追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち- 作:晴本吉陽
その頃 清峰屋敷内部
カザンの指示に従い、悪魔たちが屋敷の中を破壊しながら歩き回る。1階にカザンと共に待機させられていた焔たちは、じっとその様子を見守り続けることしかできなかった。
カザンが焔たちに背を向けている隙を見計らい、真理子が焔に耳打ちし始めた。
「焔、このままじゃ、もうすぐあの部屋に気づかれるよ...!早く結界を張らないと…!」
「ダメよ…まだ救出チームからの連絡がきていない。ここでやってしまったら、侯爵の命が…」
焔が小声で答えていたその瞬間、メイドたちの耳に、小さく爆発音のようなものが聞こえてくる。焔が窓から山の方をみると、赤い炎と黒い煙が立ち上っていた。
「…!?カザン、あの炎は…!」
焔が思わず敬語を使うのも忘れて尋ねる。カザンはゆっくり振り向くと、他人事のように答えた。
「あぁ、時限爆弾だなぁ」
「どういうこと!?話が違う!!」
「なんの話だ?」
「要求に従えば侯爵は無事に返還されるはず!」
「誰がそんなこと言った?えぇ?『要求に従わなきゃ殺す』って言っただけだぜ?『要求に従ったら生かして返す』とはひとことも言ってねぇよ俺は?ふはははは!!!」
「くっ…!!」
カザンの高笑いに対し、焔は奥歯を噛み締め、拳を握りしめる。そんな焔の横に、同じく拳を握ったキララが立ち、耳打ちした。
「焔さま、やっちまいましょう!」
「…ええ、そうしましょう」
焔はキララの言葉にそう答えると、耳につけている通信機を押さえて話し始めた。
「灯野です…各位、作戦開始!!」
焔の声が1階に響く。瞬間、窓の外に青い半透明のバリアーが展開されと同時に、屋敷の各所から星霊隊のメンバーたちが飛び出し、悪魔たちに襲いかかる。屋敷の内部では、悪魔たちの悲鳴が聞こえ始めた。
そして、真理子、キララ、珠緒も、それぞれの武器を発現させると、油断していたカザンの背後から襲いかかった。
「くたばれ卑怯者ォ!!」
「!!」
キララがカザンの脳天を目掛け、自分の武器である三節棍を振り下ろす。カザンはすぐさま振り向き、魔力で発現させた自分の刀でそれを受け止めた。
「おぉっとぉ!ふん、やっぱり来やがったな!」
カザンはニヤリとしながらキララの腹を蹴り飛ばす。キララが吹き飛ばされたその先にいた珠緒も、まとめて壁に叩きつけられた。
すぐに真理子が自分の武器である霊力の2丁サブマシンガンをカザンに対して連射するが、カザンは刀を回転させて飛んできた銃弾を弾き返した。
「ははは!無駄だ無駄!!お前たちの行動はわかってんだよ!窓の外を見てみろよ!!」
カザンは銃弾を周囲に弾きながら言う。真理子が銃撃をしている間に、焔が一瞬だけ窓に目をやると、無数の悪魔たちが屋敷に迫っていた。
「なんて数…!」
「そうだ!たとえ屋敷の中の俺たちを倒せたところで、屋敷の外のこの大軍勢は倒せねぇ!清峰も爆死した!お前たちの負けだ!!」
カザンはそう言って勝ち誇ると、銃弾を弾き返しながら真理子に接近する。
距離が縮まってきた真理子は、銃撃をやめて蹴りをカザンに浴びせようとするが、カザンは頭を振ってそれを回避しつつ、額に生えた角で真理子の足を払う。
「っ!」
足を払われ、その場に倒れた真理子の腹に、カザンは刀を突き立てた。
「ぐあぁあああ!!!」
「真理子っ!!」
脇腹を貫かれた真理子は、その痛みで絶叫する。様子を見ていた焔はすぐさまカザンに背後から殴りかかるものの、カザンは振り向きざまに焔の腹に拳を叩き込んだ。
「ぅっぐ…!」
焔の体が大きく丸まったその直後、カザンは焔の頭を腕で抱え、焔の肋骨を思い切り殴りつける。
「ぁ...っ…!」
焔の肋骨が折れ、息ができなくなる。そんな焔をその場に投げ捨てると、カザンは真理子の腹に刺していた刀を乱雑に抜き、倒れた焔を見下ろした。
「そこの骨が体に突き刺さりゃ、お前はゆっくり死んでいく。せいぜい走馬灯を楽しめや」
「き…さ…ま…!」
カザンは焔の声を背中で受け止めながら、カザンは屋敷の外につながるであろう扉に手を伸ばすが、青白い電流が彼の手に流れ、すぐにカザンは扉から手を離した。
「ああ、そういや、今、結界を張ってるんだったっけか。まぁ俺には効かねぇんだが」
カザンはそう呟くと、そこに倒れているメイドたちを眺めながら刀を地面に突き刺し、白と黒の円を地面に出現させた。
「あばよ、おめえら。あの世で楽しんでな」
カザンは焔たちに捨て台詞を吐くと、地面に吸い込まれるようにしてその場から消え去るのだった。
消えるカザンに対し、焔は手を伸ばす。しかし、その手は決して届かなかった。
数分後
悪魔軍の一部が使用している、秘密の通路、悪魔回廊。
これは、この世界の各地へと繋がっており、これを使うことによって、通常は数時間かかる距離であっても、数分で移動できるようになる。
日菜子や清峰といった通常の人間たちには決して認識できない通路で、悪魔軍の神出鬼没の攻勢はこの悪魔回廊によって実現されていた。
カザンはそんな悪魔回廊のなかにやってくる。回廊の中は全て黒色の壁に包まれており、普通の人間にはただの暗闇にしか見えなかったが、悪魔にとっては問題なく歩き回れる空間だった。
「ふぅ。清峰は爆殺、救出に来た連中も道連れ、屋敷の連中も包囲した。こうなりゃ俺はサボるだけだ。数分後、また屋敷に行けば全ての手柄は俺のものになってる…いい気分だぜぇ!」
カザンは悠々と、背中を伸ばしながら回廊を歩いていく。彼が目指しているのは、清峰を拘束していた、山の山頂だった。
このまま彼が目的地に辿り着こうとしたその瞬間、突如、鋭い殺気がカザンの背中に突き刺さる。
(この殺気…まさか…!!)
カザンは嫌な予感がすると、振り向きざまに魔力で発現させた刀を振るう。そのカザンの刀に、凄まじい衝撃が走ると同時に、カザンの刀は真っ二つに折れた。
「…!貴様…!!」
カザンは目の前にいる、殺気の正体に気づいて言葉を失う。一方、殺気の正体は、黒いロングコートをたなびかせ、カザンににじり寄った。
「また会ったな、カザン」