目が覚めると、時計の針は朝の10時を指していた。
普段は6時に起床だから、本来なら寝坊も良い所だ。
だけど、幸い今は、連載完結してからの、次回作までのインターバルの最中だ。
こういう時があったって良い。
まったりと朝のコーヒーを楽しみつつ、昨晩のいや今朝の出来事を思い出す。
元アシスタントの自称弟子、いや弟子を自称されても、困るんだけど。
だって、本当に何もしていないんだもん。
一言、二言位言った覚えはあるけど、そうしたら編集を通して遊栄社から、イラストの仕事を取って来て、そのまま人気イラストレイターへの道を歩み出したんだもん。
今夜、当人に当時どう思ってたのかを聞こう。
で、それまでに時間があるから。
家電量販店で、マイクを新調しよう。
相手は、収益化した(してるよね?)、そうお仕事で配信している。
例え、趣味でやっていたとしても、もし収益が発生していたら、それは立派な副業だ。
相手の仕事場でもある場所に行く以上、こちらも必要最低限の準備をするのが礼儀だろう。
と言う訳で、レッツゴー。
はぇーと売り場のマイクを見る。
種類の多さに驚いた、値段も下と上とでは雲泥の差だ。
配信界隈が盛り上がっているからだろうか、下は数千円で上は云十万円の物まで豊富に揃っている。
今回は、ボイスチャット用の良い物を買う事にした、上に行くとお歌用で十万以上となり今回の目的にはそわない。
それでも、二万円もしたから、音の世界って広いんだなと感心する。
以前、レコーディングした時のマイクっていくらしたんだろう?まぁ気にしても、流石にもう歌のレコーディングなんてする事は無いから、縁は切れた筈だ。
そんな訳で、夕食を済ませて連絡を待つが……
一向に連絡がこない、20時が過ぎ、21時が過ぎる。
そして、21時半頃にようやく連絡が来た。
「あのさぁ。私、配信界隈の事なんて良く分からないんだけどさ、打ち合わせって裏でしっかりする物なんじゃないの?」
「え、今しているんじゃないっすか?」
「こういうもんなのか?」
「さぁ?」
「コラボの回数は?」
「ふふーん。昨日で、なんと10人になります!」
「おお!その数が多いのか少ないのかわからn……昨日何してたっけ?」
「?昨日はアポ無し凸待ち企画やっていて、来てくれたじゃないっすか」
「その時、来た人数は?」
「10人ですよ」
「よし!このバカ!バカ!昨日の発言は、撤回するよ」
「何ですか!バカって、しかも二回も言うだなんて!」
説明してやりたいけど、もうすぐ配信予定時刻だ。
やっぱり、30分で話を詰めるのは無茶がある。
「あ、もう時間っすね。適当な所でお呼びしますんで、待機してて下さい」
「もっと、こう今日はどういう話をするのか事前にしとこうよ」
「そんなものはライブ感で、おkっすよ。じゃあ、配信初めてきまーす」
チャットを切り、彼女は配信を始めてしまった。
行き当たりばったりが過ぎると思う。
それにしても、零細配信者の同接が約3000っておかしくない?十分、人気配信者のラインに行っていると思うんだけど、それとも私が配信に詳しくないだけで、配信者はこれ位集めるのが普通なのか?
OPトークが始まる。
スラスラとリスナーと喋る彼女は凄い。
脊髄反射でリスナーとやり取りをし、ガチな喧嘩にならない塩梅で、じゃれ合っている様を見ると。
うん、凄い才能を感じる。
そう言えば、どのタイミングで呼ばれるのか聞いていないな。
とか、考えていると、急に配信上で「ではー先生どうぞー」とか言い出したぞコイツ!
「どうも、30分前に連絡が着てビックリしている、鋼 鉄心です。昨日の事を少し聞いたけど、いつもコイツはアンドリュー・フォークみたいな事をしているの?」
:こんばんわー
:キター
;アンドリュー・フォークって何?人名?
:フォーク知ってるって何歳だよ
:行き当たりばったりって意味で言ってんの?だとしたら、そうだが
:声は若いけど、鉄心先生実はアラフォー~アラフィフ説
「あの、アラサー女性です」
「はい、師匠はまだ30にはいってないっす!アンドリュー・フォークさんについてはよく知らないっす」
「銀河英雄伝説見てみな、あと師匠じゃない」
:気軽に勧めていい話数じゃないんだよなぁ
:くそ長い
:認めてやれよ
:今は、サブスクで全話見れるから良い時代だよ
:元アシなら、弟子でもいいだろ
「いやね、確かに漫画家とアシスタントって師弟関係の方々は多いよ。でもね、私とこの子の場合はね話が違って来るんだ。だって、絵に関しては一切、私は口出しして無いもん。それで、師匠を名乗るはちょっとなぁ」
「確かに、絵に関してはなーんも、助言の類されていない!?でも、漫画家になりたかったけど、実際に漫画家は合って無くて、でも絵でご飯食べていきたかった。そんな相談をしたら、編集と出版社を通してイラストの仕事を紹介してくれたんっすよ。それって、師匠ムーブなんじゃないんっすか?」
:なるほどなぁ
:否定する側、呼ぶ側両方に納得できる
:いい関係じゃん
「漫画家は合わなくても、絵では食べていけるだろっと思ったから、編集通じて出版社にイラストの仕事無いか?って聞いただけだよ、大した手間も掛かっていないからなぁ、そんな事でおおきな顔したくない」
「教わってはいないですけど、色々技術は盗みましたから、師匠でいいんですよーだ」
「そこまで言うなら、もう師匠でいいよ」
「ヤッター!」
:おぉ
:えがった
:よかったな
:師に認められてよかったな
「よーし勢いのまま、続けて行くぞ」
「あーうん、何を?」
:うん?師匠の声色おかしくね?
:なんだろう、師匠の様子おかしい
「無個性の私でも、Vtuberになれますか?」
「ごめん、お前めっちゃ個性的だわ」
:草
:だよなー
:まぁ、昨日のあの瞬間だけ切り取って、俺等の証言だけだとあの場では無個性だな