追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
チーム分け
A:日菜子、四葉、晴夏、すみれ、菜々子、千鶴、→右側の煙を目指す
B:璃子、望、心愛、紫黄里、焔、真理子、キララ→屋敷で待機
C:結依、弥生、雪奈、咲来、麗奈、水咲、江美→紫黄里から連絡を受けて左側の煙を目指す
D:明宵、朋夜、華燐、珠緒→天正都へ救援要請中
幸紀→屋敷の正面で戦闘
同じ頃 星割山東部 第2造魔高炉
ひとつの家ほどの大きさはあろうと思われる巨大な釜が、山の自然の中に不自然に置かれていた。不自然なのはその釜の外観だけでなく、釜の中では、黒い液体が音と紫色の分厚い煙を立てて沸騰していた。
「きゃあああ!!!」
釜の中の液体に、メイド服姿の女性が浮かぶ。彼女は悲鳴をあげながら腕を天高く伸ばすが、黒い液体の中から無数の手が現れると、それによって液体の中に引きずり込まれ、抵抗も虚しく沈んでいくのだった。
そうして女性が沈められたところから、赤、青、緑、さまざまな色の悪魔の頭が見えたかと思うと、次の瞬間には筋骨隆々の悪魔たちが十数体、姿を現し、釜の外へと通じるハシゴを登り始めた。
「ケへへ、やはり霊力を持った人間は美味いらしいなぁ。たらふく食わせた分、増産も捗るってもんだぜぇ」
造魔高炉を管理する悪魔の1体が、新たに製造された悪魔の姿を見上げて満足げに呟く。その悪魔はそのまま近くにいた悪魔にも話しかけた。
「オイ!他の連中に、もっと活きのいい人間を連れてくるよう言ってこい!」
「んなこと言ってる場合じゃねぇゾ!もう1個の炉がぶっ壊されちまったらしいゾ!!」
「ナニィイ!?」
2体の悪魔たちが動揺していると、もう1体の悪魔がその2体のもとに駆け寄ってきた。
「オイオメーら!もっと悪魔を増産しろって命令が出たぞ!!」
「バカ言うんじゃねぇ!!さっさと逃げねぇと俺たちまでやられっちまうゾ!」
「人間風情にビビってんじゃねェ!!戦ってぶっ殺してやる!!」
「んなことしてねぇで増産に集中しろ!」
悪魔たちの間に動揺と混乱が広がる。
そんな時だった。
「そぉおおりゃあああ!!!」
近くの森の中から、裂帛の気合いと共に日菜子の右ストレートが悪魔の顔面に飛んでくる。混乱していた悪魔たちに対処するすべはなく、日菜子の攻撃を真正面から受け止め、黒い煙になった。
「な、ナンダァ!!?」
戸惑う悪魔たちのもとに、日菜子に続くようにしてすみれ、晴夏が現れると、他の悪魔たちを真っ二つに両断し、悪魔を電撃で焼き尽くす。
「て、テキだ!!殺せ!!」
奇襲を受けたことに気がついた悪魔たちは、声を張り上げ日菜子たちの方へ指差す。すぐに四葉が悪魔たちの前に立つと、武器である剣を構えた。
「私とすみれでここは引き受けます!皆さんはあの釜を壊してください!」
「任せてくれ。四葉は私が守る」
「四葉、すみれちゃん、お願いね!」
悪魔たちを前に一歩も怯まない四葉とすみれにその場を任せ、日菜子たちは目の前にある釜のもとへ走っていく。
途中邪魔する悪魔たちを、菜々子が鎖で殴り倒し、晴夏が電撃で蒸発させたりしながら、日菜子、千鶴、菜々子、晴夏の4人は釜のそばまでたどり着いた。
「よし、どう壊す!?」
晴夏が尋ねると、菜々子が鎖を振るって衝撃波を放ちながら答えた。
「千鶴ちゃんの武器を伝わせて、お姉ちゃんが霊力を流すのがいいと思う!巫女さんの特別製だから、きっとうまくいくはずだよ!」
「え、私の…わかりました!」
突然話を振られた千鶴は、一瞬驚いたあと、手に持っていた武器である
「…いくよ!!」
日菜子は息を吐き、集中すると、手のひらに霊力を流す。霊力は
釜に光の筋が走り始め、ひび割れていく。
次の瞬間、ダムが決壊するかのように、釜の壁が破裂する。中に入っていた黒い液体も、それに呼応するように光によって蒸発していくと、中にいた悪魔たちも悲鳴をあげて黒い煙になっていくのだった。
「…よぉおし!!」
日菜子は、目の前の釜が消滅し、中にいた悪魔たちもまとめて消滅したのを確認すると、大きく声を上げ、改めて残りの悪魔たちの方へと振り向く。悪魔たちの目には、恐怖の色が浮かんでいた。
「ろ、炉が…!どうすんダ!?」
「ヤベエよ!!こんな、こんなの!!」
「今がチャンスだよ!!『星霊隊』!攻撃開始!!」
狼狽える悪魔たちの姿を見て、日菜子が声を張る。それに応えるように、星霊隊の女性たちは悪魔に向かっていくのだった。
その頃 星割山山頂 悪魔軍指揮所
「ええい、どうなっているんだ!!」
悪魔軍の指揮を執っているこの場所も、重要施設である『造魔高炉』をふたつ失った報告を受け、混乱状態に陥っていた。
「カザン様は私に指揮を命じた!私が指揮を執る!」
「間抜けが!貴様ごときにカザン様が託すわけがなかろう!私が指揮を執る!」
「なんだっていい!とにかく指示を出さねば、このままでは総崩れに…!!」
「なんでこんなときにカザン様はいないのだ…!!」
カザンに取り残された悪魔軍の指揮官たちは、部下たちに指示も出せないまま簡易テントの中で口論を繰り広げる。
そんななか、突如としてテントの入り口が開かれる。悪魔たちはそれに振り向くこともせず、議論を続けていた。
「報告なら後にしろ!今は忙しいのだ!」
「それはよかった。楽に貴様らの首を取れる」
「!?」
想像もしていなかった返事が来たことに、指揮官たちが驚いたときには、もう遅かった。
彼らが振り向くと同時に、刀による一閃が奔る。次の瞬間、悪魔軍の指揮官のうち3体の首が消し飛び、黒い煙となって消滅した。
そのとき、ようやく彼らは「誰が」ここにやってきたのかを理解した。
「き、貴様は…コーキ!!」
「あの穢らわしい人間の血が入った…!」
「お、愚か者!下手に刺激しては…!!」
幸紀を罵ろうとする悪魔に対し、それを抑えようとする悪魔もいたが、幸紀の前ではどちらも無意味で、次の瞬間には、声を発した悪魔たちの首から上は消し飛んでいた。
「ま、待ってくれコーキ!!我らは同胞ではないか!!」
「そ、そうだ!ここでお前の力を借りることができれば、この戦は勝てるのだ!!」
「俺の力がほしいのか」
残っていた5体程度の悪魔たちに、幸紀は尋ねる。その悪魔たちは簡易テントの壁際に逃げ込みながら何度も頷いた。
「あ、あぁ、もちろん!!悪魔界にお前以上の剣士はいないからな!!」
「やはりお前は最強だ!!あれだけ量産した悪魔もお前には敵わなかったのがその証拠だ!!」
「ここで我らに味方すれば永遠の栄光がお前に約束される、だから、また共に戦おう!」
「共に戦う?」
幸紀は悪魔たちの言葉に思わず尋ね返す。そして鼻で笑い飛ばすと、大きな高笑いをあげた。
「ふははは…!!これは傑作だ!!貴様らがいつ俺と共に戦ったと言うのか!俺が人間界に単独で潜り込み、そうして得た情報で楽に勝利する。お前らのやり口はいつもそうではないか!その対価で俺が得たものは、罵声と悪魔界からの永久追放だけだ!!」
「悪かった!!でもコーキ、俺たちは悪くないんだ!」
「知るか」
次の瞬間、幸紀の刀が振るわれる。たったのひと太刀で、その場にいた5体の悪魔はまとめて黒い煙となって消滅するのだった。
「無様な…散々俺をこき下ろしておきながら、最後には俺を煽てて命乞いとは…だったら最初から素直に俺に跪き、俺を讃えていれば良かったものを」
幸紀は自分が殺した悪魔たちの態度を思い返し、鼻で笑い飛ばす。黒いロングコートを翻し、誰もいなくなった簡易テントに背を向けると、ゆっくりとテントを後にし、外へ出た。
「さて…最後は貴様だ、カザン」
幸紀は小さく呟くと、どこかを目指して歩き始めた。