追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
前回までのあらすじ
清峰屋敷は悪魔たちの猛攻を受けていたが、幸紀と星霊隊が合流したことにより一気に形勢を逆転。悪魔軍の重要な設備も破壊し、人間たちの勝利は目前まで迫る。
しかし、悪魔軍の指揮官であるカザンの謀略により、清峰は人質として拉致され、さらには清峰を救出しようとした幸紀も、カザンの手によって消滅してしまった。
6月21日 0:00 心泉府 霊橋区 星割山山頂
悪魔軍の指揮官、カザンは、椅子に縛りつけた清峰をよそに、崩れた簡易テントの残骸を漁っていた。その間に清峰も身をよじって縄を抜け出そうとするが、一向に抜け出せる気配はなかった。
「んーと…あった。これこれ」
カザンはそう言いながら、テントの残骸から機械を取り出す。それは、携帯型の大型無線機だった。カザンは無線機のアンテナを伸ばしながら、逃げようとする清峰の姿を見て嘲笑った。
「ははっ、必死にもがいて可愛いじゃねぇか。無駄だけどな」
清峰はメガネ越しにカザンを睨む。しかし、カザンは清峰のことなど気にせず、無線機のマイクを握り、声を荒げた。
「おい、屋敷にいる女ども!俺様はカザン!お前たちの上司は俺が預かっている!お前たちが下手なことをすれば、この女の命はない!だがお前たちが俺の言う通りにすればこの女を助けてやる!」
同じ頃 清峰屋敷内部
星霊隊のメンバーたちは、紫黄里のノートパソコンから聞こえてくるカザンの声に身構える。パソコンから少し離れたところで、四葉が疑問を口にした。
「敵は紫黄里のパソコンの周波数なんて知らないはず…どうやって連絡を?」
「おそらく全周波数で通信をしています。私の脳内の受信機にも届いているので間違いはないと思われます」
四葉の疑問に、近くにいた麗奈が冷静に答える。そんなことなど知らないカザンは話を続ける。
「俺の要求は単純!その屋敷と、お前らの立ち退きだ!そうすりゃあお前たちの命も、ここにいる女の命も助けてやる!」
カザンの言葉を聞いていた焔は、パソコンを操作していた紫黄里に声をかけた。
「すみません、通信への応答はどうやればいいのかしら?」
「え?あ、ここのボタンを押しながら、マイクに話してもらえれば…」
焔は紫黄里による説明の途中で、勝手にパソコンのボタンを操作し、カザン相手に話し始めた。
「カザン、私は侯爵の部下である灯野よ。そちらの要求はわかったわ、しかし侯爵が生きている保証はあるの?答えなさい!」
「キャンキャンうるせぇなクソババア。オラ、話してやれ!」
カザンの乱暴な声の直後、清峰の苦しむ声が聞こえたのち、清峰の声が聞こえ始めた。
「…清峰だ…私は生きている」
「侯爵…」
「焔…そして星霊隊の諸君、私のことはどうでもいい、この悪魔を倒してくれ…!今は星割山の…」
「誰がそこまで喋っていいっつった!!」
清峰が現在地まで話そうとしたその瞬間、カザンの怒鳴り声とともに殴打音と清峰の悲鳴が響く。思わず焔たちメイドは声を上げた。
「侯爵!」
「早苗様!!」
メイドたちが清峰を心配する声を、カザンは一笑に付し、再び乱暴に命令し始めた。
「お前たちの時間で5分だけくれてやる。それまでに屋敷を明け渡す用意をしろ!!さもなくばこの女を殺す!」
「待ってくれ!」
カザンの言葉に清峰が訴える。清峰はそのまま話し続けた。
「屋敷には戦闘に関係のない一般人も大勢いる、彼らが避難する時間をもらいたい!」
「お前が要求できる立場だと思うのか?あぁん!?」
「そちらが欲しいのは屋敷であって避難民の命ではないはずだ!もし要求が受け入れられないなら、今すぐ一般人を避難させ、屋敷を爆破するように指示を出す!」
「なんだとコラ!」
「不満があるのなら私の要求を受け入れてもらう!そちらとしても軍を再編成する時間を作れるのだから、悪い話でもないはずだ!」
清峰は合理的に訴えかける。清峰に言いくるめられそうになったカザンは、再び清峰の顔面を殴ると、八つ当たりするように焔たちに言葉を吐き捨てた。
「30分だけ待ってやる!それまでに一般人どもをどかして、その屋敷を俺に明け渡せ!妙な細工をしようもんなら今すぐ皆殺しにしてやる!」
カザンは声を荒げながら言う。そのまま通信を切るかと思いきや、カザンは突然上機嫌になって清峰に話しかけた。
「あぁ~そうそう、早苗ちゃんよぉ、大切な部下たちに、ひとつ大事なお知らせがあるんじゃないかぁ?」
「…」
「お前の口から言えよ、ほら!」
ノートパソコンから聞こえてくるカザンの言葉に、星霊隊のメンバーたちは急に寒気を覚える。嫌な予感が彼女たちの心を埋め尽くすなか、清峰が震える声で話し始めた。
「…みな、心して聞いてくれ…」
「こ、侯爵…?」
「…幸紀が…死んだ…」
「…!!」
清峰からその言葉を聞くと、女性たちの間で動揺が広がる。それを通信機越しに感じ取ったカザンは、大笑いしながら言葉を投げかけた。
「ふはははは!それじゃあ、30分後にまた会おう!女ども!」
カザンは一方的にそう言うと、通信を切る。