追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
通信が切れるやいなや、清峰屋敷の中にいる星霊隊の女性たちの間でどよめきが起こった。
「どういうこと…?幸紀さんが…死んだ…って…!」
「それが本当なら私たちがまともに戦ったって勝てませんよぉ!!?おしめぇだぁあ!!」
「大人しく降伏するしかないの…?」
「みんな聞いて!!」
動揺する女性たちに対し、日菜子が声を上げる。女性たちのどよめきが一気におさまり、日菜子の方へと振り向くと、日菜子は声を大きくして話し始めた。
「私たちがなんのためにここに来たか、思い出して!!私たちの使命は、悪魔を倒すこと!だから、こんなところで悪魔に屈するわけにはいかない!そうでしょ、みんな!」
日菜子が言うと、それによって星霊隊のメンバーたちは顔を上げる。そのまま日菜子は訴えかけた。
「それに、幸紀さんはきっと生きてる!みんなも見てきたでしょ、幸紀さんの強さを!あの幸紀さんが、たった1体の悪魔に負けるわけがない!だから、そう信じて私たちも頑張ろう!!」
日菜子がそう言って拳を天に突き上げると、星霊隊のメンバーたちも拳を突き上げ、声を上げて応えるのだった。
(すごい…日菜子さんの言葉で、空気が一気に変わった…!これがリーダーの力…!)
日菜子の統率力に、横で見ていた四葉が目を見はる。そんなこともつゆ知らず、日菜子はそのまま指示を続けた。
「それじゃあ、早速、動こう!まずは、やることを整理しよう!」
「一般人の避難、侯爵の奪還、カザンの撃破。この3点だと思われます」
すぐさま麗奈が状況の要点を整理し、簡潔に伝える。それを聞いた四葉が、間髪を入れずに話し始めた。
「とりあえず、避難は終わらせましょう!私が今から一般の方を避難誘導しますので、その間に作戦を立てておいてください!心愛、望、すみれ、手伝って!」
「わかった!」
「じゃあ、四葉が避難誘導している間に、残りの作戦を考えよう!侯爵の奪還作戦と、カザンを倒す作戦を!」
四葉たちがその場から去っていったのを見送り、すぐに日菜子が意見を求める。すかさず菜々子が手を挙げて話し始めた。
「はいはーい、屋敷をあげるふりをするのはどう?」
「どういうこと?」
「30分後にはカザンはここに来るんでしょ?だったら屋敷に奴を閉じ込めて、その間に侯爵を助けに行く。これならうまく行くんじゃない?」
菜々子が軽い雰囲気で言うと、感心したように声が上がる。日菜子は菜々子の提案を受け入れた。
「菜々子のアイディアを使おう!でも、どうやって閉じ込めようか…」
「…提案があります…」
ここまで黙っていた明宵が、本を開きながら言う。日菜子の返事も待たずに、明宵は自分の考えを話し始めた。
「…私と朋夜の霊力で…この屋敷に結界を張り巡らせることができると思います…あまり長時間ではありませんが…この広さなら5分程度であれば…」
「5分…悪魔を一匹葬るには十分ね」
明宵の言葉を聞いていた焔が前に出ながら言う。焔の意図を感じ取った璃子が、すぐに声を上げた。
「まさかあなた戦うつもり?傷はまだ癒えてないわよ」
「なら医者に診てもらいながら戦うわ。侯爵が不在の今、屋敷の責任者は私。私がここにいなければ敵も怪しむはず。だから、私はここで敵を待ち受けるわ。侯爵のことは、あなたたちにお任せします」
焔は璃子の言葉にあっさりと返しながら言葉を続ける。璃子が小さく肩を落として焔の言葉を受け入れたのを見て、日菜子は話をまとめた。
「それじゃあ、メイドさんたちと璃子さんは屋敷をお願いします!残りの皆は、私と一緒に侯爵を!」
話がまとまったかに思えた直後、水咲が話し始めた。
「私は屋敷に残らせてもらうわ。山登りなんて嫌だもの」
「こんな時に自己中な…!」
水咲の傍若無人な態度に、思わず華燐が呟く。すると、雪奈も申し訳なさそうに手を挙げた。
「ご、ごめんなさい…雪奈も…さっき敵の基地を攻撃するのに…霊力を使いきってしまって…しばらく戦えそうにないです…ごめんなさい…」
「うぅん…そっか…」
予想外の事態に、日菜子は言葉に詰まる。すぐに近くに立っていた千鶴が日菜子に提案した。
「日菜子さん、私があの子の面倒見ますよ。どうせ私、大した戦力にもなりませんし。そっちのおばさんがサボらないようにも見張っておきます」
「おば…」
「ありがとう、千鶴!じゃあ、雪奈と一緒に避難誘導を!」
「わかりました。雪奈ちゃん、お姉さんについてきてね。さ、おばさんも」
「はい!お願いします!」
「…覚えてなさい、クソガキ」
悪態をつく水咲と、明るく素直な雪奈を引き連れ、千鶴は四葉たちの向かった方へと歩き出す。今度こそ準備が整ったと判断した日菜子は、声を張った。
「それじゃあ、侯爵を助けに行くよ!星霊隊!出撃!!」
日菜子の言葉に、女性たちは声を上げて応える。彼女たちは、清峰の囚われている山を目指し、続々と屋敷を出るのだった。