努力は決して裏切らない(Vの皮を被っても)   作:とんたん

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主人公が、まだ自分がVtuberに成るとは思っても居なかったころのダイジェスト


前日譚

 

 私は、元男性のアラサー女。  前世のある日、神を名乗る不審者に――。

 

「貴様は死んだ、うんたらかんたらテンプレーというわけで、貴様の望む能力や武具、アイテム等を一つだけくれてやろう!」

 

 適当が過ぎるだろうが!

 

 因みに、バトル物かどうか等は一切不明。後で神なる者がクジを引くらしい。  

 どういうジャンルに転生するかは重要だ。日常系に転生するのに伝説の剣とか貰っても仕方ないからね。  

 そこで、当時の自分は考えた。  

 どんなジャンルの世界に転生したとしても、決して無駄にならない能力を!  

 【裏切らない努力】あるいは【努力を必ず反映させる肉体】、【努力が徒労にならない】  

 そういう能力をくれと要求した。  

 どこかで聞き覚えがある言葉に、『努力は決して裏切らない!』がある。  

 この格言? の言いたい所は理解している。目標を達成する事が出来なくとも、その過程は決して人生において無駄にならない、目標とは違う所できっと役に立つ時が来る。

 というようなことを言いたいのだろう。でもね、ちゃうねん、目標は達成したり、習得したりしたいねん!  

 でも残念ながら、いくら努力という名の水や肥料を与え続けても、才能という種が無ければ意味は無い。それに、才能という種は万人に等しく与えられてもいないし、才能は目に見えるわけでは無い。あるかないか分からないもののために時間を費やすのは不合理極まる!  

 その点、この要望なら、どんな世界でも高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応可能だ。  我ながら天才的発想である。  

 無事、この能力は受理された。

 

 転生先を決めるクジで人間に転生出来たのは運が良かったし、記憶の引継ぎと性別の決定はコイントスで決定するという運ゲーだった。因みに、転生先の世界はバトル物とかファンタジー物では無く、前世とほぼ同じ世界だった。ヤッター!  

 人間にまた転生出来ただけで万々歳だ。他の生物に転生なんて嫌というか怖いわ。  

 そんなことを考えると、性別は変わっていたが、人間に転生出来ただけでありがたいことこの上ない。  

 で、転生の際に頼んだスキル? 能力?

 これが、我ながら天才的な発想で無法チートだった件。  

 前世で上手くなりたいと願っていた絵や歌が上手くなった。  

 少しの練習で上達するのが楽しくて仕方ない。  

 前世でネットや教本を見て練習してもさっぱり上手くならなかったものが、上達した喜びは凄まじかった。  特に、脳内の妄想を思ったままに出力できるのが楽しくて楽しくて……。

 

 結果、週刊連載漫画家になった。  

 前世で言う、集〇社の「ジ〇ンプ」で連載している。因みに今世では遊栄社(ゆうえいしゃ)で『ジャック』と呼ばれている。  

 で、17歳の時に持ち込みを行い、それがロボット漫画だった。  

 当然、編集者は「面白いけど、週刊連載でロボットは作画コスト的に無理じゃね?」という反応だった。だから、実際に編集部で連載している体で、ロボットと怪獣が戦うネームと原稿を書いて仕上げて見せた。そしたら、ドン引きされた。  

 高校卒業と同時に漫画家デビューをした。高校在学中にデビューしなかったのは、編集部の方針で『出来なかった』から。  

 なんでも、以前高校に通いながら漫画家をした先生が、病気で倒れてしまって、それを心配してのこと。(なら仕方ない、漫画家、特に週刊連載は重労働だからね。でもなぁ、私になら余裕で出来たのに……)と思ってしまうのは、転生チートを持っている私の傲慢なのだろうか? まぁ、編集部がNOと言うのなら仕方ないか。  

 で、実際に連載がスタートして、有難いことに人気はいつも上位をキープ出来ていた。まぁ、自分で言うのもアレだけど、男の子が絶対好きだろ! ってロボット描いているからね。  

 人気が継続すると、アニメ化の話も来る。当然断る理由は無いから受ける。アニメ会社もロボットアニメに定評のある会社だったしね。資料として、私が作詞作曲したテーマソング(デモ音源)と、作画資料のために3Dプリンターを活用して作成した主役ロボのフィギュアの予備を渡したら、アニメ会社の人にドン引きされた。別にええやろうが!

 

 そして、ロボット物の原作をしている者としては念願の、スーパーロボット大戦のオファーが来た。  

 当然OKを出すが、大きな問題があった。  

 それは、アニメ化の範囲だとボスキャラクターの強さと存在感が微妙だということだ。  

 次章が最終章の前章ということもあって、伏線を撒く章にしたからだ。主役ロボの最終パワーアップイベントの伏線と、ラスボスの伏線も張ってある重大な章だ。だからこそ、派手なバトル描写は控えめにした。その弊害が、「なんかこの章の大ボス弱くね?」問題である。実際にボスキャラとしての格は相当低い。なんなら最初のボスキャラの方がかなり格は高い。「序盤に出てくるような奴じゃない」とは編集とアシさんと読者の談。

  で、話を戻すと、現状のアニメ化の範囲と、このパッとしないボスが立ち塞がる章がゲーム実装時期と被ってしまうのだ。きっと、スパロボの担当者の方は頭を抱えていることだろう。  

 こんなこともあろうかと! 準備していたものがある。  

 そう!それこそは、私の漫画の打ち切りルートでのラスボスである!  

 後ろ向きな理由だが、必要なことである。

 ジャックは、連載会議で勝ち続けなければ、すぐに打ち切りになるのだ。  

 他の作品に負ける気は微塵もないが、この業界では何が理由で人気がなくなるのかまるで予想出来ないのだ。だから、「先生! 残念ですが○週で打ち切りです」って言われた時用に、ボスキャラと機体自体は準備をしていた。読者に「なぜ打ち切りにした!」と言わせるために、強くてカッコイイのを! 

 それをスパロボ限定ラスボスとして、提案してやろうじゃないか。  

そんなこんなで、担当編集とスパロボの担当者と話し合いの時が来た。

 長らく、ジャックからスパロボ参戦作品は新規では無かったから、まだ若手と言える編集者の小林さんは相当緊張していた。慣れろ。

 そして、スパロボ担当者さんは、ビックリ仰天していた。

 いや、分かるよ。スーパーロボット物の漫画を描いている作者のペンネームが鋼 鉄心(はがね てっしん)って言う如何にもな厳ついペンネームなのに、出て来たのは若い女だからね。

 この瞬間が一番楽しいな! で、本題は懸念の通り、「アニメ化の範囲だとパッとしないけど、どうしよう?」だった。

 そんな担当者と編集の前にドン!と出したのは、私以外誰も知らないロボットのフィギュアだ!  いやー、小林さんのリアクションは楽しかった。「打ち切りーーー!? 何で!?」とか「僕の知らないロボットだ!」等の新鮮な驚愕の声は良い栄養源だ。

 で、登場するキャラクターの設定画も見せる。打ち切りコースのラスボスではあるけど、次章のメインとなるキャラクターでもある。これなら、読者でありプレイヤーはビックリすること請け合いだ。でも、まぁ、あくまで提案だ。この場で全てが決まるわけではない。一度会社に持って帰って貰うことになった。

 そして、後日。先方は乗り気な様で、詳しいキャラクター設定と機体の設定を教えて欲しい、と連絡が来た。それとこのキャラクターのオーディションをどうするかの相談もだ。

 そうだよな、これから漫画に登場するわけなのだから、アニメが継続するにしても当然、オーディションは先だ。だから、サンプルボイスとして、「こういう演技ができる人が希望」というメモと共に、自分で一通り演じた音声を送ってしまった。すると、採用されてしまった。え! はぁ! 何で……!?

 確かに、中性的な容姿をした、見え方によっては女に見えるけどさ、体格は男じゃん。男のベテラン声優さん起用してよ。でも、先方も妙に頑なで、音響担当やオリジナルキャラの声優起用担当の方が絶対にサンプルボイスの方が良いと言って譲らない。

 小林ぃー助けろーという視線を向けたけど、先生のスケジュールは空いているから大丈夫だと言いやがった、それでもジャックの編集か!普通漫画優先させるだろうが!

 え、何?ネームは四週分のストックが有って、原稿は二週分上がっているから問題無い?

 え、えっと、私も偶には私的な休みが欲しいから、頑張ったんだけど……

 仕方ない、専門のボイストレーナーを紹介して貰おう。

 仕方がない、突貫工事だけど、こういう時に輝くのが我がチート能力だ!

 どういう訳か、めっちゃ好評だった。

 作品自体の出来も良く、読者兼プレイヤーからも好評だった。

 

 そんな事が有って、10年の時が経った。

 原作は終了し、原作に追いついたアニメも無事完結した。

 アシスタントの皆が去った、仕事部屋は少し広く感じた。

 普段はしない、仕事部屋のPCを私用で使い、何となく動画サイトを見る。

 すると、画面にはVtuberが配信をしていた。

 そうか、時代はもうこんな所まで、前世に追いついていたのか……

 




因みに、主人公が書いた漫画は、ダイナゼノンのドラゴン版みたいな奴が主役機の漫画。
*前世で主人公はダイナゼノンを知りません。
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