追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第9話(3)巫女の覚悟

 同じ頃、華燐は村の住宅地にやってくると声を張り上げ始めた。

 

「みんなぁ!!悪魔なんていないよ!!村は悪魔に囲まれてない!!安全なんだよ!!」

 

 華燐が声を張り上げると、民家の窓が開き、住民が華燐を見始める。華燐は構わず同じようなことを叫ぶが、村人たちは遠巻きに華燐を眺めて声を潜めて話し始めた。

 

「あれ天道さんのとこの子じゃない?」

 

「悪魔はいないですって」

 

「頭がおかしくなっちゃったんだ」

 

「違うよ!!村の外から来た人も言ってる!本当にいないんだよ!」

 

 華燐が必死に声を張り上げるが、村人は華燐を嘲笑するように小さな声で話す。そんな華燐のもとに、日菜子と晴夏もようやく追いついた。

 

「華燐!」

 

「ふたりもなんとか言ってよ!」

 

 華燐は日菜子と晴夏に声を上げて頼む。華燐が必死になっていると、建物のひとつから中年の男性が現れた。

 

「華燐!」

 

「お父ちゃん!あのさ…」

 

 現れたのは華燐の父親だった。華燐は父親にも話そうとするが、華燐の父は問答無用で華燐の腕を掴んだ。

 

「やめるんだ華燐!帰るぞ!」

 

「待ってよお父ちゃん!悪魔なんていないんだよ!このままじゃ朋夜も宮司さんもみんな死んじゃうんだよ!!」

 

「何を言ってるんだ!宮司さまがいると言ってるならいるんだ!」

 

 華燐の父が声をあげていると、村人が次々に建物から出てくる。すぐに華燐の父は村人たちに頭を下げ始めた。

 

「すみませんみなさん!うちの娘がお騒がせして!疲れているだけんです!」

 

「違うよ!アタシは」

 

 華燐が訴えかけようとするのを無視して、村人たちは華燐たちを取り囲んで一方的に話し始めた。

 

「天道さん、やっぱり娘さんおかしいよ!」

 

「宮司さまが俺たちに嘘をつくわけがない!」

 

「お前たちが悪魔だ!」

 

 村人たちに取り囲まれながら、華燐たちは村人たちから罵声を浴びせられる。言われてばかりの晴夏は言葉を返し始めた。

 

「違げーよ!オレたちは村の外から来たんだよ!悪魔なんていなかった!!」

 

「よそ者の言うことなんか信じるな!」

 

「あいつらこそ俺たちを騙そうとしている悪魔だ!」

 

「とっ捕まえろ!」

 

「やんのかこの野郎!」

 

 晴夏の訴えも虚しく、村人たちは3人のもとに殺到しようとする。晴夏は両手に霊力を集中させ、武器であるトンファーを発現させようとしたが、すぐさま日菜子がそれを止めた。

 

「日菜子!なんで!?」

 

「ここで争ったら本当に悪魔だと思われちゃうよ…!」

 

「別にいいよ!こんな奴ら…!」

 

「ダメだよ!『星霊隊』は人を守るためのチームだよ。だから人は攻撃しちゃダメ。これが悪魔の作戦なら、誤解はいつか解けるはずだから、我慢しよう?」

 

「…!」

 

 晴夏が歯を食いしばったかと思うと、村人たちが一斉に晴夏や日菜子、華燐を取り囲み、3人の体をそれぞれロープで縛り上げる。身動きがとれなくなった3人は、村人に突き飛ばされるようにしてどこかへと連れて行かれるのだった。

 

「…ごめん、晴夏、日菜子さん…」

 

 ロープで縛られながら、華燐は日菜子と晴夏に謝る。それに対して、晴夏は俯き、日菜子は首を横に振ることしかできなかった。

 

 

 数分後、日菜子たち縛られた3人は、村にある唯一の交番の地下にある留置場にやってきた。

 

「…あれ、幸紀さんに、明宵?」

 

 自分たちが閉じ込められる部屋の前にやってきた3人は、自分たちより先に誰かが入っていることに気づく。それが幸紀と明宵であることは一目瞭然だった。

 

「入れ」

 

 警官の指示で、日菜子たち3人は縛られたまま鉄格子の中に入れられる。すぐに鉄格子が閉まり、鍵がかけられた。

 幸紀と明宵も後ろ手で手首を縛られており、身動きが取れなさそうな状況だった。

 

「幸紀さん、明宵も、なんで捕まってるんですか?」

 

 日菜子は幸紀と明宵に尋ねる。明宵が宙を眺めながら答えた。

 

「…幸紀さんの提案で、魔力を調査していました。この村のある地点から魔力が発生しています…その発生源の周りを調べていたら、不審に思われ閉じ込められました」

 

「魔力の発生源?それってどこなのさ?」

 

 明宵の言葉に、華燐が食いつく。それを答えたのは、幸紀だった。

 

「月暈神社だ」

 

「なんだって…!?」

 

 幸紀の言葉に、華燐は言葉を失う。想定外の答えに、晴夏が戸惑いながら尋ね始めた。

 

「おいおいおい?確認させてくれよ?月暈神社ってのは、悪魔と戦う時の拠点になってるところなんだよな?しかも昔から。だったら、一番悪魔と縁遠いところなんじゃないの?」

 

「そうだよ。魔力なんて出るわけがないよ」

 

「…我々もそう思い調査していたところ、捕まってしまったのです。ですが、魔力が発生していること、そしてその源が神社であることは絶対に確かです」

 

 晴夏や華燐の言葉に、明宵はハッキリと反論する。華燐は信じられないと言わんばかりに、何度も首を横に振った。

 

「宮司さんたちが…朋夜のご両親が…悪魔だっての?」

 

「それは本人たちに聞くとしよう」

 

 華燐の呟きに、幸紀が言う。直後、草履のような足音で、誰かが階段を降りてくるのが聞こえてきた。

 

 ものの数秒もかからず、その足音の正体が現れる。長い黒髪と赤い瞳の若い女性、月暈神社の巫女、朋夜が、紫の風呂敷を抱えて、鉄格子の前に歩いてきた。

 

「あぁっ、朋夜!」

 

 華燐はすぐに朋夜の姿に気づくと、声を上げる。朋夜は頭を下げると、その場にしゃがみ込み、鉄格子越しに話し始めた。

 

「様子が気になって見に参りました。しかし…かようなことになっていようとは…」

 

 朋夜は残念そうに呟く。華燐はすぐに朋夜に話し始めた。

 

「ねぇ朋夜、アタシたちのこと、悪魔だと思う?」

 

「何を言うの華燐?あなたが悪魔のはずはないでしょう?」

 

「じゃあ、ここから出してよ!」

 

「それは…村の掟なれば…できませぬ」

 

「そんな!」

 

 華燐の言葉に対し、朋夜は申し訳なさそうに目を逸らして言う。その間に、幸紀は明宵の耳に指示を出した。

 

「明宵、全てを話せ」

 

「…了解しました」

 

 明宵はそう言うと、朋夜に対して話し始めた。

 

「…朋夜、あなたの神社から…魔力が出ています…知っていましたか…?」

 

「えっ…?それはまことなのですか、明宵?」

 

 朋夜は信じられないと言いたそうに尋ね返す。明宵は静かに頷いた。

 

「えぇ…本当です…そして…その魔力は…村の人々に、存在もしない悪魔たちの幻覚を見せている可能性が高いです…」

 

「…!やはり…」

 

「やはり?やはりってなにさ、朋夜!?」

 

 朋夜の反応に、華燐が思わず食いつく。朋夜は言葉に詰まったように俯いた。

 

「いや…それは…」

 

「お前にも見えていないのだろう、朋夜。村を取り囲む悪魔の大群など」

 

 言葉を渋る朋夜に対し、幸紀が言葉を投げかける。朋夜は眉を大きく上げると、観念したように下を向いた。

 

「…えぇ…そうです…」

 

「えぇっ!?じゃあなんで言わなかったの!?」

 

 朋夜の返答に、華燐は驚きながら尋ねる。朋夜は風呂敷を握る手の力を強めながら話し始めた。

 

「…自信がなかったのです…私以外の人々は、皆、『いる』と。しかも、父上や母上まで、はっきりと『いる』と言うのです…ましてや父上は直接話までしたと…我ら神社の者どもの命と引き換えに、村人の命を助けてやると…私自身には何も見えなくても、ここまで言われてしまうと、本当に『いる』ような気がして…」

 

「…少数派になるのは勇気が必要だからな」

 

 朋夜の語る言葉に、幸紀は小さく呟く。朋夜は改めて顔をあげ、幸紀たちと正面から向き合った。

 

「ですが、今、決意を固めました。魔を祓い人を守ることこそ、月暈の巫女の使命。人々を苦しめる元凶が、神社にあるというのなら、私も戦います」

 

「でも朋夜ちゃん…もしかしたら、ご両親と戦うかもしれないよ?辛くない?」

 

 決意を語る朋夜に対し、日菜子が尋ねる。朋夜は一瞬下を向いてから頷いた。

 

「それも、巫女の定めならば」

 

「朋夜ひとりにそんな思いさせないよ!アタシだっているんだから!」

 

 朋夜がひとことそう言うと、華燐も賛同する。すぐに明宵も朋夜に笑いかけた。

 

「…私もです。幼馴染ですもの」

 

「なら動くとするか」

 

 幸紀は全員の意見が一致したのを確認すると、自分の手を後ろで縛っていたロープを引きちぎる。朋夜はそんな光景に驚いたが、幸紀は気にせず他のメンバーたちのロープを、発現させた刀で斬り捨てた。

 

 幸紀は朋夜に下がるように言うと、鉄格子を刀で両断する。幸紀に率いられた女性たちは、堂々と鉄格子を抜け出すと、留置場から交番にやってきた。

 駐在していた警官は驚いたが、そのわずかな隙に幸紀が拳を叩き込み、一撃で気絶させる。朋夜は思わず目を伏せたが、気にせず幸紀は指示を出した。

 

「神社まで案内してもらおう」

 

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