左手の穴にメモリーカードを挿入した。
直後、麗奈の背筋が伸びたかと思うと、麗奈は糸が切れたように幸紀に倒れかかる。幸紀はすぐにメモリーカードを抜いた。
「…また助けられたわね…ありがとう」
璃子は幸紀に言う。幸紀は麗奈を璃子に渡すと、安藤の方に目をやる。安藤は腹をさすりながら起き上がった。
「さっすが強えなぁ、東雲…これでこの辺りの悪魔は全滅だな」
安藤は幸紀に対してボヤく。すぐに璃子は幸紀に疑問を口にした。
「それにしても、どうして麗奈の正体に気づいたの?それにあのメモリーカードは?」
璃子の質問に対し、幸紀は返答を考え始めた。
(悪魔軍だから、という答えが1番簡潔だが言うわけにはいかない。適当に誤魔化すか)
「
「なんでそれを最初に言わなかったんだ?」
「本物の児玉麗奈に会ったのも随分前だからな。このアンドロイドと顔が混ざって本人かどうか自信がなかった」
安藤の追及に、幸紀は適当に答える。璃子は麗奈を抱きかかえ直しながら、麗奈の目や口を見た。
「でもどう見ても機械じゃなくて人間だわ…呼吸もしてるし、汗もかいてて、脈拍もある」
「機械を人間化したのだろう。悪魔軍は悪魔を人間化してスパイを多く送り込んできた。おそらく魔力と霊力を使ってこの機械も人間化したのだと思う」
「…正直理解し切れないわ…でも、今はそれを信じるしかなさそうね」
幸紀の言葉に、璃子は麗奈を見ながら言う。幸紀はただ黙って頷いた。
そんな彼らのいる部屋の扉が開く。幸紀たちが見ると、日菜子がそこにいた。
「幸紀さん!璃子先生!安藤さん!」
「日菜子か。どうした」
「患者さんたちの搬送が終わりました!表も駐車場も異常なしです!今のうちに逃げるのがいいと思います!」
日菜子は明るく言う。幸紀は日菜子の報告を聞くと、安藤の方に目をやった。
「ということだが、どうする、指揮官」
「…そうだな。さっさと逃げるとしようか!」
安藤は明るく言うと、ライフルを背中に回し、手を叩くと、部屋の外に歩き出す。幸紀たちもそれに続いて部屋を出るのだった。