とある少年の大地結晶【アースクリスタル】 作:えりー
それは、木原幻生であった
※サブタイトル変えました
「それで…ご用件は?」
葛城は睨むのを止めず、幻生に問いた
「どうやら興味深い子がいるようだな」
幻生が言った言葉に葛城は驚愕した
「何でも…とんでもない能力を持っているとか…」
葛城の背筋が凍った
こいつは知っている
紫苑の事を
だがどうやって知った?
紫苑の事はまだ他の研究所に話していない
いや、話す訳がない
葛城が思考している時、幻生が
「さて、本題に入ろう」
本題に入った
それは簡潔だった
「単刀直入に言おう。その子を私の研究所に_____」
「断る‼︎」
幻生が言い終わる前に葛城が否定した
「アンタの所に…あいつは渡さない。死なせない‼︎」
「死なせる?私がいつそんな事を」
「嘘を吐くな‼︎俺はずっと見てきた、アンタがやってきた事を‼︎」
だから託せないと葛城は言った
葛城はギリと歯切りし、今までより睨む
「アンタは人を何だと思っている。命を何だと思っている。使い捨てのように死なせて捨てて、補充するように人を連れて来させる。そんなアンタにあいつを託したら、あいつの未来は終わる‼︎」
「おやおや、私を信用していないのかい?」
「昔はしていたさ。だがな、人の命を何とも思っていない外道に従うなんて馬鹿らしくなったよ。いいか?ここはあなたから子供を守る為に作られた研究所。だから俺は十学区に建てた。あなたに見つからない為に。だが何故あなたは見つけた?ここはあなたを信用していない人が全員だ。なら何故」
「…………おや?こんな常識も分からないのかい?」
幻生は馬鹿にしたように言う
葛城はその言葉に血が上った
だが幻生の言葉は続く
「確かにここは私から逃げる為に建てられたもの。だが、それが全員って訳ではないだろう?」
「…は?何を言っている。ここの研究員は皆_____」
そこで葛城は気付いた
確かに、幻生を信用していないのはほぼ”全員”
だが
「…………新人?」
「ああ、それも私をよく知らない人か、私を尊敬している人だ」
葛城は喉が干上がった
葛城は思い出した
そう言えば、四ヶ月前、新人の研究員が入ったような_____?
葛城はギリとまた奥歯を噛んだ
「くそっ‼︎あいつを入れたのは誰だ⁉︎」
今思えば何故自分は見過ごしていたのだろう
報告は受けた。だが自分は流してしまった
それが、その行動が
「さて、君からの了承は期待していなかった…。抑えといてくれ」
こんな結果を生み出した
葛城は何処からか来た黒服の男達に抑えられた
「ッ⁉︎」
「君が否定しても、私の勝手にさせてもらうよ」
幻生は何気ない顔で葛城を通り過ぎ、部屋を出た
向かう先は_____
「幻生ェェえええええええええええええええええええええええええええええええええええッッッ‼︎」
「葛城さん…遅いな…」
あのまま待っていたら葛城が来ると思っていたが、来なかった為自室に戻るところの紫苑
「でも、力も制御出来てるし、このまま行けば…」
「張り切っているところ悪いね」
紫苑はゆっくりと後ろを向く
そこには、白衣をきた老人がいた
そして後ろには二、三人の白衣の男達
「…南雲紫苑くん…だね?」
「?うん」
紫苑は警戒もしなかった
それに老人は嬉しそうに笑い
「そうか‼︎私は木原幻生。葛城くんの”上司”だ」
上司という言葉に紫苑は完全に警戒しなくなる
葛城が慕っていた人に、警戒はしない
と紫苑は決めていた
だがそれは、破滅へと繋がる第一歩だった
「実は君の能力を見たいんだ。どうだろう、一回能力測定しないか?」
「いいよ、僕暫く測ってなかったし‼︎」
その言葉を聞いた幻生はニヤリと笑い
紫苑を誘導してあの部屋へと連れて行った
「分かるよね?」
「はい‼︎」
「じゃあお願い」
紫苑は意識を集中させる
バキバキ‼︎と床からヒビがはいる
そして、バキィッ‼︎と床が壊れ、そこから木や土が漏れ出した
「ほう…」
幻生は感心する
だがそれらが天井に到達したところで紫苑はふぅ…と汗を拭った
「どうでしたか?」
「素晴らしいよ‼︎君は逸材になりそうだ」
紫苑はこれで終わりかと思った
だが
(…………さて)
幻生は”本題”に取り掛かった
「紫苑くん。もう一度やってみてくれ」
「?はい」
紫苑は返事一つでまた再開した
そして、ここからだ
破滅の道のスタートは
「君は過去を覚えているかい?」
この言葉で始まった
「…過去?」
紫苑はピタリと動きを止めた
「そう、過去だ………………。あの惨状を」
紫苑はその言葉に、ズキリと頭を痛めた
知っている…
何を…?
僕は…
「人を殺しまくった君を」
その言葉だけで充分だった
その時、紫苑の頭が何かに切られたような、そしてバリッ‼︎と何かが走ったような感覚があった
紫苑の目が、あの時の、”赤黒い目”に染まっていく
『化け物‼︎』
『ッこのッ‼︎』
『ナンで?』
『一人に……しないでぇ……』
ブゥンと紫苑の赤黒い目に、白い輪っかが描かれた
「ぁ…」
「ああァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎」
バキィッ‼︎と木が天井を突き抜けた
ドバァ‼︎と四方に木が抜け出し、壁を突き破る
紫苑の咆哮に答えるかのようにうねうねと動き出し、次には鋭い刃に変わる
「おお…」
だが幻生は違った
幻生はある感情に溺れていた
それは恐怖ではなく”感動”
こんな素晴らしい事があるか
美しい光景は見たことあるか?という言葉に埋め尽くされていた
「ハハハ…凄いぞ…大発見だ…‼︎これは」
「八人目のLevel5の誕生だ‼︎」
地鳴りがした
「ッ⁉︎これは…‼︎」
葛城は何とか抜け出し、紫苑を探していた
だがこの地鳴りで大まかに理解した
今紫苑は
”暴走”している
そう認識した直後、地響きは大きくなり、やがて研究所は崩壊した
「ッくっ‼︎」
葛城はそれでも紫苑を探し続けた
何故それでも紫苑を探すのか。それは__________
幻生はとっくに脱出していた
それもこれも報告する為
「くくく……クハハハハハハハハハハハハハ‼︎」
幻生は高笑いしながら研究所を去ったのであった
そして研究所は、完全に崩壊した
これで終わりかと思ったが
まだ悲劇は終わらない
「ひ、ひいいいい‼︎」
幻生と共にきた研究員が後ずさりした
理由は逃げる為
研究員が逃げている相手とは
球体だった
ポヨンと跳ねるように移動する
だが研究員はそれを必死で逃げようとするが、さっきの崩壊で足をやられた
当然逃げれるはずがなかった
球体は研究員の側に行くと
グワッ‼︎と、研究員に覆いかぶさるように広がったのだ
「ヒィッ‼︎ああァァああああああああああああああああああああ‼︎」
助けて‼︎助けてェェえええええええ‼︎と研究員が叫ぶが、研究員は飲み込まれてしまった
そして球体は役目を終えたかのように土の中に入っていった
「……葛城さん?」
紫苑は血だらけの葛城を見つけた
「……どうしたの葛城さん。そんなところに居たら…風邪…」
紫苑は認めたくなかった
この現状を
「は、早く血を止めなきゃ、さぁ葛城さん起きて、ねぇ生きてるんでしょ?ねぇ」
ゆさゆさと葛城の身体を揺らす紫苑
だが葛城は返事もしない
そしてピクリとも動かない
そして、葛城の身体は冷たかった
「…ねぇ…葛城…さん、起きてよ…、また教えてよ…ねぇ…おね、がいだからぁ…」
ポロポロと涙を流す紫苑
そして、認めたくない現状を、今認めてしまった
それを認識したら、涙が止まらなかった
「うわァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎」
紫苑は泣き叫んだ
振り払うように
爆発するように
また殺してしまった
僕はどうすれば皆に傷を与えないの?
僕が断っていれば未来は変わった?
それとも__________
葛城さん
お願い
一人は寂しい
お願いだから
「一人にしないでぇ…ッ」
紫苑の声は、崩壊した十学区の、奇跡的に助かった四分の三には、届かなかった
逆に、四分の一には、響き渡った
すすり泣く音と共に
一人になった紫苑
そんな紫苑に手を伸ばしたのは_____
次回「”私が付いている”」