とある少年の大地結晶【アースクリスタル】 作:えりー
若干一方通行が過保護です。
「ーーーーい、ーーーおい」
(………んぅ?)
誰かに呼ばれたような気がして、紫苑はゆっくりと目を開ける。
紫苑の肩を揺さぶっていたのは、
一方通行の髪からポタポタと水滴が落ちている。お風呂上がりなのだろうか。その証拠に一方通行の首にはタオルが掛かっていた。
一方通行は紫苑が起きた事を確認し、聞いてみた。
「おい、
「……打ち止めさん?知りませんけど…」
「チッ、やっぱり外に出ちまったかァ?」
「それしかないじゃんよ」
一方通行は頭を掻き、部屋を見渡した。
紫苑は重たい身体をゆっくりと起き上がり、欠伸をする。
部屋には芳川桔梗、黄泉川愛穂、一方通行と紫苑がいる。
紫苑はリビングのソファで寝ていたようだ。
目を擦り、話に耳を傾ける。
どうやら電話機で何かを話しているらしい。
『ーーーー夕食までには戻るから、ちゃんと残しといてね!ってミサカはミサカは忠告してみる!』
声の主は打ち止めだった。
まだ頭が覚醒していない紫苑は、何故打ち止めと電話で話しているのだろうか、という認識しかなかった。
一方通行が杖で電話機を殴ろうとしていようとも、その一方通行を止める桔梗と黄泉川を見ても、一体何をしているのだろうという認識しかなかった。
「ーーーーおん、紫苑!」
黄泉川に呼ばれ、紫苑はゆっくりと向く。
すると突然、紫苑は冷たいものを押し付けられた。
「わっ、冷た…ッ」
「濡れタオルじゃんよ。ちょっと頭冷やせ。そんで眠気吹っ飛ばせ」
「ううう…」
濡れタオルとわかった紫苑は顔を拭く。少しずつ覚醒してきた紫苑は、今何をやっているかを瞬時に考えようとする。
が、それより黄泉川が最初に喋った。
「打ち止めが迷子になったじゃんよ。一方通行と一緒に行ってくれないか?」
「………なんでですか?」
「これから私は打ち止めの居場所特定。桔梗は何処かに出かける。そうなると、一番安全なのは一方通行と一緒に行動する。この後も私は仕事があるし…」
「……わかり、ました…」
「……まだ眠いじゃんか?」
「にゅー…うう…」
「今日は良く寝るなぁ。夜更かしでもしたか?」
「いえ…してません…ん、大丈夫です。行けます」
「そうか、一方通行はもう外にいるじゃんよ。桔梗ー!戸締りよろしくじゃんよー!」
「はいはーい」
紫苑は身支度を整え、愛用の靴を履いた。
外に出ると、確かに一方通行がいた。一方通行は紫苑の姿を発見すると、歩き出した。
紫苑はそれを追いかけ、一方通行の斜め後ろへと陣取る。
杖を突いているとはいえ、やはり体格が違うのか、少し小走りになる。
紫苑は一方通行に聞いてみた。
「一方通行さん、何か思い当たるところはあるんですか?」
「……俺は細かい音を読み取れる訳じゃねェ。だから、正確な場所はわかンねェよ」
「……そうですか」
……そこからの会話はない。
ただ、黄泉川の連絡を待つだけだった。
*
下に道路がある橋を渡っていたところで、黄泉川から連絡があった。
黄泉川からによると、どうやら地下鉄にいるらしい。
それを聞いた紫苑は、何故そこにいるのだろうと考えた。
別に街中でも良かったのではないだろうか。まぁ地下鉄という具体的な場所がわかるので、それはそれでいいのだが。
少し長い通話を終えた一方通行は、行くぞと紫苑に言い、地下鉄へと足を進めた。
地下鉄の入り口へと着いた一方通行と紫苑に、一人のシスターが倒れこんできた。
「あン?」
「え?」
「お、お腹空いた…」
それだけ言い、ジーッとこちらを見てくる。
紫苑はこういう期待される目は少し苦手だった。値踏みされているようで、落ち着かないのだ。
それを察した一方通行は、紫苑に「先に行って打ち止めを探してこい」と言った。後から行くと言っていたので、紫苑はそれを信じて先に行く事にした。
…それにしても、あの変なシスターさんはなんだったのだろう。お腹空いたと言ったシスターは初めて見た。
地下道へと来た紫苑はまず当てもなく探してみた。
やみくもに探しても仕方ないのだが、こうなっては仕方がない。
電話という手もあったが、生憎と打ち止めの番号はしらないのだ。何故こうも都合が悪いのだろう。
紫苑はそう考えるうちに、ヒヨコの饅頭?が売られている屋台へと来ていたーー。
一方通行は謎のシスターインデックスを連れて地下道へと来ていた。
結構時間を食ってしまった。早く紫苑を探さなければ、二の舞になってしまう。その焦りがあり、少し歩を速めた。
それにインデックスが怒る。
「ちょ、ちょっと待つんだよ白い人!」
「うるせェ!お前がさっさと離してくンねェからだろ!?」
「そんなに急ぐ事なのかな!?」
「ガキ二人迷子になったらどうしようもねェンだよ…!くそ、こンな事なら紫苑を先に行かせるンじゃなかった…!」
「それ全面的に私が悪いって言ってるのかな!?」
「あァそうだなそうだよ!」
凄くイライラしている一方通行は、当てもなく打ち止めと紫苑を探していた。
インデックスという少女を連れてーーー。
*
疲れた紫苑はベンチへと腰掛けていた。
収穫はゼロ。打ち止めらしき人も見当たらない。人にも聞いてみたが、そのような少女は見ていないという。
「……うう…」
少し暑くなった自分の身体。今は冬なので暖房みたいな暖かい風が紫苑の身体に当たる。
紫苑は手で扇いでなんとかしているが、何故か徐々に暑くなっているように感じる。
目眩、吐き気、怠さ、痛み、全てが紫苑に襲ってきた。
(……な、に、これ)
汗も尋常じゃない程に湧き出ており、扇いでいた手も徐々に落ちていく。
力が出ない。
視界も曇ってきた。
おかしい。今日は何も異常はなかったはずだ。
黄泉川とは普通に喋れたし、一方通行とも一緒に行動出来た。特に身体の異常はなかったはずだ。
「……ぁ、はぁ…」
息が苦しくなった。過呼吸になっている。
今は一方通行も、打ち止めもいない。見ず知らずの人を助けない人々も素通りする。いや、ただ単に彼の状態に気づいていないだけかもしれない。
紫苑はついに横たわってしまった。
手は力無くダラリと落ち、汗も木のベンチへと染み渡る。
身体が暑くなってきた。もう、意識も保てない程に。
これは風邪なのだろうか。いや、風邪じゃない。それだけは断言出来た。ならこれは何かの異常?何かの副作用なのだろうか。
紫苑の懐にある携帯が振動している。恐らく、誰かが紫苑に電話をかけているのだろう。
だがそれを取る気力もない。今は兎に角、意識を失わないようにするだけで精一杯なのだ。
「ぅぁ…いっ」
身体も痛くなる。何故だろうか、特に"背中が痛い"。
「っ…だ、れ…かぁ…」
紫苑は助けを求めた。
だが、誰も紫苑の事を見ようとはしない。
第三者からすれば、紫苑は疲れて寝ている子供にしか見えないのだ。
しっかり見れば紫苑が異常だというのはわかるのに、人々はチラリと見ただけで判断してしまう。人間とはそういうものなのである。
紫苑は手を伸ばそうとするが、動かない。
声も小さくて届かない。
「…い、た、い…たす…げ」
視界が閉じる、その時だった。
「ーーーおん?」
聞き覚えのある、懐かしい声を聞いて、紫苑は意識を無くした。
*
上条当麻がそこを通りかかったのは偶然だった。
御坂美琴を幼くした打ち止めを無事保護者に送り届け、何故か来たインデックスと帰っていた時だった。
「………あれ、あの子」
インデックスが誰かを見つけた。インデックスには完全記憶能力がある。なので恐らく知り合いであろう。
だがインデックスが自分と知り合った友達と他にいたのだろうか。
上条はインデックスが見ている方向に目を向けた。
そして、目を見開いた。
そこにいたのは、
「ーーー紫苑?」
紫苑だった。
あの野菜事件から一向に会ってない、紫苑だったのだ。
紫苑はベンチで横たわっており、微動だにしない。
様子がおかしい。
上条はインデックスを置いて紫苑へと駆けた。
「おい紫苑、紫苑!」
揺さぶるも、反応はない。
しかも紫苑の身体が熱い。
上条は紫苑の額に手を添える。
尋常じゃない程の熱さだった。
「ッ!?」
「ちょっととうま!私を置いてくなんて酷いんだよ!」
丁度インデックスが来た。だが上条はそれより、紫苑の意識がないのか確認したかった。
「おい紫苑!紫苑大丈夫か!?……ッ意識がないのか」
意識がないとわかった時の上条の行動は、あの
紫苑を横抱きにし、揺らさないように走り出す。
インデックスは突然走り出した上条に戸惑いは隠せないものの、ちゃんと付いてきた。
「ちょ、とうま!」
「インデックス!お前は家に帰ってろ!俺は用事が出来た!」
「用事って、その子に何かあったのかな!?」
「酷い熱なんだよ!早くあの人に見せないとーーーーッ!?」
上条とインデックスが出口まで走っている時に、突然地下道の電気が全て消えた。
走りを止めた二人は辺りを見渡す。暗闇でわからないが、人々が混乱しているのはわかる。
その時、連絡があった。
『ーーー停電が発生しました。普及するまでお待ちください』
「待てるかよ…ッ!」
停電でも構わない。今は、紫苑が先である。
その時、紫苑の懐に何かが振動した。
上条は失礼だが懐を探る。そこに何か硬いものがあった。
ゆっくりと取り出してみると、中から携帯電話が出てきた。
どうやら着信らしい。着信にはーーー。
『ーーー"
と、出ていた。
(一方通行…!?)
上条は一方通行を知っている。
そして、それを止めたのが上条。
もう縁もないと思っていた人物の名前が、今紫苑の携帯画面に出ていたのだ。
(なんで一方通行の名前が!?紫苑はあいつと面識があったのか!?……いや、今はそんな事考えてる場合じゃない!もう誰がなんでもいい!)
上条は意を決して通話ボタンを押した。
紫苑をインデックスに任せ、自身の耳に当て、相手の声を待つ。
一拍した所で、相手から声が来た。
《ーーーおい紫苑、お前今何処にいやがるンだ!?》
相手の焦った声。こんな声は初めて聞いた。
あの一方通行が。だが今はそんな事気にしてられない。
「ーーー一方通行か!?」
《あァ?誰だテメェ。なンで紫苑の携帯を持っていやがる!》
「す、すまねぇ!こうするしかーーって今はそんな事いいんだ!」
《…お前、どっかで聞いたような》
「ッ上条だよ!上条当麻!お前を殴ったやつ!」
《ーーーーッ!?テメェ!》
「だー!すまん!まじすみません!ってだからそんな事どうでもいいんだ!」
相手がわかった一方通行に、携帯から漏れ出る殺気が怖い。耳が再起不能になりそうだ。
いや、耐えろ。今は紫苑の事だ。
「紫苑がスゲェ熱なんだよ!お前何か知ってるのか!?」
《何?どォいう事だ》
「何も知らないのか?」
《あァ、初めて聞いたぞ》
「兎に角お前こっちに来るか、俺がそっちに行く!今停電中だけど地下道にいる!」
《地下道だァ?チッ、出たばっかじゃねェか!俺がそっちに行く。テメェはそこで待って正確な場所を教えろ!》
「たぶん出口に近いと思う!そんでーーーーーッ!?」
正確な場所を伝えようとしたその時、突如地響きが伝わった。
上条はバランスを崩し尻餅をつき、インデックスは紫苑を庇う。
やがて収まった地震に、防火シャッターが下りた。
「!?」
火災にもなっていないのに、何故降りたのだろうか。
これでは、人々を閉じ込めているようなものではないか!
上条は未だ自分を呼ぶ声に返す。
《おい、どォした》
「閉じ込められた…」
《何?》
「防火シャッターが下りたんだ。まだ人が残ってるのにーーーー!」
《チッ、どォなってやがるーーーー入り口もシャッターが降りてるじゃねェか》
一方通行も今地下道の入り口へと着いたらしい。
上条の焦りは最骨頂に達する。
「ど、どうしよう!どうすれば…!?」
《落ち着け》
「逆にお前はなんで落ち着いてるんだよ!」
《待ってろ
ぶち壊す》
「……え?」
その時だった。
上条の前方にあったシャッターが、轟音を立てて吹き飛んだ。
幸い人々には当たらなかったものの、シャッターはボコボコになって店内へと打ち込まれている。
その光から見える、一つの影。
杖の音が響き、白い人物が現れる。
「ーーーーよォ。三下ァ。あの時以来だなァ」
携帯電話を片手に持った、一方通行が現れたーーーー。
次回予告
遂に交わった
ここから、
次回「