追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第7話(6)問題児2人

「この悪魔はお前に謝っていた。お前を殺そうとしていたのに、だ。何があったんだ。もし隠し事をするなら容赦はせんぞ」

 

 幸紀は水咲に刀を突きつけながら脅す。

 

 水咲は幸紀の刀を見ると、諦めたようにため息を吐き、ズボンのポケットから指輪を取り出した。

 

「…それは?」

 

「…防衛長官が、あの悪魔に贈ろうとしていた婚約指輪よ」

 

 水咲は愛想笑いを消し、媚びるような態度も無くして話す。水咲はその指輪を握り直した。

 

「私はジュエリーショップの人間よ。あの日、長官に頼まれて指輪の製作について相談を受けに行ったわ」

 

 水咲はそう言うと、ため息を吐き、横を向いた。

 

「深夜に、彼の家の居室で、2人きりだった。長官はサプライズがしたかったんですって。私と長官がそんな話をしている時に…あの女が…いや、変装した悪魔だったのかしら…とにかく彼女がやってきたの」

 

「そしてあの悪魔が、長官を殺した、と」

 

 水咲の話に、幸紀が先回りして尋ねる。水咲は頷いた。

 

「長官が私と浮気してると思ったんでしょうね…私が何もできないでいるうちに…長官は殺されて…すぐに人がやってきたから、私は悪魔に何もされなかった…けど、私は長官殺しで捕まった」

 

「でも、なんであなたが指輪を今も持ってるのかしら~?」

 

 水咲が語った言葉に江美が尋ねる。水咲はため息を吐いて肩をすくめた。

 

「こんないわくつきの指輪、普通に売れるわけないでしょう?だから持っていって闇ルートで金にするつもりだったわ。あの状況じゃあ指輪の存在を知ってる人間もいないから」

 

「つまりネコババってことですね~」

 

「好きに言いなさい。私にはどうせこれ以外にも窃盗の前科があるもの。今さらひとつ増えようと気にしないわ」

 

 水咲は江美に対して平然と言い放つ。しかし、すぐに手を開いて指輪を眺めると、声を発した。

 

「…でも、もう要らないわ、こんな指輪」

 

「え?」

 

「…こんな指輪、私ならいつでも手に入れられる…だから、この指輪が本当に必要だった女に…譲るわ」

 

 水咲はそう言うと、幸紀の近くへ歩き出し、イリーノスが倒れた辺りに指輪を置く。そして、水咲は手を合わせるのだった。

 

 

 そんな水咲を見下ろしていると、建物の下から車のエンジン音が聞こえてくる。幸紀が見ると、星霊隊のメンバーたちの乗ったバスが走ってきて建物の下で停車した。

 

「おーい!幸紀さん!」

 

 バスから姿を現した日菜子が、建物の屋上にいる幸紀に向けて声を張る。幸紀は日菜子に対して手を上げて答えると、江美と水咲の方に向いて声をかけた。

 

「江美、水咲。俺たちはこのまま清峰侯爵の屋敷に向かう。お前たちはどうする」

 

 幸紀が尋ねると、江美は一瞬真剣な表情を見せた後、すぐにいつもの朗らかな表情になって答えた。

 

「そ~ですね~。もう職場も無事じゃないでしょうし、せっかくだから『星霊隊』にお邪魔させてもらいましょうかしらねぇ~」

 

 江美がおっとりとした口調で言うと、水咲も幸紀に対して頷いた。

 

「私もご一緒させてもらうわ。『星霊隊』に加入する代わり、私の前科は侯爵の権力で消してもらう。できるわよね?」

 

「侯爵次第だ」

 

「なら直接会って交渉するわ。一緒に行かせてもらうわよ」

 

 水咲は一方的に言い切る。幸紀は何も言わずに肩をすくめた。

 

 そうこうしているうちに、屋上と建物を繋ぐ扉が開き、日菜子と四葉がやってくる。幸紀たち元からそこにいた3人は、日菜子の方へ振り向いた。

 

「幸紀さん!水咲さんも江美さんも、無事で良かった!」

 

 日菜子は明るい声で幸紀たちに言う。それを聞いた幸紀は、日菜子たちの方へと歩き始めた。

 

「日菜子、このふたりも星霊隊に加わるぞ」

 

「え!あ、はい!よろしくお願いします!」

 

 幸紀が歩きながらあっさり言うと、日菜子は慌てて江美と水咲に頭を下げる。しかし、すぐに四葉が声を上げた。

 

「待ってください、東雲さん!この間の新聞によれば、この女性!星海さんは、防衛長官を殺害した犯人ですよ!?それに、窃盗や詐欺の前科もたくさんあるって…!!」

 

「あぁ、知ってる」

 

「えぇっ!?」

 

 四葉が必死に訴えるのに対し、幸紀はやはりあっさりと言葉を返す。四葉と日菜子は動揺したが、四葉はすぐに言葉を続けた。

 

「だ、だったら、『星霊隊』に加わるのは、よくないんじゃないでしょうか!前科がある以上、メンバーのみんなにどんな被害が出るかわかりませんし…!」

 

「『星霊隊』の任務は悪魔を倒すことだ。それができる実力があればどんな人間だろうと俺は構わん」

 

「で、でも…!」

 

「必要な場合は俺が斬り捨てる。それ以外はお前たちで見張れ」

 

 四葉の意見を強引に押し切るように、幸紀は言う。四葉と日菜子が戸惑っていると、江美が陽気に話しかけた。

 

「大丈夫ですよぉ、お姉さんたち~。私も一緒に見張りますから~。安心してください、私も食い逃げの前科がありますんで」

 

「えぇっ!?何を安心すればいいんですか!?」

 

 江美の言葉に、四葉は思わず声を上げる。そんな四葉をよそに、水咲は幸紀の後ろを堂々と歩き始めた。

 

「あ、ちょっと!」

 

「別に逃げたりなんかしないわよ。それに、あんたらみたいな貧乏そうな女から金を巻き上げる趣味はないわ。私が狙うのは金持ちだけ。だから侯爵の屋敷に着くまでは大人しくしてやるわよ。感謝しなさい」

 

「最初から最後まで悪いことをしないのが普通です!感謝を強要しないでください!」

 

「あら、必要な時に頭を下げられるのがいい女の条件よ?それがわからないなんて、まだまだ三流ね、メガネちゃん」

 

「今は必要じゃないから下げません!!」

 

 水咲の言葉に、四葉はムキになって言い返していく。水咲はおかしくなって高笑いを上げるが、四葉の方は青筋を立てて小言を並べ始め、日菜子は幸紀の隣にやってきて愚痴をこぼした。

 

「…幸紀さん、私リーダーやめてもいいですか?」

 

「ダメだ」

 

「ですよね…」

 

「あら、リーダーちゃん、悩み事かしら。今ならこの私が特別料金で相談に乗ってあげてもいいわよ」

 

「日菜子さん~、私も乗りますよぉ。お礼はカツ丼一杯でお願いしますね~。あ、そうだ、聞いてくださいよ~。カツ丼で思い出した話なんですけどね?私今朝まで留置場に捕まってたんですけど、昨日の夜は警察の人の尋問を受けてまして~…」

 

「もう!!!私の悩み事はあなたたちだよぉお!!」

 

 好き勝手に話す水咲や江美の態度に、日菜子は思わず声をあげて頭を抱える。水咲と江美は高らかに笑い声をあげ、幸紀に続いてバスへと歩いていくのだった。

 

 

隊員紹介コーナー

隊員No.11

名前:星海(ほしうみ)水咲(みさき)

年齢:23

身長:165cm

体重:50kg

スリーサイズ:B89(F)/W57/H87

武器:鞭

好きなもの:金、権力

嫌いなもの:綺麗事

特技:トランプ

趣味:茶道

外見:濃紺のウェーブがかったショートヘア

能力:水に関する霊力を扱う

簡単な紹介

脅迫、窃盗、詐欺など、さまざまな悪事に手を染めてきた女性。

そのスタイルのよさや妖艶さ、持ち前の演技力で多くの男を虜にしてきており、自らの欲望に忠実に生きてきた。

皮肉屋で自己中心的な言動が目立つが、霊力は強い。

 

 

隊員No.12

名前:透破(すわ)江美(えみ)

年齢:23

身長:167cm

体重:53kg

スリーサイズ:B87(E)/W65/H90

武器:手裏剣など

好きなもの:休暇

嫌いなもの:仕事、上司、ノルマ

特技:ヨガ、カギ開け

趣味:ヨガ、旅行

外見:長い白髪に、黄色い眼鏡をかけている

能力:瞬間移動などの非常に素早い身のこなし

簡単な紹介

一見しておしゃべりな会社員だが、その正体は国の秘密諜報機関の忍者。

陽気な性格は表向きで、本当の性格はドライな仕事人。しかしその本性を見せる相手はごくわずか。

指名手配犯である水咲を見張るために留置場に入っていた。

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