とある少年の大地結晶【アースクリスタル】 作:えりー
「……………」
黄泉川愛穂は迷っていた
理由はこのLevel5認定の手紙
これを紫苑に言うか、迷っていた
何故すぐに言わないのか、それには訳があった
それは、紫苑が力を拒んでいるからだ
紫苑はあの惨状から能力を怖がった
また自分は過ちを犯してしまうのではないか、また暴走するのではないか、と
その時に黄泉川はあの元凶は紫苑と確信したのだが、それを責めず、ただ優しく大丈夫と声をかけた
だが、その記憶は中々忘れられない
しかもまだ子供
あの時の惨状、それにこのLevel5
荷が重すぎる、と黄泉川は下唇を噛む
どうすればいい。どうすれば
そんな時
「あ、黄泉川さん」
紫苑がやってきた
恐らく玄関でたちすくしている黄泉川を不思議に思ったのだろう
「どうしたんですか?」
紫苑が黄泉川の顔を覗き込む
黄泉川は咄嗟に手紙を隠してしまった
「?…黄泉川さん。何を隠したんですか?」
「ぇ…いや…えーと…」
こういう所は鋭いと黄泉川は思った
しどろもどろになる
「………僕関連ですか?それなら見せて下さい」
紫苑が黄泉川の目を捉える
黄泉川は本当にどうしようと思った
どうすれば
「黄泉川さん」
黄泉川の考えを見透かしているかのように紫苑は告げた
「僕は知りたいんです。力が怖くても、前に進まなきゃ。だから、どんな事実でも受け止めます」
その言葉に、フッと黄泉川の肩の力が抜けた
紫苑の目はまだ黄泉川の目を捉えている
ああ、本気だ。と黄泉川は笑った
この子は本気で乗り越えようとしている
能力はまだ怖いけど、あの惨状を乗り越えようとしている
そこから考えてからの黄泉川の行動は早かった
「紫苑、確かにこれは紫苑宛じゃんよ。だけど、これは周りにとっては嬉しい事だけど、紫苑にとっては苦しいかも知れない。それでも見るじゃんよ?」
紫苑は手紙と黄泉川を交互に見て
「見るよ」
肯定した
「………Level5?」
「まだ理解するのは難しいじゃんか…」
紫苑に教えた
だけど紫苑はそもそもLevelに聞き覚えがなかった
だから黄泉川は簡潔に
「簡単に言えば、学園都市の頂点って捉えるじゃんよ」
「……頂点」
「あ、でも本当の頂点は第一位じゃんよ。紫苑はその三番目」
「……第三位」
紫苑は顔を傾けた
恐らく能力が関連しているであろう
「……紫苑」
「黄泉川さん」
黄泉川の言葉を遮った紫苑
そして紫苑は決意した
「これは受け止めるよ。でもね……僕、もう力は使わない」
紫苑は驚いていた
Level5は学園都市の頂点
その上というのもあるが、それは関係ない
紫苑はずっと考えていた
どうすれば皆を傷つけない
どうすれば暴走しない、と
そしてあれこれ考えて紫苑は
何だ、簡単な事を忘れていたと紫苑は思いついた
それは
力を使わなければいい
「……うん、それがいいじゃんよ」
黄泉川も賛成した
これは紫苑なりに決めた事だ
口出しは出来ない
「うん、だから力に関する仕事は僕にお願いしないでね」
「言われなくても、元からするつもりじゃん」
ここに
Level5第三位が
誕生した
だが
「……え?第四位?」
とある寮で、少女は驚愕していた
今まで維持していた序列が、こうもあっさり変わった
「……誰よ、私を抜かしたやつ」
絶対勝負してやる。と少女は心に決めた
「はぁ⁉︎第五位だぁ⁉︎」
「お、落ち着くってわけよ‼︎」
「おやおや、まさか麦野を抜かす人が超いるなんて」
「大丈夫、そんなむぎのを応援してる」
女四人、その一人は怒りに包まれていた
「誰だよ…第三位ぃ……」
絶対殺してやると女はそう決めた
「あらぁ、六位になっちゃったわぁ」
少女は特に焦らず
「ま、別にいいけど」
流した
「八位⁉︎そんなの関係ない‼︎根性で決める‼︎」
この男はスルーしよう
「…………………………」
元第六位は序列が変わったにも関わらず、携帯を弄んでいた
「へぇ、第三位が変わったんだ」
「でも、あなたには関係ないでしょ?」
「そうだな」
男は特に気にしなかった
「第三位が変わっただァ?関係ねェよ。そンなのにいちいち気にしてる俺じゃねェ」
男はそう吐き捨ててとある研究所を出た
だが知らない
第三位が幼い少年だとも
本当は”第二位”だったのも
その力がこの学園都市を滅せるとも
まだ、七人のLevel5は知らない
紫苑はLevel5という事実を受け止めた
ここから、紫苑の新しい生活が始まる
次回「紫苑のニューライフ」