追放された最強の悪魔剣士の復讐道中記 -幸紀と星霊隊の24人の女たち-   作:晴本吉陽

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第17話(3)裏表-結依と江美-

数分後

 木製の引き戸を開け、結依と江美は屋敷の中に入る。

 外からの光がほとんど入らない、かろうじて数メートル先がぼんやり見える程度の明るさの、木製の建物だった。

 彼女たちがゆっくり歩くたびに、床が(きし)む音が周囲に響く。徐々に見えてきた周囲の様子も、蜘蛛の巣や埃など、決して気分の良いものではなかった。

 

「…なんか、不気味なところですね…で、出ませんか?」

 

「バカ言ってんじゃないよ!外の方がヤバいに決まってんでしょ!?ここでジッとしてるのが1番だっての!」

 

 結依とサリーは言葉を交わす。それを気にせず、江美は右側にあった引き戸に向けて歩き始めた。

 

「ちょっと待ってくださいよ!」

 

 結依も慌てて江美についていく。

 江美はそれすらも特に気にせずに、その引き戸の前に立った。

 戸を開くと、暗闇の中に木製の廊下が伸びる。

 しかし、壁は大きく傷つき、廊下にあったのであろう壺などの美術品の残骸が床に散乱し、さらには乾いた血の跡が、廊下のそこらじゅうに散らばっていた。

 

「ひっ…」

 

「…」

 

 江美は無言でその血の跡に近づき、しゃがみこむと、その血を指でなぞる。わずかに彼女の指先に血がついた。

 

「わ。あんまり時間経ってませんねぇ」

 

「えっ…!じゃ、じゃあ、この血痕を作った何かが、まだこの辺りにいるってことですか…!?」

 

「そ~ですねぇ」

 

「…!逃げましょう、早くここから出ましょうよ!」

 

 いつもの表情を全く崩さない江美に対し、結依は半泣きになりながら訴える。そんな結依に対して、サリーが反論した。

 

「だからぁ!外の方がヤバいって何回言えばわかんの!?この屋敷のどっかで休める部屋を探して、そこに籠った方がいいって!絶対!」

 

「あらぁ、珍しく意見が一致しましたねぇ。殺すのは最後にしてあげます。それじゃあ、部屋を探しましょ~」

 

 江美は呑気にそういうと、薄暗い廊下の奥へと歩いていく。怯えきった結依は、その場を動こうとしなかったが、すぐにサリーが結依の尻を叩いた。

 

「ひぃっ!?」

 

「ほーら、さっさと行かんかい!アンタが動かないと私も動けねぇのよ!」

 

「…もうやだぁ…」

 

 結依は弱音を吐きながら江美の進んだ道を、目を伏せながら小走りで進んでいくのだった。

 

 廊下の突き当たりまでやってきた江美は、行き止まりになっている目の前の壁を見つめる。

 

「んー…」

 

 江美はその壁に手を当てると、肩を押し付けるようにして壁を押す。

 すると、壁はどんでん返しのように回転し、部屋のようなものが中にあった。

 

「か、隠し部屋…?」

 

 結依は暗くてまともに見えないその部屋を眺めて呟く。江美はポケットに入れていたライトで部屋を照らす。

 荒れ果て、血で汚れてこそいたが、中は椅子と机の置かれている書斎であり、敵の姿は見えなかった。

 

「とりあえずここに籠りましょうか〜。しばらくして敵がいなくなったら帰りましょ〜」

 

「…ううう…はいぃ…」

 

 江美の指示に、結依は不服そうにしながらも従い、部屋の中に入る。結依と彼女の背後に浮かび上がるサリーが部屋の中に入ると、江美も部屋の中に入り、どんでん返しになっている扉を閉めた。

 

 部屋は真っ暗になったが、部屋の中央にある電灯用のフックを見つけると、江美はそこに持っていたライトをひっかけ、部屋の中をぼんやりと照らす。

 薄暗い部屋の中、江美と結依は、部屋の中にあった高級そうな革の椅子に腰掛けた。

 

「お屋敷は全体的に和風なのに、ここだけ洋風なんですね…」

 

「それがどうしたのさ?」

 

「いや、どうしてなんだろうなって。家の中なんて、自分が1番リラックスしやすいようにすると思うんですよ。なのに、なんでわざわざ隠し部屋まで作って、インテリアまで変えたんだろうって」

 

「さぁ?私は悪魔だもん、人間の考えることなんか知らないよ」

 

 結依の言葉に、サリーは答える。しかし、すぐにその話を聞いていた江美が軽く身だしなみを整えながら話し始めた。

 

「この部屋は応接室でもあったんですよ〜。屋敷の持ち主は政治家ですからね。密会とかもここでやっていたそうですよ〜」

 

「よくご存知ですね…なんでそんなこと」

 

「そんなことより」

 

 結依が会話を続けようとすると、次の瞬間、江美はいつの間にか結依に肉薄すると、彼女の喉に針を突きつけていた。

 

「…!」

 

「あなたたちが何者なのか、教えてくださいよ〜。そして、東雲幸紀、いや、コーキという悪魔についても、ね?」

 

 江美は声のトーンこそいつも通りだったが、そこに笑顔はなかった。怯え切った結依は、震えながら慌てて話し始めた。

 

「は、話します!話しますから!わ、私は普通の大学生です!ただ、この間、悪魔に殺されかけて、その時に、そこのサリーさんに憑依されて、ふたりで一緒に生き延びてる感じなんです!」

 

「じゃあどうして『星霊隊』にいるの?サリーさんも悪魔なら、悪魔軍として人間と戦うのが普通でしょう?それが『星霊隊』にいるのは、スパイだから、じゃないんですか?えぇ?」

 

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