追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第9話(4)聖域の影で

数分後 月暈神社

 朋夜の案内により、幸紀たちは村人に見つかることなく神社の境内までやってくる。鳥居のそばに立ちながら、幸紀たちは周囲を見回していた。

 

「明宵、どう?」

 

「やはり間違いありません…神社のどこかからか魔力が出ています」

 

 日菜子に尋ねられると、明宵は武器である魔導書を開いて言う。しかし、明宵のはっきりしない回答に、晴夏が尋ねた。

 

「どこかって、どこだ?」

 

「…わかりません…拡散してしまっていて、辿るのは困難です…」

 

 明宵の言葉を聞くと、朋夜が思い出したように話し始めた。

 

「そういえば…本殿の地下に修行部屋があったと聞いたことがあります」

 

「じゃあ、きっとそれだよ!私たちも入れる?」

 

「いえ、鍵が必要のはずです。しばしお待ちください。今、父に尋ねて参ります」

 

 朋夜はそう言うと、本殿の横にある小屋へと走り出す。その間に幸紀たちは本殿の前で周囲を見回していた。

 ものの数分で朋夜が小屋から戻ってくる。しかし、朋夜の手には何も握られていなかった。

 

「どうだった?」

 

「それが…父も母もおりませんでした。修行部屋の鍵もなく…」

 

 華燐の問いに、朋夜は残念そうに答える。それを聞くやいなや、幸紀が大股で神社の本殿へと歩き始めると、朋夜が慌てて幸紀の前に立った。

 

「お待ちください、幸紀さま!いくら悪魔がいる可能性が高いといえど、本殿は神聖な場所です。どうか、荒らすようなことはないように願います!」

 

「…いいだろう」

 

 幸紀はそう言うと、本殿に向けて小さくお辞儀をしてから、賽銭箱の横を通り抜け、本殿の入り口に続くたった数段の階段を駆け上がると、そこで靴を脱ぎ、本殿の入り口を開いた。

 

 他のメンバーたちも恐る恐る幸紀に続き、靴を脱いで本殿の中に入る。中は薄暗く、4畳程度の広さであり、その奥に祭壇のようなものがある。

 そして、その祭壇の手前には、地下に続く階段が伸びていた。

 

「…この先です…!」

 

 明宵が小さく声を上げる。明宵の魔導書の上に浮かんでいた矢印も、はっきりと階段の先を指していた。

 

「うぅ、なんかゾワゾワするよ…」

 

「魔力のせいだろうな」

 

 華燐が自分の腕をさするのを見て、幸紀は言う。そして幸紀を先頭に一行は階段の下へと進んでいくのだった。

 階段を降りていくたびに、空気が澱んでくる。同時に、周囲の白色のモヤが濃くなっていくのがわかった。

 

(…やはりか)

 

 幸紀や他のメンバーたちもこの先に真相があることを察し、息を呑む。階段を下り終えると、逆に白い靄は消え、暗く細い通路の先に、篝火のようなものが見えた。

 人の話し声が聞こえる。

 幸紀は腰を落とし、自分の武器である刀を発現させると、いつでも抜けるようにしながらゆっくり進み始めた。

 

「…では…ミヤコ…許せ…」

 

 男の声で何かを言っているのが聞こえる。

 瞬間、篝火のそばにふたつの人影があることに気がついた幸紀は、一気にそのそばまで走る。

 幸紀の足音に気がついたそのふたつの人影は、作業を止める。幸紀は、そのふたつの人影と、篝火のまわりに置かれた不気味なオブジェの正体に気がついた。

 

「やはりお前たちだったか、月暈道長、そしてミヤコ」

 

「東雲幸紀…!」

 

「いや、この状況を見るに、主犯はお前ひとりだな、道長」

 

 幸紀は目の前の状況をみて推理を述べる。正座したミヤコの横に、刀を掲げた道長が立っていた。

 遅れて幸紀たち以外のメンバーが揃う。朋夜は、目の前の光景が理解しきれていなかった。

 

「父上…!?何をなさっているのです…!?」

 

「朋夜よ、しかたがないのだ。悪魔からこの村を守るためには、お前とお前の母を斬らねばならぬのだ。許せ」

 

 道長は冷静にそう言うと、ミヤコの首筋に刀を振り下ろそうとする。しかし、その瞬間、幸紀の刀が道長の刀を受け止めていた。

 

「『悪魔からこの村を守る』?なんの冗談だ?」

 

「よそ者が…!何を言うか!」

 

「ここに置かれている祭器は悪魔軍のものだ。この祭器から魔力が発生して、霊力を持たない村人に幻覚を見せている。村を守るためならまずはこれを破壊しているはずだ。違うか?」

 

「黙れぃ!」

 

 道長は幸紀に一喝すると、すぐに刀を幸紀の刀から離し、大人しくしていたミヤコを盾にして、ミヤコの首元に刀を突きつけた。

 

「…父上…!?」

 

 朋夜は理解の及ばない状況に、思わず声を上げる。道長は得意げな顔をしながら笑い始めた。

 

「ふははは!!今更気づいてももう遅い!すでにここの宮司は死んでいる!あとはこの巫女を殺せば忌まわしき月暈一族も終わりだ!!死ね、クソババア!!」

 

 道長はそう言うと、ミヤコの体を突き刺そうと、刀を振り上げた。

 

「スォラァッ!!」

 

 瞬間、華燐が飛び回し蹴りの要領で足から霊力の衝撃波を飛ばす。その衝撃波は、道長の持っている刀を吹き飛ばした。

 

「なっ!?」

 

 道長の動きが止まったその一瞬、幸紀は道長に一気に近寄ると、ミヤコを守りながら道長の体を貫いた。

 

「死ね」

 

 幸紀は短く言うと、道長の体から刀を抜く。道長は、血を流しながらその場に倒れるのだった。

 幸紀に助けられたミヤコは、道長の死体を見下ろしていた。

 

「そんな…あなたが…悪魔だったなんて…!」

 

 そう声を震わせるミヤコに、幸紀は声をかけた。

 

「元から悪魔だったわけではないだろう。おそらく、本当の道長はどこかで殺され、悪魔にその体を奪われた…」

 

「その通り!!」

 

「!」

 

 幸紀の言葉に、何者かが強烈に賛同する。全員がその声の方に振り向くと、幸紀に倒されたはずの道長が、宙に浮いて高笑いを上げていた。

 

「いやぁまさかこんなことになってしまうとは、想定外でしたよ。この特級悪魔であるトールトをここまで追い込んだこと、褒めてあげますよ。ふははは!!」

 

 トールトと名乗るその悪魔は道長の体のまま話し続ける。幸紀が刀を構えたが、瞬間、トールトは空中でステップを踏むかのように大きく移動した。

 

「おっと!このトールト、斬り合いとか殴り合いなんて泥臭いものは嫌いなのです。やっぱり悪魔はもっとネチネチしてないとね。それでは!」

 

「待て!!」

 

 トールトは言いたいだけ言うと、幸紀たちの頭上をホバー移動のようにして去っていく。すぐに朋夜がトールトの後を追って走り始めると、華燐もそれに続き、晴夏も続こうとしたが、その晴夏の腕を、幸紀が掴んだ。

 

「なにすんだよ幸紀さん!?」

 

「奴は俺が追う。お前たちはここの祭器を壊せ」

 

「えぇ!?」

 

 不満を隠そうとしない晴夏に対し、日菜子が思いついた。

 

「あ!もしかして、これを壊すと、あいつが弱くなるとか、ですか!?」

 

「そうだ。頼んだぞ」

 

「はい!やろう、晴夏!明宵!」

 

 幸紀に言われると、日菜子、晴夏、明宵の3人はそれぞれ自分の武器を発現させ、その場にある祭器への攻撃を始めた。

 

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