追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第16話(5)踏みにじられた尊厳-晴夏と千鶴-

数分後

 晴夏と千鶴は息を切らしながら、近所にあった自然公園の中にやってくる。すでに夕暮れも進み、誰もいない公園の中、ふたりは茂みの中に隠れて様子を見回していた。

 

「はぁ…はぁ…一旦逃げ切れたか…?」

 

「...そうだね」

 

 晴夏と千鶴は茂みの中で隠れながら短くやり取りをする。その間に、晴夏は千鶴に頭を下げた。

 

「ごめん、千鶴…さっきまで、色々できなくて」

 

「いや、別に大丈夫だよ。でも、何があったの?」

 

「…ごめん、言いたくない。でも、もう大丈夫だから。一緒に幸紀さんの刀を探して、日菜子たちのところに帰ろう!」

 

「そだね!頑張ろ!」

 

 晴夏と千鶴は改めてお互いの想いを確認し合うと、顔を見合わせて微笑み合う。そうして改めて2人は幸紀の刀を探すために作戦を練り始めた。

 

「幸紀さんは、どこかの広場に刀が刺さってるって言ってた…ここにある可能性、結構高いと思う」

 

「よし、じゃあ、探そう!」

 

 ふたりはそう言うと、あたりに敵らしきものがいないのを確認し、公園の広場に飛び出る。2人は周囲を見回した。

 

「どこにあると思う?」

 

「わかんないよそんなの…でも、そんなに目立つところじゃない気がする」

 

「じゃあ片っ端から探すか?」

 

「うーん…」

 

「お探しのものはこれかぁ!『星霊隊』!!」

 

 2人の背後から聞こえてくる、狂気に満ちた声。2人が咄嗟に振り向くと、松本が日本刀を持って掲げる。彼の周りには、松本と同じように、顔が悪魔のそれになっている、私服姿の悪魔たちがそこにいた。

 

「まずい…!」

 

「ヒヒヒ、そんなに帰りたいか?えぇ?いいぜ、帰りたいなら帰れよ!できるもんならなぁ!」

 

 松本は好き勝手に刀を振り回しながら叫ぶ。後ずさる千鶴と晴夏を眺めながら、松本は周囲にいた悪魔たちに声を張り上げた。

 

「お前ら!男には何もしなくていい!だが女は殺せ!」                                                           

 

 松本の指示を受け、悪魔たちは千鶴を目掛けて走り出す。それを聞いた千鶴は、真っ直ぐ背を向けて逃げようとしたが、いつの間にか千鶴の背後に悪魔が回り込んでおり、千鶴は背後から羽交締めにされた。

 

「いやぁっ!!」

 

「千鶴!!」

 

 すぐに状況に気がついた晴夏は、千鶴を助けに行こうとする。しかし、そんな晴夏の前に、松本が立ち塞がった。

 

「…!」

 

「私と戦うか?えぇ?晴夏ちゃん?」

 

 松本が言うと、晴夏の動きが止まり、晴夏の両腕が悪魔に押さえつけられる。何も答えない晴夏に対して、千鶴が声を上げた。

 

「ハルくん!!もうあなたしかいないの!!お願い、戦って!!」

 

「黙らせろ!!」

 

 松本は叫ぶ千鶴に対し、部下の悪魔に命令する。悪魔は、羽交締めにされた千鶴の腹に膝を叩き込む。千鶴はうめき声のようなものを上げながら、その場に倒れ込みそうになるものの、拘束されてそれも叶わなかった。

 

「千鶴…!てめぇら…!!」

 

 晴夏は一方的に暴行される千鶴の姿を見て、怒りを覚える。感情のままに暴れようとする晴夏だったが、そんな晴夏の頭を、松本は掴み上げた。

 

「おやおや!あんまり暴れるような悪い子は、お仕置きしないといけませんなぁ!!」

 

「!!やめろ!!やめろぉ!!」

 

 晴夏が絶望したような叫び声を上げる。瞬間、晴夏の頭を掴んでいる松本の手が光ったかと思うと、晴夏の体も同じように光り始める。

 

 千鶴も思わず顔を上げ、晴夏の様子を見守る。

 

 晴夏の体から光がなくなったかと思うと、彼の胸は膨らみ、背は縮んでいた。

 

「ま、まさか…」

 

 千鶴は思わず息を呑む。同時に、晴夏も目を覚まし、自分の体を見ると、絶望したような声を上げた。

 

「あ…あぁ…!!嫌だ…!嫌だ嫌だ!!また女の体に戻ったら…!!」

 

「ふふふふ…!さぁ、お仕置きの時間だよ!晴夏ちゃん!!」

 

 自分の体が女性のものに戻った晴夏が絶望するのに対し、松本は満面の笑みを浮かべる。晴夏は震えて俯き、何もできなくなった。

 

「しっかりしてハルくん!!悪魔なんて散々倒してきたでしょ!?ハルくんならできるよ!霊力でやっちゃいなよ!!」

 

「霊力ぅ?そんなもの、こっちの世界にはありませんよぉ!!」

 

「えっ…」

 

「霊力のない小娘なんて、ただのオモチャなんですよ!この意味、わかるよなぁ?晴夏ちゃん?」

 

 松本は晴夏の頭を掴み上げ、顔を上げさせて尋ねる。晴夏の表情は絶望に染まり、抵抗もできなくなっていた。

 

「そんな顔するなよ、昨日の夜はいい夢を見させてやったろう?あれが現実になるだけだ。でも、その前に、だ!」

 

 松本はそう言うと、千鶴を羽交締めにしている悪魔に指示を出す。すると、その悪魔は千鶴を無理やり跪かせ、首が見えるように頭を押さえつけた。

 頭を押さえつけられた千鶴の瞳に、松本の握る刀の切っ先が映っていた。

 

「まずはこの女の死に顔を見せつけてやろう!」

 

「!!」

 

 松本の言葉に、千鶴は必死にもがき始める。しかし、悪魔たちの腕力は強く、いくら暴れても、千鶴はその場を逃れることはできなかった。

 

「離して!!いやぁっ!!」

 

「頼む!!千鶴のことは、千鶴は殺さないでくれ!!」

 

「慰み物風情が言葉を話すんじゃない!わからせてやれ!」

 

 松本が指示をすると、晴夏を押さえつけている悪魔たちが、晴夏の服を引きちぎり始める。男性だった晴夏はブラなどつけておらず、破かれた服から晴夏の乳房がのぞいた。

 

「やめろぉっ!!やめてくれぇっ!!」

 

「ハルくん!!誰か助けてえっ!!」

 

「黙れ!!」

 

 松本はそう叫びながら、刀を千鶴の首に振り下ろした。

 

 千鶴も思わず顔を背ける。

 

 しかし、いつまで経っても、千鶴の首元に痛みは走らなかった。

 

「な、なんだとぉ?」

 

 千鶴は顔を上げる。すると、松本が刀を振り下ろそうとしているのをよそに、刀は千鶴の寸前のところで止まっていた。

 

(ど、どうなっているの?)

 

「ええい、なぜ斬れない!?」

 

「貴様ごときに扱える刀ではない。身の程を弁えろ」

 

 どこからからそんな冷徹な声が聞こえてくると、瞬間、刀は松本の手を離れ、地面に突き刺さる。そんな異様な光景に悪魔たちの動きが止まった。

 

(チャンス…!)

 

 一瞬の隙に気がついた千鶴は、悪魔たちの腕の間をすり抜け、松本にタックルをすると、両手で刀を地面から抜き、構えた。

 

「うぉらぁああ!!!」

 

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