追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第10話(1)もう一度会いたい人

前回までのあらすじ

 一部の仲間と別れ、清峰侯爵の屋敷を目指す幸紀たち。その途中、悪魔との戦いでの重要拠点、月暈村にやってくる。ここでは悪魔が村の重要人物に化けていたが、幸紀たちはそれを打ち倒し、月暈神社の巫女である朋夜と、強力な霊力を持つ華燐を味方に加える。

 仲間を増やした幸紀たちは、変わらず清峰侯爵の屋敷を目指すのだった。

 

チーム分け

A:幸紀、日菜子、晴夏、明宵、朋夜、華燐→屋敷を目指す

 

B:四葉、璃子、すみれ、望、心愛、紫黄里→生徒たちを帰宅させる

 

C:結依、弥生、雪奈、咲来、麗奈、水咲、江美→B班と別ルートで生徒たちを帰宅させる

 

 

6月20日 11:30 真川(さねがわ)県 色川市堂塚区

 

「え、妹さんとはぐれちゃったんすか、日菜子さん?」

 

 幸紀が運転するバスの中、新たに星霊隊に加わった華燐が、日菜子と雑談を交わしている途中に思わず尋ね返す。日菜子は俯きながら頷いた。

 

「そうなの…旅をしながら探しているんだけど、どこにもいなくて…」

 

「それは…うーん…見つかるといいっすね、妹さん」

 

 華燐は言葉を選びながら答える。日菜子は力なく何度も頷くと、すぐに何かを思いついたようにポケットに手を突っ込んだ。

 

「そうだ、もしかしたら、華燐や朋夜なら妹に会ってるかも!」

 

「えぇ?だって、はぐれたのは飛岡の千年町っすよね?こっからだいぶ距離あるから会えるとは思えないんすけど…」

 

 戸惑う華燐をよそに、日菜子はポケットからスマホを操作し、妹とのツーショット写真を表示して華燐に見せる。

 

「こっちの!銀髪の子!見覚えない!?」

 

 日菜子が緊迫した表情で華燐に尋ねると、華燐はスマホを受け取り、まじまじとそれを見つめる。そしてわずかに眉を上げると、後ろの席に座っている朋夜に声をかけた。

 

「!ねぇ、朋夜、この子ってさ」

 

「?…!あの方では…!」

 

「知っているの!?」

 

 朋夜の反応を見て、日菜子は思わず声を大きくする。すぐに朋夜は頷いた。

 

「えぇ。昨日の朝、お会いしました。村の外からいらしたようで、侯爵のお屋敷の場所を聞いてすぐに村をお発ちに」

 

「絶対にこの子だった!?」

 

「はい。お守りとして武器を渡しましたから、顔はよく覚えております」

 

 朋夜が断言すると、日菜子は感極まった表情でスマホを抱きしめた。

 

「あぁ…!!よかった…!無事なんだ…!!菜々子…!!朋夜、華燐、教えてくれてありがとう!!」

 

「あまり喜んでもいられないぞ」

 

 後部座席の日菜子に対し、幸紀が冷静に声をかける。空気感を無視した幸紀の言動に、晴夏が不満を口にした。

 

「幸紀さん、別に喜ぶくらい良くないですか?」

 

「違う。この辺りにまた悪魔軍の拠点がある。屋敷を目指したのなら、ここを通った可能性は高いが、女ひとりでここを抜けられたとは思えん」

 

 幸紀は日菜子たちの方を向かずに言い放つ。日菜子の顔から表情が消えていると、幸紀はバスを止めた。

 

「敵の拠点は、おそらくこの先の森林公園を抜けた先の研究所。潰しにいくぞ」

 

 幸紀はそう言うと、運転席から立ち上がり、バスから降りていく。日菜子もすぐに立ち上がったが、そんな日菜子に明宵が声をかけた。

 

「…日菜子さん…妹さんはきっと無事です…だから、どうか希望を持ってください…」

 

「…ありがとう!大丈夫!菜々子は頭がいいし、強い子だもん!だから絶対に大丈夫!菜々子もここに来たなら、絶対に会える!」

 

「その意気だぜ、日菜子!悪魔をぶっ飛ばしてこの街も平和にして、もう一度菜々子ちゃんに会おうぜ!」

 

「うん!みんな、行こう!」

 

 晴夏からも励まされた日菜子は、明るい表情で言うと他のメンバーたちの返事を聞きながら、バスを降りる。そんな日菜子に、他のメンバーたちも続いていくのだった。

 

 

 

同じ頃 堂塚森林公園

 広大な森林公園の中、うっそうとした木々の下、桜井(さくらい)菜々(ななこ)は両手を縛られた状態で悪魔に連れて行かれようとしていた。

 

「ねえ痛いんですケド!そんなに乱暴に引っ張らないでよ!」

 

 菜々子は自分の手を鎖で引っ張る悪魔に声を上げる。しかし悪魔は気にせずその鎖を引っ張った。

 

「ダマレ!サワグトコロスゾ!!」

 

 悪魔はそう言うと、菜々子の頬を平手で打つ。菜々子は悲鳴をあげると、悪魔を睨み返した。

 

「痛った!ねえ顔はぶたないでよ!私の美貌に傷が付いたら人類の損失だよ!?」

 

「サワグナ!!」

 

 悪魔はそう言うと菜々子の頭を手のひらで握る。銀髪の菜々子の頭が、ミシミシと音を立て始めた。

 

「ぁああ…!!わかった、言う通りにするからもうやめてよ!」

 

「フン!」

 

 悪魔は菜々子の悲鳴を聞くと、菜々子の両手を縛っている鎖を引いていく。菜々子はそれに引かれながら悪魔の後ろ姿を注視していた。

 

(この悪魔は赤色…言葉は片言で頭は悪いけど力は強い…そんなやつが私を殺さないのはどうしてだろう…?私をどこに連れていくつもりなのかな…?)

 

 菜々子は悪魔に引っ張られながらさまざまな考えを巡らせる。菜々子はそのまま森の中を進んでいくのだった。

 

 そんな最中、どこかからか声が聞こえてくる。ずっと遠くから悲鳴のような声が。悪魔も足を止め、菜々子の方を向き、声を荒げた。

 

「オイ!ヘンナコエダスナ!!」

 

「はぁ?私じゃないんですケド」

 

「トボケルナ!」

 

 悪魔は菜々子を殴ろうと、拳を振り上げる。瞬間、声はどんどんと近づいてきていた。

 

「ぅうわぁぁあああ!!」

 

 菜々子は声が聞こえてきた方角に気がついた。

 

(上だ!)

 

 菜々子は一瞬顔をあげると、空から降ってくるその悲鳴の正体を回避する。同時に、空から降ってきた「それ」は、菜々子を引き回していた悪魔の頭上に直撃した。

 

「ギャァッ!!」

 

「わぁあっ!!?」

 

 「それ」は悪魔にぶつかると、地面に倒れ込む。想定外の事態が起きた悪魔も、その場に倒れ込むなか、菜々子だけはひとり冷静に状況を見ていた。

 

(…え?あれ、女の子じゃん?空から女の子ってわけ?)

 

 菜々子がそんなことを考えていると、空から降ってきた「それ」もとい、高校の制服姿で茶色のポニーテールの女性は、ぶつけた部分である腰を押さえながらゆっくりと立ち上がった。

 

「アイタタ…すみません!なんかぶつかっちゃったみたいなんですけど、怪我とかは…」

 

 制服姿の女性は、倒れている悪魔に親切に声をかける。だが、悪魔はすぐに顔を上げると、棍棒を手に持って立ち上がった。

 

「シネェエエエエ!!!」

 

「えっ!?ま、待って!!」

 

 その女性の悲鳴にも似た命乞いを無視して、悪魔は女性に殴りかかろうとする。悪魔の背後にいた菜々子は、この状況を見過ごせなかった。

 

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