とある少年の大地結晶【アースクリスタル】 作:えりー
「……ぇ…葛城?愛穂、今葛城って…⁉︎」
「誰だ、その葛城ってのは」
芳川は驚き、一方通行は首を傾げた
「昔の友人じゃんよ…。その葛城の手帳じゃん」
「……………その手帳にはなんて書いてあるの?」
芳川は手帳を見つめる
黄泉川はテーブルに手帳を置き、開いた
それを芳川と一方通行は取り囲むように見る
「手帳には、日記みたいに書かれていたじゃんよ…。桔梗、一方通行」
空気が変わった
芳川と一方通行は顔を強める
「子供に見せるのもどうかと思うじゃんが、もう何も言えない。だからこれだけは守ってほしい。ここからは先は他言無用…。誰にも話しちゃ駄目じゃんよ。特に紫苑には…」
「分かったわ」
「………あァ」
一方通行は一瞬眉を顰めたが、追求はせずまた手帳に視線を落とした
「……じゃあ、行くじゃんよ」
そして黄泉川はページを開いた__________
俺は大地震が起きたという街に行った
そこはもう街ではなかった
人の声もせず、ただ鉄臭い匂いが漂っていた
俺は奥へ行った
生存者がいると信じて
いた
生存者がいた
しかも子供だ
……だが俺は気づいた
その少年が真っ赤である事を
べっとりとついた真っ赤な液体
誰か、と少年が泣いている
見てられない
俺は声をかけた
少年は驚いたように顔を上げた
だが今度はこっちが驚いた
その少年の眼が真っ赤だった
何かが入り混じったような眼だった
そして、その少年に光はなく、絶望しか映し出されてなかった
俺は慣れない口調で話した
そして俺は確信した
これはこの少年がやった、と
決めつけたが、こればかりは俺は引き下がれない
何故なら、生存者が少年一人しかいないからだ
これはおかしい
そして次に、これは能力の仕業ではないか?と考えた
それなら恐ろしい事だ。これは世界を滅せられる程の力と俺は直感した
俺は少年を学園都市に誘った
少年は行くと答えた
俺は安心した。こんな大惨事を引き起こした元凶でもまだ子供
こんな子供がこんな所にいたら、一生トラウマになってしまう
だから、少しでも少年の柱になるように俺は支えよう
俺は少年の名前を聞いた。女っぽい名前だったが本人は気に入っていると少し怒り出した
やはりまだ子供だな。と俺は再確認した
その少年の名は
南雲 紫苑
「………は?」
一方通行の口から間抜けな声が出た
「もしかして、あれは自然災害ではなかったの⁉︎」
「そうじゃんよ。私も怪しいとは思っていたが……紫苑だとは思わなかったじゃんよ」
「……じゃあ、あのガキの能力は何だってンだ。自然災害に見間違える能力となると……」
「……実は私も良く分からないじゃんよ。読んだは読んだけど…」
「だから私に相談を?」
「……まぁ、そうじゃんよ」
そして黄泉川は次のページを開いた__________
紫苑の能力測定が行われた
まずは紫苑の力を知らなければ、と早急に手配した
だが、俺は予想の斜め上を行く
紫苑の様子がおかしくなり、その後は限界数値を軽々と超えていた
止めなければ、と俺は本気で思い、手荒だが気絶させて止めらせた
もし続いていたら………ゾッとした
そして眼を覚ました紫苑にキッパリと言い、紫苑の決意も聞いた
あの時の絶望の眼はもうなかった
よかった。純粋にそう思った
そして俺は紫苑の能力に名前を付ける事にした
そして紫苑の能力の名は
大地結晶【アースクリスタル】
紫苑はとても喜んでくれた。良かった
そして、一瞬だが紫苑の顔が微笑んだような…気がした
この子の笑顔を取り戻す。そう決意した
「…………」
「大地……なる程な」
「次、行くじゃんよ」
今日は紫苑の能力を制御する為に外に出た
試しに紫苑にやって貰ったが、体力の限界で終わってしまった
という訳で体力作りが始まった
と言っても走るだけだが
紫苑は思いつめたような顔をしていた
どうやらまだ悩んでいるようだ
俺は大丈夫だ、と言った
……紫苑は大丈夫なのだろうか
「ここからは成長日記みたいなものね」
「面倒だ。飛ばせ」
「……分かったじゃんよ」
そしてペラペラとページをめくり、重要なページに着いた所で手を止める
「ここまでの質問は?」
「………まだ言いわ」
「…………」
無言は肯定と黄泉川は受け止め、次のページを開いた
だが次のページは少し変だった
紫苑が危ない
「………?」
疑問に思ったのか、それともまだ読んでないのか、芳川と一方通行と一緒に黄泉川も首を傾げた
そしてその一文は乱雑であり、一ページ丸々使われていた
そしてページをめくる
紫苑がいない
もしかして、あいつにあったのか?
まずい、やめろ紫苑。そいつに近づくな
そいつは人の皮を 被った
おね がい だ
どのページも乱雑に書かれていた
これでこの時、何か合ったと三人は推測した
そして次のページは
恐らくこれが最後になる
これを記すのももうないだろう
だけど
これを誰かが見てくれれば幸いだ
お願いだ あいつを
紫苑を
恐らくあいつはまた一人になる
俺は恐らく助からない
だ か しお ひと
文字が所々霞んでいて読めない所がある
め もうろ だれ
紫苑
かく ごめ な
じつ もう一 まえ あ
その は
__________
「…?」
「………」
「…これで、終わりじゃんよ」
黄泉川はパタンと手帳を閉じた
「オイ、最後は何だ?」
「私も分からない。滲んでいた。だけど、その前の文は解読出来たじゃんよ」
「‼︎…お願い、見せて」
「待つじゃんよ。今書く」
そして黄泉川は紙とペンを持って書き始めた
『だから紫苑を一人にさせないでくれ
目が朦朧としてきた。誰か
紫苑
隠しててごめんな
実はもう一つ名前があった
その名は』
「………これだけじゃんよ」
「……………」
芳川はそう、と言い
「愛穂、この手帳借りていい?考えるから」
「良いじゃんよ」
「………………」
そうして芳川は手帳を持って部屋に戻っていった
「………一方通行も、ちゃんと寝るじゃんよ」
そう言って黄泉川も部屋に戻っていった
一方通行は一人で考えていた
葛城という男
大地結晶
紫苑の事
そしてもう一つの名前の事
(…………念の為、覚えておくか)
一方通行は気になるが夜は夜、だから寝て明日考えようと部屋に戻った
その時、一方通行は一瞬窓の外を見たが、視線を外して部屋に戻っていった
「……おや?これは危機一髪ってか?たっはー危ねぇ危ねぇ」
一人のガサツみたいな男がカリカリと頭を掻き、ある所を見つめた
それは、黄泉川達が住んでいるマンション
「やっぱ第一位は勘がいいなぁ。まぁ別にいいけどな」
そんな男に、一人の男が近づいた
「こんな所にいやがったか」
「なんだ、悪いか?」
「いや、別に」
「何か用か?」
そして近づいた男は携帯端末を見せ
「”仕事”だ。手伝え」
「……人使いが荒い事で」
男はよっこいしょと立ち上がり、その男と共に歩き出した
「俺の標的はただ一人なんだけどな…」
「良いじゃねぇか。テメェの事情なんざ知らんが、『_____』に入った以上、色々とこき使わせてもらうぜ」
俺も標的は一人だけだからな、と男は付け加えた
「じゃあ、こき使われてやるよ、リーダーさん?」
物語は、着々と進んでいた