追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第11話(4)覚悟を決めろ

同じ頃 食堂

 ここでは一般人のほか、戦闘で負傷したメイドたちも集められていた。

 珠緒は負傷した一般人の応急手当てを終えると、誰もいない部屋の隅に寄りかかり、あたりの様子を見ていた。

 

「もし、珠緒さま?」

 

 そんな珠緒の横から、甲高い女性の声が聞こえてくる。珠緒が見ると、金髪を縦ロールにし、標準的な白と黒のメイド服を着た碧眼の女性が、両腕にお菓子の入ったカゴを持って立っていた。

 

「キララさん」

 

 珠緒は、自分を呼んだそのメイド、西谷(にしたに)キララの名前を呼ぶ。キララは自分の長い後ろ髪を払うと、笑顔で話し始めた。

 

「そんなシケたツラはしちゃダメですわ!可愛いお顔が台無しでしてよ!」

 

「す、すみません」

 

「わかっていただけたのなら、一緒にお菓子を配ってくださいまし!辛い時こそ糖分で人を笑顔にいたしましょ!さぁさぁ配った配った!」

 

 キララはそう言って珠緒にお菓子のカゴのひとつを押し付ける。珠緒が戸惑いながらカゴを受け取ると、キララは甲高い声で一般の人々に声をかけた。

 

「お菓子はいかがですかー!チョコもスコーンもありましてよー!」

 

 キララはそう言ってから、珠緒の方へ振り向く。珠緒は無言でその場に立ち尽くしていた。

 

「珠緒さま、どうなさったの?お腹空いてらっしゃるのかしら?」

 

「いえ、その…」

 

 珠緒はキララの言葉を否定すると、一瞬悩んでから話し始めた。

 

「…私、全然役に立ててないなって…さっきもメイド長に叱られて…戦った時も、アズマさんやミナミさんが殺されそうになった時も、何もできなかった…私、生き残ってよかったのかなって…」

 

「当然、いいに決まってますわ!」

 

 思いを吐露する珠緒に対し、キララは明るく言い切る。キララはお菓子のカゴをくるくると回しながら言葉を続けた。

 

「勝負には時の運も関わりますわ。そんな中で生き残るのが悪いなんてことはありませんわ、絶対に!」

 

「でも、戦いを終えたあとのメイド長の目…!メイド長はいつも叱られてばかりの無能な私より、他の人たちが生き延びればよかったと思ってるはずです….!」

 

「そんなわけありませんわ!焔さまは珠緒さまにすごく期待してらっしゃいますわ!何かにつけて、『私の次を任せられるのは珠緒よ』と言っていますもの!」

 

「でも私は叱られてばかりで…!」

 

「愛情ゆえに厳しい、というやつですわー!繊細になってはダメですわよ!さ、お菓子を配りましょう!」

 

 どんどんとネガティブな方向に物事を考えていく珠緒に対し、キララは珠緒の腕を掴んでお菓子を配るために、避難民の方へと歩き出す。

 そんなふたりの正面から、赤いメイド服を着た焔が歩いてくる。キララが声をかけるのに対し、珠緒は目を逸らして伏せた。

 

「焔さま、お疲れ様ですわ!ご用件はなんですの?」

 

「キララ、お疲れ様。珠緒に用があるの」

 

 焔が言うと、珠緒は驚いたように顔を上げる。すぐにキララが珠緒からお菓子のカゴを受け取ると、珠緒は驚いた顔のままキララの方を見る。キララは微笑みながら珠緒の肩に手を置いた。

 

「大丈夫ですわよ。さ、いってらっしゃい!」

 

「…はい」

 

 キララに励まされ、珠緒は小さく頷く。そして珠緒は、焔と共に食堂を後にするのだった。

 

同じ頃 星割山(ほしわりやま) 山頂 悪魔軍指揮所

 

 清峰たちの立てこもる屋敷、その向かいにある山は、悪魔軍の襲来と同時に占拠され、今日に至るまで悪魔軍の拠点となっており、清峰たちの屋敷を攻撃していた。

 そしてここの悪魔軍の指揮官である悪魔、カザンは、指揮官クラスの悪魔たちと共に、山を降りていく下級の悪魔たちを眺め、満悦の笑みを浮かべていた。

 

「耐えるなぁ、人間ども。よく頑張るなぁ。耐えれば耐えるだけ苦しみが長引くだけだというのになぁ!ふははは!!」

 

 カザンは自分の部下である悪魔たちが屋敷に群がっていく様をみて高笑いを上げる。そんな上機嫌のカザンの横に別の悪魔がやってきた。

 

「カザンさま、人間たちもよく戦います。このまま正面から力押ししても勝ち切れるとは限りません。別の作戦も立案するべきでは...」

 

「あぁん?」

 

 カザンは自分に提案をしてきた悪魔の方へと振り向く。提案をした悪魔は一瞬怯んだものの、そのまま自分の意見を発した。

 

「長期戦になれば人間も何をしてくるかわかりません、ここは部隊を分け、敵の首都へと攻めこむのが」

 

 そんな悪魔の提案を遮るように、銃声が鳴り響き、提案した悪魔は黒い煙となって消える。周囲にいた悪魔たちが見ると、カザンの右手にはショットガンのような銃が握られており、その銃口から煙が出ていた。

 

「誰かなんか言ったか、おい?」

 

 カザンはわざとらしく部下たちを見回して尋ねる。部下の悪魔たちが恐る恐る首を横に振ると、カザンは再び笑顔を取り戻して話し始めた。

 

「そうだよなぁ!ここのボスは俺だ!指図すんのは俺でお前らじゃねぇ!俺の言ったことだけしてろ!さもねぇとこの滅魔砲で塵にしてやる!わかったな!?」

 

 カザンが声を荒げて脅しつけると、部下の悪魔たちはおとなしく返事をする。それを聞いたカザンは、改めて声を張った。

 

「よし!わかってんならあの屋敷を落とすぞ!『造魔高炉(ぞうまこうろ)』の稼働率はどうなっている!」

 

「はっ!2基とも1時間辺り30体の生産ペースを維持できています!」

 

「連れてきた人間も炉にぶち込んで生産ペースをあげろ!物量で一気に押し切る!攻撃の手を緩めるんじゃねぇぞ!行け!」

 

 カザンの指示に従い、部下の悪魔たちは走り出す。そんな部下たちを眺めながら、カザンはひとりほくそ笑んだ。


(この屋敷ももうすぐこっちのもんだ…!他の面倒な場所は他の連中に任せりゃいい。俺はここさえ落とせば楽に出世できる)

 

 カザンはそう思いながら右手に握った滅魔砲を見下ろす。

 

(マズラが生物兵器を作り、トールトが月暈の巫女どもを殺し、ラウムやハバッシュ、イリーノスが街を破壊する...ドージがコーキを始末した今、この全ての作戦を描いた俺が真っ先に昇進するってもんだ…!)

 

 カザンは満面の笑みで顔を上げる。カザンの目には、屋敷に群がる悪魔たちの姿が映っていた。

 しかし、突然その光景に変化が現れる。

 屋敷の2階から緑色の服を着たメイドが悪魔たちの頭上に飛び降り、サブマシンガンを乱射する。悪魔たちが煙になるのと同時に、閉まっていた屋敷の扉が開き、その中からメイドたちと、スーツ姿の女性が現れた。

 

「あれは、清峰、だな?」

 

 カザンはスーツ姿の女性の正体に気づいて呟く。メイドたちは実際にそのスーツの女性を守るように散らばり、悪魔と戦い始めた。

 

「やつがこの屋敷の指揮官...ならばあいつさえ殺せば…!おいお前ら!全兵力を集中させて、あの女をぶっ殺せ!!」

 

 カザンが号令をかけると、悪魔たちはそれに応えるように山を駆け下り、屋敷へと向かっていく。カザンは進んでいく部下たちを見て、高笑いを上げた。

 

「ふははは!今日が貴様らの最後だ!人間ども!!」

 

 

 

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