超合体 ランシェルファー   作:あずきなん

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 お久しぶりです、2話からだいぶ間ができてしまいました。
考えていた以上に小説って難しいものだと実感しておりますが
ようやく納得がいくものができて達成感はあります。


え?4話ですか?

ふふっ、いつになるんですかね。


第3話 来いッ――ランシェルファー!!

#第3話『来いッ――ランシェルファー』

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###1.暗躍、接・続

 

 

地球の大気を遥かに臨む、静寂の宇宙空間。

 

 そこに、巨大な影が浮かんでいた。無骨で無数のセンサーと機銃が取り付けられている強襲母艦である。

 

 艦橋のメインスクリーンには、先の戦闘で現れた白い機体――ランシェルファーの映像が繰り返し再生されていた。

 

「……まさか、こんなところで巡り合うとはな」

 

 玉座のような指揮官席に深く腰掛け、一人の男が呟いた。

白銀の長髪を揺らし、赤い軍服を着こなすその男は、興味深そうにモニターの光を見つめている。

 

「パイロットの脳波に感応して武装を生成……。例の『オーバーテクノロジー』を孕んだ造物――」

 

 男は指先で席にあるコンソールをなぞる。

 

 映像の一端―――

 

 スクリーンに、ズームアップされた人物―――七瀬達輝の顔が表示された。

 

「ただの民間人が、易々と扱える代物ではあるまいに」

 

 軽く後ろに向き呟く。

 

「貴殿はどう見る?ドクター塚智(ツカチ)」

 

 男が見定めるのは白衣と手袋で身を包むやや長身の人物。

 

 ぱっと見は何かの研究者の様に窺えるが一点、異様とも言える特徴があった。

 

 それは頭部、顎先から後頭部を覆われ

目に相当する位置が薄いブルーのライトで光る灰色のマスクを被っていること。

 

「………あまり舐めて掛かるのは推奨できない」

「存じていると思うが、何しろあれは“私が開発したのだからね”」

 

 男性とも女性とも判断できない電子的な声がその仮面から発せられる。

 

「ふんっ、自慢をしているのであれば自重することだな、個々の過度な主張は我々に不必要なもの」

「“この次元”を含め、我々は、一つに統合されるのだからな」

 

 男は冷徹な目でそう言い放ち前に向き直る。

 

「これは失礼したね、指揮官殿。さすがの私も“自己調整”は遠慮したいものだ」

 

 仮面の上からは“感情のムラ”すら感じさせない。

 

 白衣の人物、塚智はそう言い放つと艦橋室を出ていくのだった。

 

「成り上がりの研究者風情が……」

 

 白衣を尻目に男は立ち上がり、目の前に広がる青い惑星を見下ろす。

 

 

「あの機体……『ランシェルファー』は我々の計画における障害である」

 

「バルドーを8機回せ、奴をあぶり出す!」

 

 彼の冷徹な命令が艦橋に響く。

 

---

 

 

###2.彼女の名前、採用!

 

「ようこそ、喫茶《R》へ」

 

 寝癖のついた頭で、満面の笑みを浮かべる達輝。

 あまりに元気なその声に、ベッドで目を覚ました少女はぱちくりと目を瞬かせた。

 

状況は飲み込めていないようだ。

 

「あ、えっと……あなた……は?」

 

「俺は七瀬達輝。きみ、公園の近くで倒れてたんだよ。覚えてる?」

 

 達輝の言葉に、少女は自身の過去を探る、と同時に眼球が移動できる範囲を小刻みに動き出した。

白色の機体、白い閃光、黄金の粒子、そして激しい爆発音――断片的な光景が脳裏をよぎりる。

 

 それらは次第に連り揃うパズルピースの様に記憶が形となっていき一連の流れで思い出す。

 

(そうだ、私…私は任務で作戦エリアの制圧を命じられて!)

 

 

 

「い、いえ……なにも……思い出せません………」

 

「記憶喪失ってやつか……。まあ、無理すんなって! とりあえず腹ごしらえだ! 腹が減っては戦はできぬ、だろ?」

 

「いやー!! よりにもよって王道っぽいシチュきたー!! これはもう定番すぎて逆に新鮮さすら感じるね!!」

 

「え、あ、あの……その、大声はちょっと……」

 

「ごめんごめん! とりあえず水、いやおかゆ? いやまずプラモ見る?好きかな? ……あ、それは後にしよう!」

 

「はい…プラモデルは、いい……です……」

 

(なんでプラモって単語が即出るの……)

 

 顔を逸らしながら少女――「茅弥(カヤ)」は思った。

 

 ――この人、ちょっと変。

 ――でも、なんだか悪い人では.............ない?

 

 

 __________________________________________________

 

 

 早朝、

 

 

 店の準備はあっという間に終わらせ…………

 

 達輝は先刻のありさまを健悟に報告する。

 

 

「コホン。えー、それでは?朝礼ですっ」

 

 

「えー、彼女は記憶を失ってるそうです。たぶん」

 

「“たぶん”かよ」

 

「細けぇこたぁいいんだよ。とりあえず今は保護しとく! モデル店員として!」

 

「人を落としモノ扱いすんな……」

 

 

 茅弥はソファの隅で、おとなしくしていた。

 

 汚れた制服の代わりに、黒いTシャツを借りている。

真ん中に“R”の文字を雑に〇で囲ったマーク、店のロゴだった。

 

(ぶかぶかだ……)

 

「……えっと、……何か、お手伝い、します……!」

 

「おっ、働く気あるの!? もううちの従業員確定じゃん! 名札作るか!? “謎の美少女(仮)”とかで!」

 

「な、謎の美少女はやめてくださいっ……!」

 

 

「おい達輝、俺は賛成してないぞ!君も君だ!」

 

 健悟は暴走しかけている健悟の話を遮り、少女に叱りつけるように問いかけた。

 

「本当なら然るべき場所で身元を調べて………君は自分が誰か分からなくても不安にならないのか!」

 

「ま、まあまあ健悟ちゃんよ………そこまで怒らなくっても………………ははっ…」

 

「お前は無責任すぎるんだよ!倒れてたからってここまで運んできて!警察か避難所に預けようとは考えなかったのか!」

 

「ふぇぇ~だって一番近かったのがうちだったんだもんー!しょうがないじゃーん!ぐったりしてんだもん!」

 

 達輝は健悟の迫力に押されてか、目も合わせられず横を向きながら弁明した。

 

「そういうところをどうにかしろって!いつも言ってるだろ!」

 

「ああ~~~!だってだってぇ!」

 

「この前だって町内会の催しだからってコーヒー無料券を大量に配ったり!商品のプラモをタダで近所に配りやがったり!」

 

「げっ、急に蒸し返すなよ!?」

 

「挙句ロボットに乗って戦闘しただぁ!お前…いい加減に………」

 

 

「…ぁやです………!」

 

「へっ?」「ん?」

 

「わ、私!名前……茅弥です、桐野茅弥って言います!」

 

 

 突然の少女の名乗りに先ほどまで怒鳴り上げていたはずの健悟は黙ってしまった。

 

  (あれ!なんでわたし名前言っちゃったの!?)

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 数秒、店内には車の走行音だけが続き――

その静寂を破ったのは健悟だった。

 

「はぁ、もう疲れたっ」

 

 健悟はそうつぶやくと席を立つ。

 

「……分かった、茅弥ちゃんだな。今うちの制服と名札、持ってくるから」

 

「へっ?」

 

「あっ、お、お願いします!」

 

「へっ?」

 

 

 状況についていけていない達輝をよそに健悟はスタッフルームに向かっていく。

 

 

(まさか、許されたのか)

 

 が、一度足を止める。

 

「おい達輝」

 

 急に名前を呼ばれ、体が一瞬上下に動く。

 

「ふっひゃぁい!」

 

 健悟は目を細める。

 

「お前、店長なんだから。従業員の管理くらいは責任持てよな」

 

 そう告げると早々に厨房へ入っていく。

 

 

 ――あ、焦ったぁ――と言わんばかりに冷や汗をかいていた達輝は気を取り直そうと少女、桐野茅弥に振り向きなった。

 

 しかし彼女は予想していたよりもなぜか驚愕の表情を浮かべこちらを凝視する。

 

 

「えっ?どうしっ――」

 

 

「あなたがここの店長さん……なんですか!?」

 

 

「そう………だけど……?」

 

 

 

 

 

   「「……え?」」

 

 

 

 

---

 

 

###3.届け物は、起動キー

 

 

 その日の昼下がり。

 

 茅弥は店のスタッフとして制服に着替えていた。

 

 

 新品の白いワイシャツ。

 まだ馴染まない生地が、彼女の動きにわずかな違和感を残す。

 

 膝上までのスカート。茶色のタイツ。

 ヒールが床に当たるたび、コツン、と小さな音が響いた。

 

 皿を洗う手元を見つめながら、茅弥はわずかに眉を寄せる。

 

(……本当に、これでいいの?)

 

 ほんの少し前まで戦場にいた自分

 今ここで働こうとしている自分

 

 その落差が、胸の奥に引っかかっていた。

 

 だが――

 

 誰が見ても分かるくらい、“店員”としての格好は完成していた。

 

 

 なお余談も余談だが、なぜ男性スタッフしかいなかったはずの喫茶《R》に女性用の制服があるのか。

それは例の店長が「DX受付嬢セット!」と称して予めサイズ別で用意していたのである。

 

 

 その後茅弥は健悟から接客について軽い説明を受けた後、

厨房にて皿洗いをしていたのだった。

 

 

 カウンターでは達輝がプラモデルの説明書を広げ、

いつも通り悦に入っていた。

 

 その“いつも通り”が、店内の平和を保っている。

 

 ――はずだった。

 

 

 カラン、とドアベルが鳴る。

 

「いらっしゃいま――」

 

 と言いかけていた口が止まる。

 

 そこに立っていたのは、先日、問答無用で自分をコクピットから蹴り出した少女――祥鳳彩音だったからだ。

 

 そして、その隣には、ふわふわとした雰囲気の、彩音とは対照的な女性がにこやかに立っていた。

 

 二人は黒いスーツに身を包んでおり、傍から見たら怪しいとしか言いようがない。

 

 

「やっほー! ここが噂の喫茶《R》だね! ん~いい匂い~!」

「お姉ちゃん! はしゃがないで!」

 

 腕を組み、不機嫌そうな顔で店内を見回す彩音。達輝と目が合うと、フン、とそっぽを向いた。

 

「あ、あんたはあの時の……!」

 

 そういいながらあの言葉を思い出す。

 

 

  ――――(普通なら銃殺なのよ?)――――

 

 

  (はうあぁぁぁー!)

 

 達輝の顔は青ざめ、震え始めてしまった。

 

「あがががが……」

「どっドウゾオイデナサイマシタオジョウサマガタタタタタぁ」

 

「はぁ?」

 

「あー七瀬達輝くんだね? 初めまして! 私は祥鳳幸穂。妹の彩音には昨日あったよね?」

 

「ドウモトウテンヲドウゾゴヒイキニ」

 

「あーっ、緊張しないで。別にしっちゃかめっちゃボロボロ~にしようとなんて思ってなから」

 

 そういいながらまだ体が振動している男の前に近づきつま先立ちしながら話す。

 

「結構身長高いねー、178くらい?」

 

 

 幸穂と名乗った女性は、人懐っこい笑みを浮かべると、カウンターに小さなアタッシェケースを置いた。

 

「実は君に、お届け物があってね」

 

 パチン、と留め具を外してケースを開ける。中には、黒光りするグリップ状のデバイスが五つ、綺麗に収められていた。

 

 その一つを幸穂は手に取り、達輝に差し出す。

 

「これは『ライズグリッパー』。君がこの前の戦いで無断で乗った……ううん、君を選んだ機体、『ランシェルファー』を起動するための“鍵”だよ」

 

「か、鍵……? これが?あれの?」

 

 差し出された「それ」を、達輝はまじまじと見つめる。

 

 人差し指から小指までがかかる位置には同一のキーが四つ、本体上部には赤いボタンがあった。

 

 それを握ってみると、手にフィットするような実に馴染む形をしていた。

 

 よくよく思い出せば(そういやレバーの形、こんなのだったな)と例の機体との共通点に気づく。

 

「な、なんで俺に……」

 

「輪廻転生炉を起動させた、理由はそれだけで十分だよ。あの炉心はね、パイロットを選ぶんだー。15年間、彩音ちゃんにも応えなかったんだよ」

 

「お姉ちゃん! 余計なことまで……!」

 

 彩音の抗議の声を、幸穂は「まあまあ」と笑顔でいなす。

 

「ランシェルファーは今から君の機体。私たちが開発したサポートメカも、あなたのおかげで完成間近。来るべき戦いのために

今のところ君の力が必要なんだよ」

 

 

 先程とは打って変わって幸穂の真剣な眼差しに、達輝はゴクリと唾をのんだ。

 

 ロボットが好きなただの喫茶店店長だったはずの自分が、『恐らく』世界の運命を左右する戦いに巻き込まれようとしている。

 

 

その、あまりに非現実的な状況に…………

 

 

 

  ごめん、ちょっと楽しんでた―――

 

 

---

 

 

###4.敵と決意の「再来」

 

 

 その瞬間だった。

 

 ウウウウウウウウ――――ッ!

 

 耳をつんざくような警報が街に鳴り響く。

 

 健悟が慌ててテレビをつけると、臨時ニュースが緊迫した状況を伝えていた。

 

《――緊急警報! 市街地上空に、所属不明の大型機が複数出現! 現在、防衛隊が迎撃中ですが――》

 

 窓の外に目をやると、空には見覚えのある黒い機影が舞っていた。前回よりも、数が多い。

 

 (まさか仲間が……私を…違う、目的はあの機体……!)

 

「“世界間外統一連合”……! もう来たっていうの!?」

 

 彩音が叫ぶ。

 

「彩音ちゃん、ガルーダーを!」

 

「言われなくても!」

 

 彩音はアタッシュケースにあるライズグリッパーを一つ取り出し、店の外へ飛び出す。

 

 外では十数機に及ぶ黒い機体、“バルドー”が街を破壊していた。

 

 両腕をライフル型の銃身に改造された特殊仕様、隊列を組みビルなどの建物に照射していた。

 

 

 その光景に怒りを露わにした少女は右手に掴んだそれを構え、上部に設けられた長方形型の赤いスイッチ、スタンバイトリガーを押す。

 

 四つあるキー(セレクションキー)の内、上から二番目。

中指に当たるキーを深く押し込む。

 

  ≪LADY≫

 

 女性の声に近い電子音声が鳴る。

 

 「ガルーダー!GO!」

 

 頬にグリッパーをを近づけ、叫ぶ。

 

 それと同時に上空に浮かぶメンテナンスドッグ「オオアマツ」では大型のハッチが開き始めていた。

 

 艦内―――

 

 

 いくつかの機体が収納されたハンガー内の一機、ぱっと見は猛禽類、鳥のようなデザインをし機体色は桃色、嘴や爪に値する箇所は金色で塗られている。

その機体の天井にある赤色のランプが緑に切り替わった。

 

 すると機体を載せたベーススタンドのロックが解除。

移動し始め、自動でカタパルトまで運び込まれる。

 

 ハッチが開き切り、カタパルト内の照明が一斉に白から赤に切り替わる。

所定の位置にセットされるとカタパルト底面に青い電流が流れ始めると同時に射出される。

 

 次の瞬間、轟音と共にガルーダーがその翼を広げ、桃色の機体が空を裂くように飛び出した。

 

 「ガルーダー、発進確認。自律飛行モードへ移行!」

 

 メンテナンスドッグのオペレータが報告するより早く、猛禽の名を冠した支援メカは旋回を始め、ビル風に煽られる煙と塵を突き抜けて市街地上空へと降下していく。

 

 その両翼は空を切り裂くように広がり、背部の制御スラスターからは尾を引くような青い閃光が走る。

嘴にあたる先端部は複数のセンサーとバランサーを備え、目標座標への微調整を可能にしていた。

 

 「来たわね……!」

 

 彩音は建物の陰から顔を上げ、真上を通過する桃色の影を見上げて不敵に笑う。

 

 ライズグリッパーが淡く脈動するように光り始め、それに呼応するようにガルーダーの両目のセンサーが黄色く点滅した。

 

 次の瞬間、旋回したガルーダーは街路に向かって急降下。

 

 翼をすぼめて風を切り裂きながら、彼女の元に向かうとともに通り過ぎ、そこに彩音の姿は無かった。

彼女は機体が来るのと同時に既に搭乗していたのだ。

 

 シートに勢いよく座り込むと同時にライズグリッパーを右側面下にあるソケットに接続、ガルーダーの鋭い瞳に光が灯った。

 

 彩音は勢いよく操縦用レバーとなったグリッパーと反対にあるレバーを前に押し出し、速力を上げる。

 

 「さぁ――派手にやってやるわよ!」

 

 砲声と煙が立ち込める街へ向けて、少女とガルーダーは飛び出すのだった。

 

 __________________________________________________

 

 

 

 健悟は茅弥を庇うように厨房の奥へ下がらせる。

 

 そんな中、彼は……達輝は、目の前のライズグリッパーと窓の外で破壊されていく街並みを、ただ見比べるばかり。

 

「怖い?」

 

 幸穂が静かに問いかける。

 

「……当たり、前だろ……」

 

 

 

 いや、全然嘘である。

 

 本当は今すぐにでも「あれ」に乗り込みたいくらいこの男はとてもうずうずしているだ。

しかし、周りの雰囲気に勝てず自らの欲望をどうにか隠しているのであった。

 

 

 

「でも、君は逃げなかった。あの時、機体に向かって走った」

「ランシェルファーに乗って、敵に立ち向かったんだよ」

 

「…………」

 

「私は君に期待してる。別に……それに応えてほしい訳じゃなんだけど、ただ―――」

「ただ、後悔だけは、してほしくないの……!」

 

 その言葉に

 

 ――自分の行きつけの模型屋を、この喫茶《R》を、自分の「好き」が詰まったこの日常だけは守りたい――

 

 ――あと早くランシェルファーに乗りたい――

 

 

 達輝の目に、迷いは無い。

むしろあって欲しい程だが。

 

彼は差し出されたランシェルファー用のライズグリッパーを、強く、強く握りしめた。

 

(行くなら今だな!)

 

「健悟! 茅弥を頼む!」

 

「っ!?……達輝ぃぃー!!」

 

 親友の心配そうな声を背に、達輝は店の外へ駆け出す。

 

 

 空を見上げ、ライズグリッパーを天に掲げた。

 

 握りしめたグリップの上部にある起動ボタンを親指で押し込み、人差し指部分のキーに力を込める。

 

  ≪LADY≫

 

 脳裏に浮かぶのは、あの蒼白の姿。

 

 腹の、心の底から、その名を激しく叫ぶ。

 

 

 

     「来いッ――ランシェルファー!!」

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