追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
前回までのあらすじ
悪魔軍最強の剣士である東雲幸紀は、悪魔軍を裏切り、悪魔を皆殺しにする旅を始める。その途中で悪魔に襲われていた日菜子、四葉という2人の女性を助け出し、3人は道中を共にすることに。
次の目的地である地下鉄を目指す3人の前に、空から女性が降ってくる。3人に助けられたこの女性は、何やら様子がおかしいようで…?
6月18日 12:30
「う、嘘ぉ!?オレ、オレ、女になってる!!?」
幸紀、日菜子、四葉の3人の前に立つ、長身でスタイルのいい、明るい水色の短髪の女性が、日菜子のスマホに映る自分の姿を見て声を上げる。
幸紀が冷ややかな目でその様子を見ていると、日菜子がその女性に声をかけた。
「あのー…あなたは?」
日菜子に尋ねられたその女性は、未だに落ち着かない様子で話し始めた。
「オレは、鳴神《なるかみ》晴夏《はるか》…東京の高校に通ってる、普通の2年生男子だよ。あ、いや、今は女子なのか…」
「トーキョー?えっと…どこ?」
晴夏の言葉に、日菜子が尋ねる。四葉が首を傾げ、幸紀が黙り込んでいると、晴夏は思わず声を大きくした。
「東京だよ!新宿とか、品川とか、渋谷とかさ!こんな感じでビルがたくさんある…」
晴夏はそう言って辺りを見る。その時、彼女は、街に立ち並ぶビルのほとんどの窓が破壊され、そもそも道路は混乱してぶつかり合った車で塞がれ、炎上しているという、異様な光景に気がついた。
「嘘だろ…なんだよこれ…!?」
「あなたがどんなところから来たのかはわかりませんが、少なくとも、ここはアカツキ、という国の、飛岡県、千年町というところです。そして…この街は悪魔の襲撃を受けて、壊滅状態になりました…」
言葉を失う晴夏に対し、四葉は静かに語る。晴夏は、四葉の言葉の一部を尋ね返した。
「悪魔…?なんだそれ?」
「私たちもどういう存在なのかはよくわかってないの。でも、ここに住む世界の人々を苦しめる存在なのは間違いないんだ。だから、私たち3人は、悪魔を倒すための旅をしてるところなの」
日菜子は晴夏に言う。晴夏は日菜子の話を聞くと、少し俯き、小さく呟いた。
「オレ…もしかして…異世界に来ちゃったんじゃ…」
「おそらくそうだろう」
晴夏の呟きに、幸紀が同意する。晴夏が顔を上げると、幸紀は表情を変えないまま話し始めた。
「悪魔軍は以前から多くの世界への侵攻をおこなっていた。神出鬼没の攻勢も、異世界を移動する技術の応用と言われていて…」
幸紀が話していると、その空気感を遮るように、誰かの腹の音が聞こえてくる。幸紀が晴夏を見つめると、晴夏は照れくさそうに頭を掻いた。
「いや、大変申し訳ない…お腹が空いてまして…へへ」
「…仕方ない。腹ごしらえだ」
幸紀はそう言うと話を中断し、どこかへと歩き出す。晴夏は申し訳なさそうにしながら幸紀に続き、日菜子と四葉も顔を見合わせると、幸紀に続いた。
数分後 12:45 コンビニ
幸紀たち4人は駅前のコンビニの前にやってきた。しかし、コンビニの中は停電していて暗くなっており、中の商品棚は荒らされ、商品は乱雑に地面に散らばっていた。
「うーわ、ひっでぇな、これ…」
「入るぞ」
コンビニの状況を見た晴夏の呟きに対し、幸紀は短く言うと、破壊された自動ドアを潜り抜け、店内に入る。日菜子がそれに続くと、四葉、晴夏と続いて中に入った。
店内には誰もいない。既に荒らされるだけ荒らされ尽くし、悪魔も人間も誰も残っていなかった。
「店員さんたち、逃げててくれてるといいんだけど…」
日菜子が小さく呟く。幸紀は構わずコンビニの食品コーナーに直進すると、床に落ちた袋詰めのパンなどを拾い始めた。
「食えそうだ」
「待ってください、東雲さん。非常事態だからって、お金も出さずに食事をするのはちょっと…」
平気で食べようとしていた幸紀に対し、四葉が遠慮がちに言う。幸紀が見ると、日菜子と晴夏も同じような表情をしていた。
幸紀は小さくため息を吐くと、着ているロングコートの内ポケットから財布を取り出すと、レジに行き、財布から3枚、紙幣を置いた。
「…これで好きなだけ食えるぞ」
「あ、いや、奢って欲しいとかじゃなくて…」
「こんな状況にくだらんことを気にするな。食えるうちに食え」
「…ありがとうございます」
幸紀の行動に、四葉は礼を言う。日菜子と晴夏も軽く頭を下げると、床に散らばっている食品や、飲料を拾い始めた。
それぞれある程度満足がいく程度に食品を集めると、4人はコンビニの隅にあるイートインコーナーの椅子に腰掛け、食事を始めた。
「はぇー、どれもこれも見たことない商品ばっかだなぁ…やっぱ異世界なんだなぁ」
晴夏は日菜子や四葉、幸紀、そして自分が拾った商品を見て呟く。日菜子は、そんな晴夏に笑いかけながら、おにぎりを頬張った。
「どれもこれも美味しいよ。食べてみて」
「ねーちゃんマジ?そいじゃさっそく」
晴夏はそう言うと、自分の前にあったおにぎりの包装を解いて頬張る。ひとくち食べると、晴夏は舌鼓を打った。
「んー!シャケだ!やっぱ異世界でもシャケ握りはウメェなぁ!」
「気に入ってもらえてよかった」
晴夏の言動に、日菜子は微笑む。そんな中晴夏はふと、日菜子たちの名前を知らないことに気がついた。
「そういや、ねーちゃんたちの名前聞いてねぇな。教えてくれよ」