——エイトマン・リボーン—— 比企谷8幡は鋼鉄の夢を見るか 作:りかるど
ユイと名乗った白い結衣を前に、エイトマンの電子頭脳はかつてないレベルの警告アラートを鳴らし続けていた。その異様なまでの存在感、大気を物理的に歪ませるほどのプレッシャーに、鋼鉄の身体さえもが戦慄する。
「由比ヶ浜……!? どうしたというんだ、その姿は……」
「あいつ……一体、何が起こったの?」
背後で平塚と沙希が思わず息を呑む。
今までの由比ヶ浜結衣とは、纏う空気の「密度」が根本から違っていた。桃色の髪は色素を失って純白へと変じ、その瞳だけが鮮血のような紅(あか)を宿している。
少女の輪郭が陽炎のように歪み、彼女は再び、酷薄な笑みをその唇に刻んだ。
「そんな顔しないでよ、エイトマン。せっかくこうして、初めてまともに会話ができるんだから」
「初めて……だと?」
その言葉がトリガーとなり、八幡のメモリーログに一つの映像が呼び起こされた。
先日、相模南を襲撃したカラスの群れ。その不自然な電波を辿った末、校舎の屋上で見つけた正体不明の「白い影」
「お前、あの時の……!」
「そういうこと。あの時は、結衣が作った不安定な虚像をあなたに見られたのよね。でも、今は違う」
エイトマンの電子頭脳が思わず戦慄した、あの時の圧倒的な威圧感。
まさしく、目の前に君臨するこの存在こそが、あの影の正体であると理解した。エイトマンはレンズを鋭く光らせ、問いかける。
「お前の正体は……何なんだ。由比ヶ浜の中で、何をしている?」
「──ええ。今さらだけど、教えてあげるわ」
ユイの答えは、八幡の想定を遥かに超越した、凄惨な過去の証明だった。
ユイは自らの正体を、淡々と、そして冷酷に語り始めた。
自分が実験の末に作り出された『超人』であること。
拉致された結衣が、実験という名の凄惨な拷問の痛みと、「比企谷八幡の死」というあまりに重すぎる真実を知ってしまった苦しみから逃れるために、精神の深淵で生み出した「もう一人の自分」であることを。
(やはり……あいつは由比ヶ浜の、もう一つの人格……)
エイトマンの脳裏に「二重人格」という単語が過る。だが、それは医学的な定義を遥かに超えた、人造の呪いそのものだった。
「あの時の結衣は、それはもう酷かったわ。脳に直接放射線を当てられながら、比企谷八幡がそうなった真実まで聞かされたんだから。苦痛で悶え苦しんだ末に、脳を焼かれて死に追い込まれたわ。まあ、アレじゃ壊れてもしょうがないけどね」
「……っ」
「なんて……ことを……」
沙希が耐えきれず口元を抑え、平塚が結衣に行われた非道な仕打ちに対し、怒りに拳を震わせる。ユイは止まらない。
「そして結衣は生まれ変わった。エイトマン、一度死んで機械として甦ったあなたと同じようにね。ただし、私という存在を宿しながらだけど」
苦痛と絶望の極地で、心の闇が産み落とした嬰児。それがユイだった。彼女はその瞬間から、表の人格である結衣の目を通して、世界を冷徹に観察し続けてきたのだ。
「表の世界に存在する、主人格である結衣を脅かす苦痛と恐怖……それら全てを見定めて、排除するのが私の役目だった」
結衣が再び耐え難い痛みを感じた時、彼女を絶望から守るために、闇に潜んでいたユイが深層心理から迫り上がる。八幡の真実を思い出したことで生じた激痛から逃避するため、今、主導権は完全に入れ替わったのだ。
ユイは、自分の頭を指先でトントンと叩きながら、愉快そうに肩を揺らした。その仕草一つひとつが、これまでの結衣とは決定的に異なる、乾いた残虐性を帯びていた。
「尤も、その死と苦痛のトラウマを呼び覚ますために、ずいぶんここを弄られたみたいだけどね」
ユイは嘲笑うように自分のこめかみを叩く。
「でもね、私はあの子と違って……破壊や殺戮になんの抵抗もない。むしろ好ましいわ。力で他者をめちゃくちゃにするのは……!!」
ユイの顔が、歓喜によって大きく歪んだ。表の結衣は自身の幸福を望み、恐れながらもその力に依存していた。だが、裏のユイはそれとは真逆、暴力そのものを肯定する性質を秘めている。
「だから……ゆっくりと、あの子を私と同じ色に染めてあげたのよ。私と同じように、破壊と殺戮に快楽を感じるようにね」
空間を物理的に凍りつかせるような邪悪な笑みが、校庭を支配した。
目覚めた強大な力を行使するには、由比ヶ浜結衣という少女の精神はあまりにも脆弱すぎた。
だからこそ、ユイは結衣の心の隙間に少しずつ、毒を滴らすように語りかけ続けたのだ。
他者を害すること、己の欲望を剥き出しにすること。それがどれほど甘美な快楽であるか、ゆっくりと心の箍(たが)を外して教え込んだ。
凄まじい力を使う喜びを刷り込み、彼女の精神を少しずつ、着実に黒く染め上げていく。その先にこそ真の幸福があると、信じて疑う余地もないほどに。
「なんのために……そんなことをしたんだ?」
エイトマンは、目の前の「白い怪物」に対して問いかけた。結衣を守るために生まれたと言いながら、彼女を破滅的な狂気へと引きずり込もうとするユイの行動は、論理的にあまりにも破綻していたからだ。
それに対し、ユイはくすくすと楽しそうに肩を揺らした。
「私たちの力はね、放射線をきっかけとした『精神の傷』を苗床にして生み出されたもの。心の動きが大きければ大きいほど、その出力は増していくのよ……。それがたとえ、歪んだ喜びや憎悪であってもね」
ユイは紅い瞳を細め、獲物を観察するようにエイトマンを見つめる。
「特に、あなたを中心とした人間関係の軋轢は最高だったわ。結衣の中にある歓喜、憎悪、嫉妬……それらを最大限に引き出せる最高のスパイスだった。私は迷うことなく、その『火種』に手を貸した。ただ、それだけのことよ」
そう、すべては己の力を至高の領域へと高めるために仕組まれた、冷徹な計算の結果だった。
「なぜ、そこまで力をつける必要がある? お前の真の目的は何だ!」
エイトマンには理解できなかった。彼女が結衣の心から生まれた守護者であるならば、なぜ結衣が心底望んでいたはずの平穏な日常や、普通の女子高生としての生活を求めようとしないのか。
「それはね……。あなたを試したかったの。私と同じ、本物の『超人』かどうかをね」
「試す……だと?」
エイトマンの電子頭脳が、その言葉の裏にある「真の狂気」を検知し、警戒レベルを最大へと引き上げた。
「私はね、結衣のようにあなたと恋人ごっこや、雪ノ下雪乃と友達ごっこをするつもりなんて全然ないの」
ユイは冷淡に言い放った。その紅い瞳が、傍らに立ち尽くす平塚と沙希を射抜く。それは、道端に転がる石ころを眺めるような、あるいは顕微鏡の下の下等生物を観察するような、あまりにも無機質な視線だった。
「だって、あまりにも馬鹿馬鹿しいじゃない? せっかく人類を超越した存在として生まれ変わったのに、そんな低次元なことに時間を費やすなんて! それに、古い人類なんて……生かすにしろ殺すにしろ、私の指先一つでどうにでもできるわ」
「……何が言いたい」
「第一、この先ずっとあんな下等な生物の相手をしていくなんて耐えられないのよ」
結衣の貌をした怪物の目に、狂気的な光が宿る。
「私は『超人』として生きたいの。そのために、あなたというもう一人の超人と……戦う必要があるのよ」
「……言っている意味が理解できないが」
「私は精神の力で人類を超越し、あなたは機械の力で人類を超越した。全く違うアプローチで『個』を極めた者同士、どちらが本物なのか私は知りたいの。だから、戦ってそれを証明するのよ。──超人と超人として!」
八幡は戦慄した。ユイの人格は、もはや元の結衣から完全に逸脱し、人としての倫理や情緒をすべて削ぎ落とした「純粋な力の意志」へと変貌していた。彼女はその有り余る超能力で、自らの存在証明を完遂しようとしている。
「あなたが人類の
語りながらユイが掌を開くと、その中心で自然法則をあざ笑うかのような、高密度の光が渦を巻いていく。
(──エントロピーの無視……。……まさか!?)
「でも、全力でやらないと、それこそ全員死ぬことになるわよ?」
それを理解した瞬間、エイトマンの身体は本能的な危機感に突き動かされ、宙を切り裂く加速でユイに飛びかかった。
しかし、ユイの身体は空気に溶けるようにふわりと消え、代わりに残された『光』が校庭に落ちて行き……
──ゴオッッ!!!
一瞬のうちに、大気が絶叫を上げ、そこには焼け爛れた巨大な『虚無の穴』が穿たれていた。
「あ、ありがと……」
「間一髪……だったな……」
小さく震える沙希と平塚。
二人を抱え、瞬時に加速し爆心地から離脱できたのは、まさに紙一重のタイミングだった。
校庭に穿たれた、赤黒く焼け爛れた灼熱の穴を見てエイトマンは戦慄する。
結衣が残したあの光の塊が、あと少しでも大きくなっていれば、今頃校庭どころか総武高校の校舎ごと全員が飲み込まれていただろう。
「礼はいい。一刻も早く、アイツを止めないと取り返しのつかないことになる」
エイトマンはすぐさまレーダーやセンサーを総動員したが、すでにユイの生体反応もエネルギー反応も消失していた。この場から瞬時にテレポートを使い、移動したのだ。
一体、どこへ……何を考えて……
『ほら、こっちよエイトマン。はやく私と遊びましょう?』
そこまで考えたエイトマンの思考に、無理矢理割り込むようにユイの声が直接響いた。
(遠距離からのテレパシーか。まさか、物理的に遮断されているはずの電子頭脳にまで直接届くとはな……)
脳波の発信先を解析し、再び加速のシークエンスに入ろうとした時。
「待って!」
鋭い声に振り向くと、沙希が不安と決意の混じった瞳でこちらを見ていた。その腕には、先ほどエイトマンが自らパージして切り離した『左腕』が大切そうに抱えられていた。
「これ……まだ、使えるかもしれないから」
沙希が恐る恐る、しかし力強くそれを差し出す。エイトマンは受け取ったボロボロの腕に視線を落とした後、すぐに彼女の目を真正面から見据えた。
「……ほんとは、もっと聞きたいことがあるんだけど、後にしとくわ」
「わかった。後で全部話すよ。……ありがとな、川崎」
エイトマンは、鉄の仮面の下で苦手そうに、しかしはっきりと、その顔に「比企谷八幡」としての笑みを浮かべた。
「私からも頼むぞ。比企谷」
「先生……」
平塚の声に振り返ると、彼女はエイトマンのすぐ目の前までスッと近づいていた。
「由比ヶ浜を助けてやれるのは、お前だけだ。どうか……二人とも、無事でいてくれ」
エイトマンの胸に刻まれた「8」の紋章にそっと手を当てながら、平塚は教え子にすべての願いを託すように力を込めた。
「由比ヶ浜を頼んだぞ、エイトマン!」
「──任せてください」
背後で爆散した衝撃波を推進力に変え、エイトマンは「破壊の天使」が待つ虚空へと、青白い火花を散らして飛び立った。
──
ナノマシンを総動員し、千切れた左腕を接合する応急処置を済ませたエイトマンは、早朝の空へと飛び出した。加速中に捕捉した脳波の足跡(トレース)を、電子頭脳は確実に捉え続けている。
(この移動データ……環状道路か!?)
千葉都心部付近に張り巡らされた環状道路を移動していることを察知し、八幡の思考回路に焦燥が走る。
非常にまずい状況だった。早朝とはいえ、物流の要である道路は車両が多い。何より「ユイ」という人格は、旧人類の被害などこれっぽっちも考慮しないだろう。
(間に合え────!!)
加速装置を全開にし、一気にマッハ5を突破。衝撃波(ソニックブーム)を置き去りにして、エイトマンは早朝の千葉都心に向け加速した。
国道16号に入り、標的との距離が急速に縮まっていく。
「キーーーーン」と空気を断ち割る高周波音が鼓膜を震わせ、エイトマンは銀色の流星となって駆け抜ける。
相対速度の世界では、道路を走る無数の車両が、まるで時間が凍りついたかのようにその動きを止めていた。エイトマンはその静止した模型のような車群の間を縫い、超高速で最短ルートを突き進む。
(──来る!!)
複合センサーにもレーダーにも一切の反応はない。
だが、確信がある。この先に奴はいる。
自分を待っている。
目に見えない巨大な悪意を携えて、破壊の天使がエイトマンという獲物に牙を剥こうとしていた。
──
『観察対象の座標軸が変動。テレポートを使用したと見られます。Eighthがポイントへ追跡を開始しました』
暗室に、オペレーターの無機質な合成音声が響く。壁一面に設置された巨大なモニターには、千葉都心部をマッハ5で駆け抜ける銀色の光──Eighth(エイトマン)と、国道16号の高架上で異形のオーラを放つ「ユイ」の姿が映し出されていた。
「そのまま監視を続けて。エスパーの戦闘データは、思考プロセスの断片に至るまで、一つ残らず記録すること」
モニターの光に照らされたソフィアの横顔は、残酷なほど美しく、そして歓喜に歪んでいた。彼女の声は、長い時間をかけた実験が、ついに最終段階を迎えたことを確信する、至上の愉悦に濡れている。
「思ったより早く覚醒したね? それも君が仕組んだものかい?」
ソフィアの側に控えるアルフが、コンソールを流れる膨大な生体データを見ながら尋ねた。彼の声には、驚きと共に、隣に立つ少女への底知れない恐怖が混じっている。
「そうね。彼女の脳は、私が色々と弄(いじ)ってあるから。その『機能』が、比企谷八幡というトリガーによって完全に開花したのよ」
「君の生体工学に関する造詣の深さには脱帽するよ。まさかこれほどの短期間で、人間の脳の『未使用領域』の覚醒を可能にするなんて」
アルフが顔を振りながら、苦笑を漏らす。
人間の脳は、その全機能の三割も使いこなせていないという。かつてナチス・ドイツの人体実験は、脳に直接放射線を浴びせることで、その未知なる領域の覚醒を図ったが、結果はすべて被験者の脳死という失敗に終わった。
だが、自らを『超人類』と称するソフィアは、その狂気の実験を引き継ぎ、現代の生体工学とナノテクノロジー、そして由比ヶ浜結衣という「最高の素体」を用いることで完成させたのだ。
「あの子の脳に細工した『機能』に潜んだユイが、常軌を逸した物理現象を可能にする。あの子の感情の振れ幅──特に、比企谷八幡への愛憎とトラウマが臨界点を超えた時、彼女こそが人間の頭脳を最大まで覚醒させることができるのよ」
ソフィアはモニターの中のユイを愛おしげに見つめながら、その狂気のロジックを語る。
「まさに、我々に至高の『力』をもたらす天使、というわけね」
「僕の目にはちょっと天使には見えないなあ。悪魔の間違いじゃないか?」
「そう? 彼女が我々に与える計り知れない利益を考えれば、天使と形容する以外に相応しい呼称は無いと思うけど?」
二人の傲慢で冷酷な笑い声が、人命を単なる実験材料としか見なさない狂気の工房に、いつまでも冷たく響き渡った。
──
超高速移動を続けるエイトマンの視界が、一瞬にして爆ぜた。
「──ッ!!」
空気を強引に穿つような『波動』を感知した瞬間、エイトマンは反射的に地を蹴り、空中へと逃れた。直後、彼がいたはずの道路が巨大な力に抉られ、醜いクレーターが口を開ける。
着地し、体勢を立て直したエイトマンの眼前に、さらなる絶望が迫った。
それは、数台の乗用車が飴細工のように捻じ曲げられ、重力法則をあざ笑うかのように宙を舞いながら襲いかかる異常な光景だった。
(センサーに生命反応有り……! あの三台に乗車している!)
エイトマンは躊躇(ためら)わなかった。両前腕部から高周波ナイフを展開。激突の刹那、舞い踊るような軌跡で運転席のフレームを正確に解体していく。同時に、内部に取り残されたドライバーたちを鋼鉄の腕で掬い上げ、一気に爆心地から離脱した。
その間、一秒にも満たない。
車両が地に叩きつけられ、爆炎が立ち上る頃には、エイトマンは人命救助を終え、再び元凶に向けて加速を開始していた。
前方からは、次々と道路を粉砕する不可視の波動が押し寄せる。
戦いながらも、エイトマンの聴覚センサーは背後の爆音を拾い続けていた。
人々の悲鳴、呻き、助けを求める泣き声。
「クソッ!!」
最悪の直撃こそ防いでいるが、都心のど真ん中での戦闘は、余波だけでも被害を抑えきれない。思わず悪態を吐いた八幡の意識に、あの透き通った声が割り込む。
『こっちよ、かわいいお人形さん』
「──どこだ!?」
『高架下よ』
すぐさま視線を向けると、そこには高架下の闇に紛れ、膝を組みながら宙に浮くユイの姿があった。
その場を一歩も動くことなく、あれほど強大なサイコキネシスを自在に操る様を見て、エイトマンは改めて戦慄する。
「やはり……由比ヶ浜(あいつ)とは比べ物にならないな」
「当然でしょう? あの子と私では、すべてが違うのよ」
ユイが細い指先を向けただけで、エイトマンの立っていた場所が瞬時に爆散した。それだけではない。エイトマンの超高速移動の先を完璧に先読みしたかのように、逃げ場を塞ぐ波動が執拗に追跡してくる。
(そういつまでも避け切れるもんじゃない! なんとかしねぇと、本当に死ぬ!!!)
ユイに唯一勝る利点である「超高速移動」を駆使し、死神の手から逃れ続ける。
時折、神速の突撃を試みるが、そのすべてがユイのテレポートによって虚空を切らされた。
無様にアスファルトを抉るだけのエイトマンの前に、突如、ユイが姿を現した。
「あーあ。何やってんだか……」
ユイが心底呆れたように声をあげた。
人命を意識しすぎて、肝心のユイへの攻撃が疎かになっていることは、彼女の紅い瞳から見れば滑稽なほどに明白だった。
「でも、ま、そんなところにあの子は惹かれたのよね。ねぇ? エイトマンさん?」
「……やめろ。その『呼び方』は……」
エイトマンの喉から、軋むような低い声が漏れる。その名は、由比ヶ浜結衣が、彼女自身の意志で呼んでいい名前だ。
「──お前じゃない!!!」
エイトマンは再び加速を開始し、ユイの周囲を旋回した。
自分以上の特殊能力、自分以上の出力を持った怪物。
ユイがスペックのすべてにおいて自分を上回ることは、冷徹な電子頭脳がすでに認めさせている。
だが、そんなもので。
そんな数値だけで、勝負が──。
運命が決することなんて、あるはずがない。
「伊達にお前より、修羅場をくぐり抜けていないってことを教えてやる!!」
「──おもしろいじゃない。それなら見せてくれるかしら? あなたの全力を……!」
ユイの周囲で超能力の波動が空間を激しく歪ませ、光さえも屈折させる。
対するエイトマンは、ナノマシンと電子頭脳の限界出力を振り絞り、銀色の閃光となって超加速した。
激突の時は、今、この瞬間に起きようとしていた。
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