追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第13話(3)屋敷の秘密

チーム分け

 

A:日菜子、晴夏、麗奈、菜々子、結依、弥生、咲来、江美、華燐、→囚われた清峰の救出に向かう

 

B:璃子、千鶴、水咲、雪奈、焔、真理子、キララ、珠緒→屋敷で待機

 

C:四葉、すみれ、望、心愛→屋敷で一般人を避難誘導

 

D:明宵、朋夜、紫黄里→屋敷で結界を展開

 

 

その頃 星割山山頂

 カザンは、目の前の椅子に縛られている、清峰の腕時計を見ながら、小さく口角をあげた。

 

「さて、いい時間だな。そろそろお前の部下に会いに行くとしようか」

 

 カザンはそう言うと、自分の額に生えた一本角を撫で上げながら立ち上がる。そんなカザンの様子を見ていた清峰は、縛られながらも尋ね始めた。

 

「ふん。素直に行くとは馬鹿な悪魔だ。私の部下たちなら、貴様を罠にかけて、ここにいる私を助けにくるなど造作もない。大人しく負けを認める方が身のためだぞ」

 

「ふははは!!この状況で強がりを言えるとは!気に入ったぞ、早苗ちゃんよ?だが、あいにくとお前の挑発には乗ってやれん!こっちは屋敷に行かねばならんのだ」

 

「山賊の真似事で宝でも奪いに行くのか?悪いが清峰家は清貧を(むね)とする一家だ。贅沢な金銀財宝などありはしないぞ」

 

「いいや、俺は知ってるぜ?あの屋敷には、どんな金銀財宝にも匹敵するモンがある、ってな」

 

「買い被りだ」

 

「『天正大結界(てんしょうだいけっかい)』」

 

 突然カザンが発した単語に、思わず清峰の眉が動く。同時に、カザンは清峰を見下ろしてニヤリと笑った。

 

「ほほぉ、やっぱり知ってるんだな?」

 

「ふん、この国に住んでいる人間なら誰でも知っている。女王陛下を悪魔から守るために、天正都を囲っている結界だ」

 

「そうだ。こいつのせいで俺たち悪魔軍はお前らの女王陛下に会えないわけだ。じゃあ、この結界はどっから管理してんだろうなぁ?」

 

 カザンは嫌味っぽく清峰に尋ねる。清峰が口をつぐむと、すぐさまカザンは勝ち誇ったように話し始めた。

 

「お前の屋敷だろ、早苗ちゃんよぉ?」

 

「さて」

 

「トボけたって無駄だぜ。人間界には俺らの回し者なんていくらでもいるんだ。そいつらが皆言ってんのさ、清峰屋敷には結界を管理する場所があるってな!そこを俺が手に入れりゃ、出世は間違いねぇ!そうすりゃ悪魔軍は俺の思うままだ!」

 

「我欲の塊か。小物だな」

 

 大きな声で欲望を語るカザンに対し、清峰は小さく一蹴する。すぐさまカザンは清峰の顔面を平手打ちすると、椅子ごと倒れた清峰に唾を吐きかけた。

 

「非力な人間風情が!偉そうに言ってやがるが、結局オメェは俺に捕まって!何もできずに無様晒してるだけじゃねぇか!あぁん!?」

 

 カザンはそう言って清峰の横顔をゆっくりと踏み締める。清峰が歯を食いしばって耐えるのを見て、カザンは高笑いをしてみせた。

 

「ふはははは!情けねぇ顔だな!そうだよ!弱い奴はそうやって歯ァ食いしばってどんな理不尽にも耐えるんだよ!強者のためにな!それが世界のルールだ!わかったか!?」

 

 カザンはそう言うと、清峰の顔面をつま先で蹴り抜く。清峰がかけていた黒縁の眼鏡が飛んでいき、清峰の視界が歪むなか、そこに映るカザンの背中は遠くなっていくのだった。

 そのままぼんやりとしている世界で、清峰の耳にどこか遠くから電子音のような音が聞こえてくる。

 

(おかしい…星霊隊が私を助けにくることは、あの悪魔にもわかっているはず…私の身柄は交渉の道具、だから奪われてはあの悪魔にとって不利益、なのに…なぜ警備の悪魔すらいないんだ…?)

 

 清峰はカザンに頭を踏まれたダメージを振り払うように首を振る。電子音は、変わらず彼女の耳に響き続けていた。

 

(それに…この音はなんだ…?どうやら背後から聞こえるが…)

 

 一定間隔で聞こえてくる甲高く短い電子音。瞬間、清峰の脳内でひとつの仮説が浮かび上がった。

 

(カウントダウン…なのか…?まさか…これが仮に爆弾だとしたら…!私をエサに星霊隊たちを爆殺しようというのか…!!)

 

 カザンの真意に気がついた清峰は、再び身を捩って拘束から抜け出そうとする。しかし、いくら清峰がもがいても、状況は何ひとつとして改善されなかった。

 

(頼む…!私はどうなってもいい…!皆はここに来ないでくれ…!!)

 

 清峰は強く願う。しかし、そんな彼女の願いを知るものは、誰もいないのだった。

 

カザンが指定した時刻 清峰屋敷

 バスの避難誘導を終えた四葉たちは、天正都に向かうバスを見送ると、裏口から屋敷の中に戻る。彼女たちが入ったすぐそこでは、紫黄里がマイク付きのヘッドホンをつけながらノートパソコンを叩いていた。

 

「…うむ!問題ないぞ!月暈の巫女よ!」

 

「紫黄里?」

 

 一見して何をしているかわからない紫黄里に、四葉が話しかける。声をかけられた紫黄里は、ヘッドホンの片耳を外し、四葉の方に顔を向けた。

 

「おう!生徒会長!避難誘導は!?」

 

「一通り終わった!紫黄里は何してるの?」

 

「この屋敷の監視カメラの映像を見られるようにパソコンを設定していたのだ!」

 

「なんでそんなことを?」

 

「あぁそっか、四葉たちはいなかったか。敵を屋敷に引き込み、巫女たちの結界で閉じ込めて倒す作戦になったのだ!」

 

「なるほど。そうやって閉じ込めた相手を監視するために、カメラを見られるようにしてるってワケね」

 

「そういうことだ!」

 

 紫黄里の説明に状況を察した望が言い当てる。言い当てられた紫黄里も満足げに笑っていると、朋夜と明宵が廊下の奥から現れた。

 

「紫黄里さん」

 

「おぉ、巫女殿!そして明宵殿!」

 

「…カメラのセッティング、ありがとうございます。映像、見せていただけますか?」

 

「承知した!」

 

 明宵に言われると、紫黄里はパソコンの画面を明宵に見せる。パソコンの画面は4分割され、屋敷の内部の各所を映し出していた。

 

「ほぉ…これが、かめら、と、ぱそこん…すごいですね」

 

 朋夜が感心している間に、明宵は微笑みながら頷いた。

 

「…ありがとうございます、紫黄里さん…それでは、もうそろそろカザンがこちらに来ますので、紫黄里さんは四葉さんたちと共に、潜伏場所へ」

 

「わたくしどもはいつでも結界を張れるように用意しますので、先に行ってください」

 

 朋夜と明宵に促されると、紫黄里は頷き、四葉たちのほうに振り向いた。

 

「よし!我らの任務は後で詳しく話す!ひとまずは皆、我に続け!」

 

 紫黄里はそう言って四葉たちを先導し、屋敷のどこかへと歩き始める。朋夜と明宵は逆にその場に止まり、ふと、窓の外を眺めた。

 夜の闇があたりを包む中、山から黒い影たちが蠢き、こちらに向かってくるのが見える。数時間前ほどではないが、決して少なくない軍勢なのも事実だった。

 

「…来ましたね」

 

「えぇ…ですが、必ず勝ちましょう」

 

 明宵と朋夜は、言葉数こそ少ないものの、確かにお互いの想いを確認し合う。そうして2人は走り始めた。

 

 

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