追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
同じ頃
地上に出たトールトは、道長の変装を一時的に止め、本来の自分の姿である、異様に白い肌の怪物の姿に戻る。空中のホバー移動はそのままに、鳥居をくぐり、住宅地の近くへやってくると、再び道長の姿に戻った。
「うーん、よっこいせ」
トールトは面倒くさそうに声を出しながら、ホバー移動をやめ、地面に足をつける。そうして村人たちに対して叫び始めた。
「みなのもの!!悪魔が出たぞ!!」
道長に化けたトールトの言葉に、村人たちは住宅の中で動揺する。動揺を感じ取ったトールトは、追い討ちをかけるように声を張り上げた。
「恐れることはない!!皆の力を合わせるのだ!!勇気を振り絞り、悪魔に立ち向かえ!!ひとりではできぬことも、協力して成し遂げるのだ!!さあ!!勇気あるものは我と共に戦え!!」
トールトの演説を聞き、住宅の中で待機していた大勢の村人たちが、手近な武器を持って家の中から現れる。
「宮司様!」
「俺らも一緒に戦いますぜ!!」
「おお良くぞ来た!共に戦おうぞ!!」
かなりの規模の群衆となった人々が、トールトを中心として声を上げる。朋夜と華燐が追いついた頃には、数えきれないほどの人だかりができていた。
「こ、これは…?」
朋夜が思わず呟くと、すぐに朋夜たちの存在に気がついた村人たちが、そちらへ振り向いた。
「あれが悪魔だ!皆!立ち向かえ!!」
「し、しかし宮司様!あれは宮司様の娘さんじゃ…!」
「しかたがない…!悪魔に取り憑かれてしまった以上は…村のため…!どうなってもかまわん、やれ!!」
トールトは村人たちに指示を出す。村人たちは、武器を構えて朋夜と華燐のもとへと突撃し始めた。
「やっば、さすがにこれは…どうする朋夜…!」
「ええい卑劣な…!こうなっては…みなさまも斬るしかないというの…?」
「もうやってやる…!」
朋夜と華燐は覚悟を決めると、それぞれ霊力を集中させ、自分の武器を発現させる。朋夜の腰には白い鞘の日本刀が、華燐の右手には、赤色のヌンチャクが現れた。
かまわず村人たちは武器を構えながら朋夜と華燐へ走り、武器を振りかざす。同時に、ふたりは村人たちに危害を加える覚悟をした。
「許して…!」
ふたりがそう思ったその瞬間、ふたりと村人の間に、黒い影が降ってくる。それと同時に、影が降り立った部分の地面が割れ、村人たちのいる方から朋夜と華燐のいるところにはいけないようになった。
「な、なんだぁ…!?」
村人たちの勢いは弱まり、むしろ後ずさっていく。朋夜と華燐は、その黒い影に声をかけた。
「あなたは…?」
黒い影はゆっくり振り向く。朋夜と華燐が見たのは、漆黒の肌に白い髪、そして顔のところどころに輝く水色のラインが入った、人間とは思えない姿の存在だった。
「…悪魔だ…!本物の悪魔だ!!」
村人たちはその悪魔の姿に、思わず恐れ慄き、逃げていく。トールトは、自分の背後に逃げていく村人たちを見て、必死に叫んだ。
「に、逃げるな!!戦え!戦うのだ!!」
「助けてくれー宮司様!!」
トールトの訴えも虚しく、村人たちは我先にと逃げていく。トールトはそれでも戦わせようと声をあげたが、瞬間、トールトは自分の変装の一部が解けていることに気がついた。
(…魔力が弱まっている…!まさか、あの小娘どもに祭器が壊せたというのか…!)
トールトがそう思っていたのも束の間、みるみるうちにトールトの変装が解けていき、人間の姿から、白い肌の怪物の姿に変化した。
あたりを覆っていた白い靄も消える。
逃げようとしていた村人たちが足を止め、ふとトールトの方に振り向くと、先ほど村人が恐れていた悪魔はおらず、宮司がいたはずの場所には、白い肌の怪物がいた。
「…!悪魔だ!!宮司様に化けていたのが本物の悪魔だ!!」
「なんだって!?俺たちは騙されていたのか!」
「その通り!」
トールトは開き直ると、指を鳴らし、村人全体を囲うような、紫色の電流を発生させる。そうして得意げな表情で朋夜の方へ振り向いた。
「おっと、そこを動かないでくださいよ。大切な村の仲間を傷つけたくないでしょう?」
「くっ…卑劣な…!」
「お褒めに預かり光栄です。君のお父様もそういいながら死にましたよ」
「…!」
トールトは朋夜を挑発する。朋夜は地面の亀裂を飛び越えようとしたが、トールトは得意げに人質にした村人を指さした。
「おぉっと、ダメだぞ朋夜?父はお前の感情的なところが不安でしかたがないのだ…ふはははは!!」
「テメェ…朋夜の父ちゃんをバカにするな!!」
朋夜に代わって華燐が怒りを剥き出しにする。しかしトールトはニヤニヤ笑いながら首を横に振った。
「バカにされるような奴が悪いのですよ」
「ならお前が1番悪いな」
「!?」
トールトの耳元に突然聞こえた声。トールトが振り向いた瞬間、トールトの体を斜めに切り裂くように剣閃が走った。
「貴様…コーキ…!!」
トールトがそう言って睨みつける先には、幸紀が刀を握りしめて立っていた。
「おのれぇっ…!!」
トールトはすぐさま人質にしている村人たちを殺そうと、指を掲げる。
しかし、その瞬間、トールトの足元を鈍器で殴りつけられたような痛みが走る。
「ぬぅっ!?」
トールトが見ると、華燐が持っていたヌンチャクを振るってトールトの足を殴り抜いていた。そこから霊力が伝わり、トールトは思わず姿勢を崩す。
「くっ…!だが…!」
トールトは指を鳴らそうとする。しかし、そんなトールトの手首を、朋夜の刀が斬り裂き、黒い煙に変えた。
「!」
完全にトールトの動きが止まったそのとき、幸紀の刀がトールトの体を貫いた。
「ぐぁっ…!」
トールトは自分の体に突き刺さった幸紀の刀を見る。幸紀はトールトに体を密着させるようにして、さらに刀を押し込んだ。
「こ、コーキ…貴様…!貴様さえいなければ…!勝っていたというのに…!」
「ふん。偉そうに。貴様がどんな小細工を弄そうと、圧倒的な力の前では無駄だ。それに、お前は俺がいなくても重大なミスを犯している。だから負けたんだ」
「なん…だと…?なんだと言うんだ…この私にミスなど…!」
「他者をバカにしすぎたんだ」
幸紀は短くそう言うと、刀を横に振り抜き、トールトの体を切り裂くと、トールトの体は黒い煙へと変化するのだった。
トールトがいなくなると、朋夜と華燐が幸紀に歩み寄る。幸紀は刀を鞘に納めると、朋夜と華燐の方に向き直った。
「幸紀さん!ありがとうございました!これで村のみんなもまた平和に暮らせます!」
「心よりお礼を申し上げます、幸紀さま…」
華燐と朋夜が礼を言う。しかし、朋夜の表情は浮かないものだった。すぐに華燐は朋夜の気持ちを察すると、幸紀に弁明し始めた。
「幸紀さん、その…朋夜は、お父さんを失ったのがショックで…」
「俺は気にせん。だからお前たちも気にするな」
「幸紀さーん!」
幸紀が話していると、別行動をしていた日菜子、晴夏、明宵、そして朋夜の母であるミヤコが、歩いてやってきた。