追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第10話(5)姉

その頃 DTS研究所 裏口付近

 

「せいやぁあっ!!うおらぁっ!!」

 

 裂帛の気合いと共に、日菜子は悪魔に向けて拳を振い、蹴りを繰り出す。彼女の渾身の一撃で、その場にいた3体の悪魔も、抵抗する間もなく黒い煙へと変わっていた。

 

「急がなきゃ…!菜々子…!!」

 

「日菜子ー!!」

 

 悪魔を倒し、呼吸を整える日菜子の背中に、晴夏の声が聞こえてくる。日菜子が振り向くと、晴夏だけでなく、朋夜、華燐、明宵、そして千鶴もそこにいた。

 

「みんな…!」

 

「…幸紀さんが正面で戦ってくれています…その間に急ぎましょう…」

 

 驚く日菜子に、明宵が簡潔に状況を説明する。日菜子はそれを聞くと頷き、走り出す。それに合わせるようにして、他のメンバーたちも走り始めた。

 集団の最後尾を走る千鶴は、隣を走る晴夏に小声で尋ねた。

 

「ねぇ、あの金髪の人、なんで急いでるの?私を助けてくれた銀髪の人とどういう関係なの?」

 

「銀髪の子は、あの金髪の人、日菜子の妹さんなんだよ。日菜子は元々、はぐれちゃった妹さんを探すために旅をしてたんだ。それがやっと見つかったけど、今にも殺されそうになってる。だから急いでるんだよ」

 

「大切な人ってことか…私たちも、今頃、元の世界の人たちに心配されてるのかな…」

 

 晴夏の返事を聞き、千鶴は思わず感傷的になる。晴夏も一瞬俯いたが、すぐに顔を上げた。

 

「とにかく、今は菜々子ちゃんを助け出すことだけ考えよう。元の世界には…まぁ頑張りゃ戻れるだろ」

 

「相変わらずテキトーだなぁ…」

 

 晴夏の言葉に、千鶴はぼやく。そうしているうちに、メンバーたちは研究所の裏口の扉の前までやってきた。

 日菜子が早速扉を開けようとドアノブを回すが、開かない。日菜子は痺れを切らし、足に霊力を集中させると、力任せに扉を蹴り飛ばした。

 

「よし!」

 

 日菜子はそう叫ぶと、そのまま建物の中に突入していく。薄暗い建物の中、日菜子は明宵に声をかけた。

 

「明宵!菜々子の霊力、辿れる!?」

 

「…お任せください」

 

 明宵はそう言うと、武器である本を開く。灰色の矢印が本の上に浮かび上がると、矢印は一行のいる廊下の奥を指し示した。

 

「…この廊下の先です…!」

 

「ありがとう!!」

 

 日菜子は礼を言うと、勢いよく廊下の奥を目掛けて走り出す。廊下はせいぜい50メートルほどで、日菜子はすぐに菜々子が閉じ込められているであろう部屋のドアの前までやってきた。

 

「菜々子!!」

 

 日菜子は妹の名前を叫ぶ。そんな日菜子の頭上から、3体ほどの悪魔が降ってくると、日菜子の道を塞いだ。

 

「邪魔するなぁああ!!」

 

 しかし日菜子は拳を振りかぶると、助走のついた一撃で自分の身長をはるかに上回る悪魔を殴り飛ばし、道を開けると先へ進んでいく。

 残りの2体の悪魔も日菜子を邪魔しようとしたが、すぐに追いついてきた朋夜と華燐によって一瞬もかからずに黒い煙に変えられた。

 

 日菜子はそんな様子を背中で感じながら、ついに扉の目の前までやってくる。スライド式の自動ドアの、ちょうど目線の高さにガラスがあり、日菜子はそこから部屋の中を覗く。

 

「菜々子っ!!」

 

 赤い照明で照らされた部屋の中、確かに日菜子の妹である菜々子が、その部屋のベッドの上に拘束されていた。

 日菜子はドアのガラス部分を叩いて菜々子に呼びかけるが、菜々子は返事をしない。日菜子はすぐさま扉を開けようとしたが、扉は鍵がかかっていて開きそうになかった。

 

「日菜子さん!たぶんどこかに鍵が…!」

 

「うりゃあああっっ!!!」

 

 駆けつけた華燐の言葉も聞かず、日菜子は右手に霊力を集めると、力任せに正面のドアを殴りつける。分厚い金属製の扉は、レールから外れるようにして吹き飛び、菜々子への道を開けた。

 

「菜々子ぉっ!!」

 

 日菜子はベッドに縛り付けられている菜々子のもとに駆け寄る。そして、菜々子を縛っていたベルトのような拘束器具を、急いで取り外しながら、目を閉じて動かない菜々子に声をかけた。

 

「菜々子…!お姉ちゃんだよ…!遅くなってごめんね、迎えにきたよ…!」

 

 日菜子は涙目になりながら菜々子の拘束具を外す。しかし、菜々子は動かず、返事もしない。日菜子の脳裏には最悪の想像がよぎっていた。

 

「菜々子…?嘘でしょ…?菜々子…!菜々子っ!!返事をしてっ!!」

 

 日菜子は血相を変えて菜々子の肩を揺する。しかし菜々子は返事をしない。それでも日菜子は菜々子を揺すり、菜々子の名を呼んだ。

 

「菜々子!!起きて!!起きてよ…!!お願いだから…!!菜々子…!!」

 

「げふっ…!」

 

 日菜子の言葉に応えるかのように、突然菜々子が咳をする。日菜子は菜々子が生きていたことに、顔色を明るくした。

 

「菜々子!!」

 

 菜々子がゆっくりと目を開ける。そして、日菜子の存在に気がつくと、菜々子は小さく微笑んだ。

 

「…ふふふ…やっぱり来てくれたんだ…お姉ちゃん」

 

「来るに…決まってるでしょ…!!」

 

 日菜子はそう答えると、感極まって菜々子を抱きしめる。菜々子も日菜子を抱きしめると、小さく呟いた。

 

「…怖かったよぉ…もうダメだと思った…」

 

「ごめんね…辛い思いさせて…!でも、もう大丈夫だよ、菜々子!一緒に行こう!」

 

「…うん!」

 

「感動の再会中に申し訳ないが、うちの実験動物を勝手に持ち出さないでもらえるか」

 

 日菜子と菜々子の会話に割り込むように、突然背後から声が聞こえてくる。日菜子が振り向き、他のメンバーたちも振り向いたその先には、緑色の肌の悪魔が、廊下の奥からゆっくりと1人で歩いてきていた。

 

「…マズラ…!」

 

 

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