悟飯「ボク、秀知院に通いたいな」 作:親子孫
ペンが紙の上を走る。消しゴムが擦られると、カタカタと机が震える。生徒会室にただひとり、孫悟飯は勉強していた。文章に線を引き、彼が考える時間をとったときのみ、ペンの音は途切れ、静寂が訪れる。
ちいさな嘆息が聞こえると、よりいっそう長い静寂がやってくる。悟飯が苦慮している証だ。しかし、その無音の世界はドアが開かれることで消え去っていく。
「孫、勉強か」
ドアを開き、現れたのは白銀だった。彼は悟飯の様子を見るや、腰に手を当てながら尋ねた。悟飯がその声を耳にすると、ペンを持ったまま向き直る。白銀の顔を見ると、少し驚いたような表情を浮かべた。
「あれ、会長さん。書類整理も片付いたんで、今日出た分の宿題だけでもって思って。というか、学園長に呼び出されてたんじゃなかったんですか?」
「なんか驚いてたと思ったらそれのことか。大したことない、たんの話し合いだったよ」
「話し合いって? 学園長から直接呼び出されるなんて…」
「ああ、将来、総理大臣と最高裁判所長官のどっちなりたいかっていう……」
「ええ!? どこが大したことないんですかっ!会長さんが、まさか」
「ははは!嘘だよ孫。食いつきが良くて遊んじまった。ほんとにただの事務連絡だ」
悟飯が安堵の息をつくと、それが面白かったのか、白銀は口元を抑えて意地の悪く笑った。その様子を見た悟飯がそっぽを向くと、軽い謝罪を述べながら白銀が近付いていく。
「なんの宿題だ?」
「簡単な国語の読解問題です」
「国語か。そうそう、国語といえばなんだがな、きのう……」
話が雑談に切り替わるのを察して、そろそろ休憩したかった悟飯は教材を片付け始める。勉強の邪魔をしたかと思って白銀が止めるが、
「ちょうどいいタイミングでしたし」
と教材を纏めてカバンにしまい込んだ。時計を一瞥し、まだまだ施錠まで余裕があることを確認すると、大きく伸びをして肩の力を抜く。
「あれ?なんですこれ」
一息ついて視界が広がった悟飯に、机の上のケースが目に入った。書類に隠れて見えていなかったようである。悟飯はそのカラフルな見た目につられて、それを手にとって観察する。
カードが透明の直方体に収納されている。悟飯がケースの蓋を開けてカードを数枚取り出すと、それぞれハート、スペード、ダイヤ、クローバーの絵柄が描かれている。紛れもなく、それはトランプであった。
「トランプか。四宮が持ってきたやつだな。どうやら片付け忘れて置いていってるみたいだ」
「届けてきましょうか?」
「次にこっちに来たとき、一緒に持って帰るだろ」
白銀がトランプから興味を無くし、視線を書類の山に移すと、悟飯もトランプをケースにしまい返して、元の位置に戻した。
だが、白銀御行は見逃さない。悟飯の未練たらしい、好奇心に溢れた目を。四宮かぐやと恋愛頭脳戦(というイチャつき)を繰り広げている白銀には、会話の途中でちらちらとトランプを見たり、妙にソワソワし始めた悟飯の『トランプへの未練』を見抜くのは造作のないことだった。
「そんなに気になるか?トランプ」
「あ、いえ。別にそんな、ただ……」
「ただ、なんだ」
「………ハイ。気になります。ボク、こういうもので遊んだことがないので」
「何?遊んだことがないだって?」
悟飯が苦笑いしながらそう言うと、白銀は驚きで顔を引き攣らせた。
孫悟飯の孤独の青春が打ち破られたのは、あの半年前の日だった。言い換えると、孫悟飯の青春は半年前に始まったばかりなのだ。そんな彼にこれまでカードゲームというジャンルの娯楽に触れることがあったか。答えは否である。
荒野でサバイバルに、異星人達との死闘。平和な日には、家で勉強か、釣りや動物達のと触れ合い。買い物のために都へ行くのは母親のチチであり、弟との遊びは対決ごっこ。
山生まれ山育ちの悟飯にとって、たかがトランプでもそれは未知の娯楽。カード一枚一枚さえ手に触れるのは初めてであり、その透明のケースの中に遊園地が生まれているようなものであった。
「凄いんだな、カプセルコーポって。暇つぶしのカード遊びといえば、普通トランプだろ?相当面白いオモチャがいくらでもあるんだろうな」
「いい!? そ、そうですね……」
「じゃ、なんかやるか、トランプで」
「いいんですか!」
「俺のほうも仕事は残ってないしな。ちょうどよく暇だろ?俺たち」
カードをケースから取り出してリズムよくカードを切る白銀。手元に彼の意識が寄っている合間に、悟飯は胸を撫で下ろした。白銀の言った『普通』の言葉に反応し、速くなった鼓動をおさめるためだった。
(危ない危ない。もし田舎者だってバレたら、勉強どころじゃなくなっちゃう)
さすがの悟飯も、この秀知院という学校の性質を、だんだんと理解してきていた。
プライドも教養も高いこの学園の生徒にとって、ステータスというものは最重要。部活動、学力、そして何より家柄……外部入学など以ての外。生え抜きの生徒たちは日々敵を蹴落とし合い、カーストを上に押し上げるため邁進する。
そんな中で、悟飯が嘘つきのど田舎っぺだと知れ渡るとどうなるか。すかさずおもしろいオモチャとして弄ばれるのは、簡単に想像できる。白銀がそういったことを許すわけないのだが、そうなった時点で、心優しい悟飯が気に病むのは必定だろう。
悟飯がいじめられていなかったのは、たまたまに近かった。嫌味、からかいと称した軽い嫌がらせは偶にあったものの、人畜無害な悟飯に興味を示すものは少なく、半ば置物のような扱いを受けていただけである。(もちろん悟飯はそこらへんは分かっていない)
外部入学というものは、秀知院ではそれだけ苦しい茨の道ということだ。
それらがゆえに、隠さねばならないことが多い悟飯は辟易し続けている。そしてこのようにボロが出た瞬間、心臓が鷲掴みにされたような感覚に陥るのだ。
(ボクは勉強したかっただけなのに。ここまで変な学校だとは思わなかった。でも勉強は確実にできるようになってるんだよな)
「おし、できたぞ。しかし何すっかなー……」
「ボク、トランプの遊び方なんて分かりませんよ」
「考えが思い浮かばない時は誰かに聞きたいよな。何がしたい?藤原書記」
「え!?」「ええ───っ!なんでわかったんですかぁ!?」
ひょこりと桃色の髪がドアの手前から姿を覗かせる。おデコに可愛らしく黒のリボンをあしらった姿は、人形のようなイメージをかき立てる。
彼女は『藤原千花』。秀知院第67期生徒会の書記を担うマスコット的女子である。
彼女は普段の様子、仕草から油断されがちな存在ではあるが、しかしピアノの溢れんばかりの才能を待ち合わせ、親からの影響で習得した五カ国語を使いこなすペンタリンガルという秀知院きっての秀才。それゆえ悟飯からの覚えもよく、尊敬している人物だった。
まだ悟飯は藤原のメッキが剥がれた姿を見ていないのが実情であるが。
「いやなんでもなにも髪が普通にドアの隙間から見えてたし……」
「覗きですか!?会長の変態!」
「覗いてたのはそっちだろ」なんで俺が覗き魔の変態みたいに
やいのやいのと二人が軽い言い争いを始めると、悟飯は聞き耳を立てながら白銀の手元を見る。ソワソワによる衝動である。
視線に気付いた白銀は咳払いをして、改めて藤原に問いかける。
「まあなんだ、このトランプで何か遊ぼうと思うんだが。何かいい案はないか?」
「それですよ会長。この
藤原が顎に手を添えて思考を巡らせる。その間を白銀はトランプを切りながら待つ。考えがまとまったのか、何度か藤原が頷くと、悟飯はトランプから藤原に視線を移した。
「やはりシンプルに、ババ抜きですね」
「ババ抜き。ってなんですか?」
「説明しますねーっ」
藤原が白銀からカードを受け取り、一枚ずつディールする。途中でジョーカーの札を取り除き、悟飯と白銀に18、藤原に17のカードが配分されると、カードを自分だけ見るように藤原は指示する。
「それでは、数字が同じカードだけを捨ててってくださいね」
「数字が同じって、このハートの8とクローバーの8ってことですか?」
「そういうことです!手元のペアを全部捨てたらゲームスタートですよっ」
白銀と藤原が手早く二枚ずつ手札から捨てていくのを見様見真似で悟飯は同じ操作をしていく。6と9を捨てようとしてしまうトラブルこそあったものの、悟飯の手元には十枚、白銀、藤原はそれぞれ八枚、十一枚のカードが残った。
「それじゃーまずは……会長からどうぞ」
「なるほど、隣の人からカードを取ってってペアを作ってくゲームなんですね!あ、ジョーカーはペアにならないから、それを最後まで待ってた人が負けるってことですか?」
「そういうことだ……ほい、10のペアだ。次は藤原書記が孫の手札から引くってわけだな」
白銀が引いたカードと手札の一枚をまとめて捨てる。要領のいい悟飯は、なんとなくこの時点でババ抜きの要点を掴もうとしていた。
(なるほど、運じゃなくてテクニックが必要な心理戦か。観察眼とかポーカーフェイスも必要そうだな)
藤原にカードを抜き取られたあと、白銀のカードを引きながら悟飯はそう考えた。手札を改めて見直すと、悟飯は心理的余裕を感じながら戦略を考える。
白銀が藤原から、藤原が悟飯からカードを抜き取り、ふたたび悟飯のターン。白銀と対面した悟飯は、彼の仕草を徹底的に観察し始める。
「ほう、もうババ抜きを理解しはじめたようだな。しかし、どれだけ俺のことを見てもヒントは出てこないぞ」
「すみません、考え事してただけでよく分かんないですね」
「シラを切るか。意外とそういうところは図太いんだな、孫」
「もーはやく引いてくださいよぉ孫くん」
悟飯の心理的余裕……それは白銀にあることを気付かせることとなった。ババがあるかどうか注視するということは裏を返せば自分にはババがないということ。
普段の悟飯ならすぐこのことに気付いただろうが、余裕からの油断とトランプのワクワクが仇となり失態を犯した。白銀はそう考える。いくら悟飯の初めてのトランプだからといって負けてやるつもりは、毛頭なかった。
(となるとババは藤原か。そうと分かれば、あとは藤原の動きを読み取ればいいだけだな)
白銀は藤原の手札にひとつひとつ触れながら、反応を吟味していく。
「どうしたんですか〜そんなに見つめて。照れちゃいますよ」
「おっ、ここのカードの時だけ顔が強張ったか?」
「ブラフですか?私のところにはジョーカーはありませんよ会長」
「それこそブラフだな」
白銀はこうすることで、自分はジョーカーを持っていないアピールをする。これは単純な配慮、白銀の優しさであった。こうすることで流石の悟飯も藤原にババがあると気付くに違いないと踏んで、あえてやった行動だった。
全てのカードの反応を見たあと、まずないだろうと思った左から二番目のカードを引き抜く。手札とそれでペアができ、それを捨てると藤原の引く番がやってくる。
(あんな行動をするなんて会長……自分にジョーカーがないって言ってるようなもんですけど。会長がそんなミスをするとは思えませんねー。だったら、逆に会長がジョーカーを持ってるって考えた方がよさそうですね!)
しかし藤原の手札にも、白銀の手札にもジョーカーの存在はない!
(ジョーカーはボクが持っちゃってるから、いつババを引くかドキドキしなくてラクだね。どうやら二人とも勘違いしてるみたいだし)
心理的余裕というのは『ババがない』のではなく『ババがある』こと。白銀と藤原方が油断していたのだ。そこを悟飯は理解し、最初から仕掛けた。
おかげで両者は意味のない腹の探り合いを始める。内心悟飯は、ここまで上手く作戦が決まってほくそ笑んでいた。ババ抜きの楽しさを、悟飯が理解した瞬間であった。
「さっ孫くん、私引きますねー」
(あっババ……)
そして藤原は悟飯の反応を見るまでもなく、油断しきったままジョーカーを引いてしまう。ここで悟飯の反応を見ると、カードゲーム初の悟飯の反応はいかに分かりやすいものだったか想像に難くないものだったのだが。
当然藤原に襲いかかる衝撃は計り知れないものとなる。
(なんでババを孫くんが!?)
「会長さんカード……よいしょ。うん、一ペア減ったぞ」
(? どうした藤原の反応。何か動揺しているのか? ……いいやそれはおかしいな。またブラフか、可愛らしいことをする)
凝り固まった思考というものは恐ろしいもので、白銀はその反応がわざとにしか思えなかった。藤原にジョーカーが元からあったという前提のもと、白銀は判断を誤る。
そして藤原は表情以外の動揺を隠せず、引き取ったカードをシャッフルせずそのまま手札に入れた。それどころか、他のカードと少し高い位置に置いてしまったのだ。
(そうやってカードを目立たせるか。しかし残念だな藤原、それがジョーカーでないことはすでに決定づけられているんだよ!!)
だが白銀は止まらない。ここまで来たらもう人間は都合のいい解釈をするようになる生き物なのである!手札にババがあるという仮定なら引いて直後のそのカードは当然にババではない。その思考の元にカードを引いた結果が……
(あれ────!?)
白銀痛恨の引き。これは効いたか、藤原目線から見ても動揺しているように見えた。同時に悟飯はジョーカーが白銀に移ったことを察する。
(となると。今ボクは会長さんにだけ気をつければいいってことだね)
見事に悟飯に場を引っ掻き回されながら、ゲームは進んでいく。白銀の手札からババは動かず、順調にペアを作っていきお互いの手札の枚数が減っていく。
悟飯:一枚 白銀:四枚 藤原:二枚 の状況。悟飯が白銀からカードを引く番となる。流石にカード枚数も減ってきて、ババを引く危険性は極めて高いが、悟飯は今か次の番でアガるとなんとなく感じていた。
(おかしい……なんでこんなにババ回避が上手いんだ孫)
(確かに会長さん。ポーカーフェイスが上手だけど、普段の知り合いの気難しい人たちに比べたら、分かりやすいね)
悟飯が鈍感なのは、恋愛感情や場の雰囲気のような、いままで触れる機会がなかったものばかり。それ以外の感情の読み取りは、他の追随を許さないほど敏感なのだった。
それもそのはずである。女手ひとりで男児二人を育てる母の手伝いや、戦いの師にサイヤ人の王子等々との付き合いをこなしてきた悟飯の経験は意外なこの場で生きていた。
(その手をかけてるやつだ、丁寧に引きやすい利き手側に置いてやったから引け!)
「やっぱり隣のにしますねーっ。お!アガりました〜。楽しいですね、ババ抜き」
白銀に広がる絶望感。意外に負けず嫌いなところがある白銀にとって、初心者に負けるというものは中々堪える。だからこそ、ここは余裕を持って自分を誤魔化そうとした。
「そ、そうだろ?じゃあ、孫もババ抜きのルールを分かったようだし、一旦仕切り直して」
「そうはいきませんよ会長。まだ『負け』が決まってないです」
(藤原……お前!あくまでも勝った状態でいたいわけか……!!)
悔しくて堪らないのは、藤原も同じことであった。TG部に席を置きながら、初心者に負けたうえ、それを練習だったかのようにされたのなら、屈辱にほかならない。
有利なのは依然藤原、なにせジョーカーは白銀の手元にあるのである。お互いポーカーフェイスを保つ余裕がなく実力は全くのイーブン。ここで勝っておかなければ気が済まなかった。
「……どうにでもなれ!来いよ藤原!」
白銀が藤原から引き、当然ペアとなり白銀残り二枚。ここで藤原がジョーカーではない方を引けば白銀の負け。藤原がジョーカーを引けば、白銀には勝つ自信があった。どこからともなく自信が湧いてきていた!
「えいっ。わあああああ!なんでですかぁ────っ!!」
「よし!よし!いいぞっ」
(なんか、負けを争ってるのって、なんだかちょっぴり見てると楽しいな。あんまりこういうこと思わない方がいい気がするけど)
その様子を見ていた悟飯はあまり良くない愉悦という感情を抱いていた。白銀と藤原はそんな悟飯に目もくれず、息を荒くしてトランプに向き合う。
初心者に負けたというダメージを軽減するために、プライドがぶつかり合う。藤原は引いたジョーカーを背中で隠しながら混ぜて、白銀に見せる。
「さあ会長……ここで私はババを引かせて見せますよ」
「いいや俺は勝つ。ここで勝つのが……白銀御行だああああ!!」
◆
「いよっしゃああああ────っ見たか藤原!ここで勝つのが生徒会長たる所以なんだよ!!」
「うるさい!初心者に負けたくせにー!!」
「はん、その初心者に負けた奴に負けたのは誰だったかな?」
「もおおおお会長のイジワル!さいてー!覗き魔!」
「いやだから覗きはしてねーよ!!」
「ふ、二人とも落ち着いて下さい」
「元はと言えば孫くんのせいですからね!?」
生徒会室が絶叫に包まれ、タジタジと悟飯が慌てる。白銀は藤原からババではない方を引いてみせ、嬉しさのあまり立ち上がり叫んでしまった。
そして敗北者の藤原は、悔しさのまま男子二人を罵る。しかしその罵倒の言葉にはキレがなく、悟飯も白銀も大したダメージはなかった。何より、勝ったという事実があるからでもある。
「じゃあ、もう一回やりますか」
「え」「ええっ」
悟飯のその言葉が出るまでは、その馬鹿騒ぎのムードが続いた。
途端に静まる生徒会室。悟飯としては、一回では物足りなかったためまだまだやりたかったために、何気なく口にした一言だったが、それは二人を戦慄させるには充分であった。
二人はこのトランプが意外にもプライドをかけるものと理解し、もうお腹がいっぱいだった。しかし純粋な悟飯は、二人に再びのゲームに誘う。真っ直ぐな目をしている悟飯。自分たちからやろうと誘ったので、真っ向から断るのも気が引ける。
先に動いたのは藤原だった。
「……きゅ、急用を思い出したので、か、帰りますね」
「お、俺も、最高裁長官にならなきゃいけないんでな、あ、後でな孫!」
「もう会長さんまで。それは冗談だって言ってたじゃないですか」
藤原を追おうとした白銀を、悟飯が笑いながら制する。その隙に藤原が生徒会室から飛び出す。
白銀は藤原に手を差し伸べるも、それを一瞥することさえなく、背中が小さく遠のいていく。何が起こっているか知らない悟飯は、首を傾げならトランプをひと束にまとめ直す。
(待ってくれ藤原!も、もう孫に負けたくない!俺を置いていかないでくれ──────!!)
そんな白銀の悲痛な叫びに呼応したのか。藤原が飛び出して行った直後、入れ替わりとなって生徒会室の扉を叩く者がいた。
「藤原さんどうかしたんですか?さっき飛び出していきましたけど」
『四宮かぐや』──生徒会副会長その人である。紹介を行いたいところだが、それまた次の登場にお預けするとして、残念なことに四宮は悟飯の手の中にあるトランプの束を目にしてしまった。
「孫くん、それはトランプ……あ。それわたしの……」
「四宮さんも一緒にやりませんかトランプ!会長さんも一緒に」
「え、ええ。別に構いませんが」
(やめろ四宮!それは地獄への入り口だぞ!)
白銀は必死に目線で四宮に訴えかけるも、努力虚しく、四宮はトランプをすることを承諾してしまう。白銀は言い出しっぺの手前、断るという行動ができなかったため四宮が最後の希望だったのだが、それも今打ち壊された。
その日の生徒会室は絶叫が絶えなかった。
本日の勝敗 孫悟飯の勝利