座村清市シャーレの先生概念   作:ツケマツゲ

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果たしてどこまで続くかな?そんなわけで初投稿です。


最速の教師

正直に言えば、甘く見ていた。

 

「制圧開始!」

 

の号令で、ヴァルキューレの部隊が動く。

市街地裏路地。不良グループの根城。いつもなら五分で終わるはずの案件だった。 

だが、今日は違った。

 

「……っ、想定より火力が高い!」

 

部下の声に、歯を噛みしめる。

自動小銃、違法改造。撃ち方が雑だが、弾幕だけは無駄に濃い。

 市街での戦闘というのもあって強行突破はあまりしたくない。

 

「包囲を維持! 無理に前に出るな!」

 

焦ったほうが負ける。それは分かっている。

分かっているからこそ、判断が遅れる。

だから、視界の端で不良の一人の手榴弾が中に待っているのも気付くのに遅れた。

 

「しまっ!?」

 

たかだか手榴弾一つで部下たちの陣形が崩れるとはカンナも思っていない。

しかし場所が良くなかった。

路地裏を抜けたところ、広間になっている空間に飛んでいった手榴弾は、歩いていた一般人たちに向かっていく。銃弾ならともかく手榴弾だ、体の頑丈な生徒たちでさえかなりの痛みを伴うだろう。それが一般人なら尚更。

 

 

己のミスが何の罪もない人々に害をなしてしまう、後悔の感情ともに駆け出したが絶対に間に合わない。

一秒後には来る爆発の衝撃を予想して手榴弾を凝視する。

 

 

 

瞬間、其れは消えた。

 

 

しばらくして遠いところから爆発音が聞こえる。

カンナも、ヴァルキューレの部下達も、やってしまったと思っていた不良達でさえ、先程まで手榴弾があった空間を凝視する静かな時間が生まれた。

 

 

始めに気付いたのは不良だったかヴァルキューレだったか、誰かが声に出して言った。

 

「なにこれ、鴉の羽?」

 

ふと周りを見ると、辺りに黒い羽が何枚も降っていた。

 

そしてその場の誰よりも早く現実に戻ったカンナが声を張って叫んだ。

「ヴァルキューレ!全員今すぐ撤退しろ!」

 

誰が一番最初に言ったか

 

 

黒鳥が群れるのは死の知らせ

 

実際は誰かが死んだわけではないが、決まって大量の羽が空を舞うのを見たものは抵抗むなしく武力を失くすと言う、ここ最近のキヴォトスで広まった一つの噂。

 

ーキンッー

 

金属同士が起こす静かな音がなり、

 

瞬間、カンナの近くの不良の持つライフルが

 

真っ二つに割れた。

 

 

「えっえええ!?!?なッ何々?急に壊れたんだけど!?」

「私のもだ!真っ二つになってる!?」

 

ぎゃあぎゃあと不良達の叫び声が飛び交うなかで、目を凝らしてようやく見える黒い影。

 

「姉御!これって…」

横にいたコノカがカンナに向かってそういった。

 

「あぁ、間違いない」

 

 

「座村先生だ」

 

ーキンッー

 

目元まで伸ばした少し癖のある髪の毛、少々厳つい両目元から頬にかけての傷、黒いサングラス、キチンとしまわないシャツに草履を履いている、キヴォトスで珍しくヘイローを持たない普通の人。

 

誰が言ったか最速の教師、座村清市

 

彼が不良達のド真ん中で日本刀を逆手に握っていた

 

「先生だ、先生が来たぞ!お前ら構えろ!!」

「先生が来た!今すぐ静かに先生から離れろ!」

 

ーキンッー

 

不良と警察、両者の声が飛び交うなかでまたもや先生の姿が消えた。

みるみるうちにに不良達の手元にあった武器がガシャンッと音を立てて壊れていく。

 

「す、すごい」

「ヘイローもなしにあまりにも早い!」

「アイツらも何が起こったかわかってないな」

 

小声で部下達が会話しているのも尻目に、カンナも先生を姿を見ていた。

(あまりにも早い、私でもギリギリ見えるぐらいだ。これほどの数を相手に、さすが座村先生…!)

 

先生がキヴォトスに来てから何度も助けられているがその多くは今回の方な荒事。普通なら生身の人間がこんなところにいていいはずがなく、せめてが後方での指揮だろう。

 

だが彼は違う。

 

あまりにも早くあまりにも強く

 

誰よりも優しい。

 

彼がキヴォトスに来てから無駄そこまで長い時間が経ったわけではないが、それでも自分はかなりに回数彼と会っているとカンナは考える。他の者よりも彼の人となりは知っているつもりだ。

現にほら、彼は武器だけを破壊している。

一撃でも食らえば命の危険がある状態で、自分よりも強い肉体をもつ集団を前に、彼はたった一人で手加減をしている。

 

あまりにも優しくて残酷な神業。

 

少し離れていたところで見ていたカンナ一行だが部下の一人が前に出ようとする。

 

「まて、何をしている!前には出るな」

「えっ!?し、しかし局長、先生は一般人です!あんなところにいては危険ですよ!?」

 

なるほど、この部下は今回のように戦場で先生と会ったことがないらしい。彼女の言っていること事態は正解だ、何一つ間違ってはいない。

 

彼を一般人といえるなら

 

「いいか覚えておけ、先生が刀を抜いたなら我々がすることは一つ、なにもしないことだ」

 

「なにもしない、ですか?」

 

「良く集中して聞いてみろ。おまえにもあれが聞こえるはずだ」

 

 

ーキンッー、ーキンッー、ーキンッー

 

定期的になる金属の音、これこそが座村の戦闘でもっとも異質なモノ。

 

「反響定位というらしい。私も先生から聞いた話だが、あと人は戦闘中に納刀、金打を繰り返し、その定位によって敵の位置や方向を計る」

 

ーキンッー

「座村先生は音に斬りかかる、だから我々は動くべきではないのだ。実際アイツらも何が起きてるかわからないほどに先生は早い。銃弾など当たるはずもないだろう」

「…え??」

 

部下が引いてる。めっちゃ引いてる。

まあ気持ちはわかる。刀一つで戦場に向かおうとして挙げ句お前らは離れてな、と言われた時は何を言っているんだとカンナも思った。

 

誤解されがちだが、座村先生は危険な存在ではない。

少なくとも、生徒にとっては。

 

彼が刃を振るうのは、常に“生徒以外”だ。正確には、武器、弾道、殺意そのもの。

人を斬るための剣ではない。

それを、私たちは何度も見てきた。

 

ーキンッー

 

また一つ、金属音が響く。

不良の手にあったショットガンが、接合部から綺麗に割れ、床に落ちた。

 

「な、なんだよ……これ……」

「触れてもいねぇのに……!」

 

不良たちの声は、完全に混乱の色を帯びている。

当然だ。

攻撃されている感覚がないまま、戦う手段だけを奪われているのだから。

 

カンナは、座村の背中を見る。

 

目は、相変わらず閉じられたまま。

無駄な動きは一切ない。

まるで、戦場の中心に立つ“支点”のようだ。

 

(……やっぱり、すごいな)

 

思わず、そんな感想が浮かぶ。

 

ヘイローもない。

特別な装備もない。

それなのに、キヴォトスという異常な都市で、誰よりも“大人”として立っている。

 

「姉御……」

 

コノカが、少し誇らしそうに言った。

「やっぱり、先生ってすごいですね」

 

「ああ」

 

私は即答した。

 

「私達の自慢の先生だ」

 

ーキンッー、ーキンッー

 

最後の数丁が、ほぼ同時に壊れた。

それを合図にしたかのように、

座村の周囲から黒い羽が、ふっと消えていく。

 

空気が、元に戻る。

 

私は、すぐに声を張った。

 

「今だ、ヴァルキューレ!

 武装解除完了!制圧に移れ!」

 

「了解!」

 

部下たちが一斉に動く。

ここからはいつも通りの仕事だ。

 

武器を失った不良たちは、抵抗らしい抵抗もできず、

次々に拘束されていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ、相変わらず忙しそうだな」

 

事態の収拾が着き始めたところで、離れたところで様子見をしていた座村先生が近づいてきた。

 

「先生!お疲れ様です!先程はありがとうございました!」

 

 

「たまたま近くを通ったんでな、余計なお世話だったかも知れねぇが」

 

「いえ、そんなことはありません。攻めあぐねていたのは事実ですから、とても助かりました」

 

 

「そーかい、ならよかった」

 

笑いながら座村はカンナの頭をクシャッと撫でる。恐らく座村がカンナと話している時から此方を見ていたのてあろう部下達が小さな声でキャッキャッと騒いでいるのが聞こえる。

 

「せ、先生…恥ずかしいのでもうよしてください///」

 

「ん、そうか」

 

顔が赤くなっているのが感覚でわかる。あまりの恥ずかしさに先生の手をつかんで優しく下ろす。

 

カンナは自分の顔が強面で、周りから怖がられている事を気にしていた。本来は生活安全局志望だったが、この顔が原因で公安局に回されたぐらいだ。

 

公安には行ってからも職種がら威圧的に振る舞う場面が必然的に増え、そのせいで自分の笑顔を見た子どもたちに泣かれてしまうほどに近寄りがたい雰囲気になってしまった。

 

だからだろう、自分の顔を気にせず子供扱いをしてくる先生についつい甘えてしまうのは。

 

最初は、目が見えてないから皆に対して同じ対応が出きるのだろう、と考えていた。

 

それでも嬉しかった。

 

局長という身分もあって人に頼ったり弱音を吐くなんてことはできなかったから、大人という頼れる存在が来て業務から来る心の重りに軽さを感じることが増えた。

 

しかし、会う度話す度に考えは変わった。

 

恐らくこの人は、目が見えていたとしても私に対して怖がったりはしなかっただろうと。

 

大人としての責任と、このキヴォトスに必要な先生としての責任。

 

それらを義務ではなく地で行くのがこの人なのだと、実感した。

 

 

「しかしあれだな、今週でお前らと3回も現場でかち合ってるが、とんでもねぇ治安だな」

 

ずれたサングラスを指で上げた座村が、先ほどまでの争いの跡地方を向き言う。

 

「先生がいたところとは全く違うでしょうね。何せ我々にはヘイローがありますから。いかんせん体が頑丈なので武器もその分強力です。自衛のために銃を持つことも普通ですし」

 

 

「なるほどな」

 

座村は小さく頷いた。

争いの跡を“見ている”はずなのに、視線はどこにも定まらない。

それでも、彼が状況を把握していることを疑う者はいない。

 

「だがな、それでも――」

 

彼は一拍置いてから、続けた。

 

「武器を持つ理由が“当たり前”になる街は、やっぱりどこか歪んでる」

 

俺のいたとこも大概だったけどな。と笑いながら先生は言う。

その言葉に、胸の奥が少しだけ痛んだ。

反論はできない。

治安を守る側にいるからこそ、誰よりもその歪みを理解している。

 

「……そうですね」

 

私がそう答えると、座村はふっと笑った。

 

「ま、だから俺みたいなのが必要なんだろうな」

 

冗談めかした口調。

だが、その言葉の裏にある覚悟を、私は知っている。

 

銃弾が飛び交う戦場に、刀一本で立つ覚悟。生徒を守るために、命の危険を引き受ける覚悟。それを“当然”のように背負う大人。

 

「先生」

 

私は一歩、彼に近づいた。

 

「……さっきの手榴弾、もし先生がいなければ、一般人に被害が出ていました。

 私の判断ミスです。本来なら、私が――」

 

「違ぇよ」

 

座村は即座に遮った。

その声は強くはないが、はっきりとしている。

 

「判断ミスじゃねぇ。

 想定外が起きた。それだけだ」

 

「ですが――」

 

「局長だろうが先生だろうがな、全部を完璧に予測するなんざ無理だ」

 

彼は私の肩に、軽く手を置いた。

 

「だからこそ、俺みたいなのがいる。

 だからこそ、お前らがいる。

 誰か一人の責任にする話じゃねぇ」

 

その言葉に、胸の奥で張りつめていた何かが、ふっと緩むのを感じた。

 

(……ずるい人だ)

 

こんなふうに言われたら、

これ以上、自分を責め続けることなんてできない。

 

「それに――」

 

座村は少しだけ、困ったように笑った。

 

「お前らがちゃんと包囲してくれてたから、俺ァは余計な心配せずに動けたんだ。

 あの状況で民間人に被害が出なかったのは、ヴァルキューレの仕事だ」

 

私は、思わず背筋を伸ばした。

 

「……ありがとうございます」

 

それしか言えなかった。

でも、それで十分だった。

 

周囲を見ると、拘束を終えた部下たちが、こちらをちらちらと見ている。

その視線には、不安も恐怖もない。あるのは、誇らしさだ。

 

「姉御、全部終わりました!」

 

コノカが駆け寄ってきて、敬礼する。

 

「負傷者なし!

 一般人も全員無事です!」

 

 

私は頷いた。

 

「よし、ご苦労だった」

 

そのやり取りを聞いていた座村が、満足そうに鼻を鳴らす。

 

「上出来じゃねぇか」

 

「……先生のおかげです」

 

「違う」

 

また即答だった。

 

「お前ら自身の力だ」

 

そう言い切るからこそ、この人は信頼されるのだ。

 

戦いが終わり、現場の緊張が完全に解ける。パトカーのサイレンが遠ざかり、市街には、いつものキヴォトスの喧騒が戻りつつあった。

 

「さて」

 

座村が刀を杖代わりのように持ちながら、軽く肩を回す。

 

「俺ァはそろそろ戻るわ。

 あんまり長居すると、また厄介事に巻き込まれそうだしな」

 

「……もう行かれるんですか?」

 

自分でも驚くほど、名残惜しい声が出た。

 

「仕事だからな」

 

彼は、いつもの調子で言った。

 

「生徒を守るのが、先生の仕事だ」

 

 

「先生」

 

私は、もう一度呼び止めた。

 

「……本当に、ありがとうございました。今日も、私たちを助けてくれて」

 

座村は一瞬だけ立ち止まり、こちらを振り返った。

 

目は閉じたまま。

それでも、確かにこちらを“見て”いる。

 

「礼はいらねぇよ」

 

彼は、穏やかに言った。

 

「俺は、俺のやるべきことをやってるだけだ。

 それに――」

 

少し間を置いて、続ける。

 

「お前らが守ってるこの街、

 俺は嫌いじゃねぇ」

 

それだけ言うと、

彼はゆっくりと歩き出した。

 

草履の音が、アスファルトに小さく響く。

その背中は、決して大きくはない。

だが、どんな防壁よりも、どんな装甲車よりも、頼もしく見えた。

 

「……行っちゃいましたね」

 

コノカが、ぽつりと言う。

 

「ああ」

 

私は、彼が去った方向を見つめたまま答えた。

 

「でも、きっとまた会うさ」

 

キヴォトスという街がある限り。

生徒が危険に晒される限り。

あの人は、必ずどこかで刀を抜く。

 

恐怖ではない。

畏怖でもない。

 

信頼と、尊敬。

 

座村清市は、私たちヴァルキューレ公安局にとって、そしてこの街にとって――

 

間違いなく、“先生”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

報告書の山に囲まれながら、私はデスクに座っていた。

現場は無事に収束。負傷者なし。民間人への被害もゼロ。

 

完璧な結果だ。

 

「……」

 

だが、ペンはなかなか進まない。

 

「局長、例の件ですが」

 

コノカが資料を抱えて入ってくる。

 

「不良グループの武器の出所、ほぼ特定できました。

 違法流通ルートを辿れば、もう少し大きな案件に発展しそうです」

 

「そうか」

 

私は書類を受け取り、目を通す。

 

「引き続き調査を進めてくれ。

 ただし、無理はするな」

 

「了解です!」

 

彼女は一礼して、部屋を出ていった。

 

一人になると、どうしても考えてしまう。

 

座村清市という先生のことを。

彼は、教室にいるタイプの先生ではない。黒板の前に立って授業をする姿も、テストの採点をする姿も、正直想像しにくい。

 

それでも――。

 

「……先生、か」

 

私は、静かに呟いた。

 

彼は教えてくれる。言葉ではなく、背中で。

 

責任の取り方。

守るという行為の意味。

そして、大人であること。

 

生徒がどれだけ強くても。どれだけ銃を持っていても。最終的に“守る側”に立つのは、大人なのだと。

 

(……ずるいな)

 

そんな人が、自分の世界ではなく、このキヴォトスを選んでくれたことが。

 

ありがたくて、少しだけ、怖かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

キヴォトスは、今日も騒がしい。

銃声が鳴り、サイレンが響き、事件は尽きない。

 

それでも。

 

この街には、刀一本で立ち向かう大人がいる。

 

恐怖ではなく。暴力でもなく。ただ、守るために刃を振るう先生が。

 

そして私たちは、その背中を知っている。

 

座村清市。

最速の教師。

そして――

 

私たちの、誇りだ。

 

 

 

 




なんと自分、ブルアカは未プレイです。いろいろ間違っていたら申し訳ない。
不器用ながらに正義を遂行しようとするカンナと座村さんって似てますよね。
しばらくはこういうキャラとの掛け合いだけを投稿しようかなと思っています!応援よろしこ
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