ミリ知ら転生超銀河悪役領主   作:新人X

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第一章:知らないなら壊せばいい
第1話:1mmも知らない世界


 4Xゲームというものをご存知だろうか。

 

 それは『探検(Explore)』『拡張(Expand)』『開発(Exploit)』『殲滅(Exterminate)』の4つの要素からなるストラテジーゲームを指し、俺の最も愛したゲームジャンルだ。

 

 その中にも更に歴史物や剣と魔法のファンタジー、あるいは泥臭い現代戦。

 多岐にわたるジャンルが存在しているが、中でも俺が好きなのは壮大な宇宙を舞台にしたSF作品だ。

 

 銀河に浮かぶ数多の星を開拓し、多様な異星人と交流し、時には外交で、時には武力を以て制圧する。

 そんな自らの帝国の版図を宇宙の彼方まで広げていく壮大なスケールと、同じプレイは一つ足りとも存在しない無限の分岐に、俺は魅了された。

 

 ただ『愛した』『魅了された』、と過去形なのには理由がある。

 それは現在の俺が、もうそのゲームをプレイできる状況にないということ。

 

 一言で説明するなら、別の人間に転生していた。

 

 いわゆる、異世界転生というやつだ。

 それも普通の異世界ではなく、ゲーム(らしい)世界への転生。

 目が覚めた瞬間に一通り驚き終えたので、今は冷静に自分の置かれた状況を分析してみる。

 

 窓の外には、数多の星々が煌々と煌めいている。

 

 夜空……というか、宇宙だ。

 全体像ははっきりと見えないが、巨大な乗り物で宇宙を航行している途中だと思う。

 

 しかし、その場でプカプカと浮いたりせず、足元にしっかりと重力を感じている。

 どうやら擬似的な重力を発生できるだけの技術力がある、高度な文明に所属しているようだ。

 

 窓ガラス(おそらく、高強度の宇宙用積層ポリカーボネート)に映る自分の顔を覗き込む。

 

 ちょうど少年と青年の中間くらいの年齢で、真っ黒な髪の毛に意志の強そうな碧眼。

 異種族らしき特徴は見当たらず、ごく普通の人間的な形状をしている。

 

 だが、これだけ高度な技術力を持っているということは、見た目通りの年齢であるとは限らない。

 もしかしたら、この見た目で中身は何百歳とか何千歳という可能性も捨てきれない。

 

 さて、ここまでなら単なるSF世界に転生したとも考えられるが、ここがゲームと確信を得られた理由がある。

 

 それは、俺が馬鹿みたいに利便性の悪い、デザイン重視のゴテゴテとした服を着ていることだ。

 もしここが硬派なSF世界なら着用すべきは気密性の高いジャンプスーツか、あるいはマグネットシューズに対応した機能的な作業服であるべきだ。

 

 だが、今の俺が着ている服はどうだ?

 無駄に金糸で刺繍された袖口、重厚過ぎるベルベットのマント、そして何のためにあるのか分からないジャラジャラとした飾り紐。

 気密ハッチにひっかけて死んでくれと言わんばかりの、『見栄え』だけにステータスを全振りした貴族服。

 

 こんな非合理なデザインが許されるのは、ビジュアル重視のスペースオペラくらいだろう。

 つまり、ここはあくまで宇宙を舞台にした、登場人物のキャラクター性が高いRPG系の世界だと推測できる。

 

「さて、そこまで分かったとして……どうする?」

 

 一通りの状況を分析し終え、再び窓の外へと視線を移す。

 生前はそれこそ、寝食を忘れてあらゆるSF系のストラテジーゲームを遊び尽くしてきた。

 

 有名な大作から個人制作のゲームまで、あらゆる作品をだ。

 そんな俺でも、こんなバカみたいな格好をしたキャラが登場するゲームは知らない。

 知らないということは、下手なことはできないということでもある。

 

 ストラテジーゲームにおいて、『情報』は他のあらゆる資源よりも重い。

 自軍の立地も、隣接する勢力も、テックツリーの内容も分からないままターンを進行するのは自殺行為だ。

 

 まずは、なんとかして新しい情報を得る必要があるな……と考えていると――

 

「クラウス様、至急のご報告が」

 

 背後からプシューと気密ロックが解除される音と共に、凛とした女性の声が響いてきた。

 

 おっ、第一村人発見……!

 

 こっちから探さずとも、向こうから来てくれるとはありがたい。

 

 どうやら、俺の名前はクラウスというらしい。

 加えて、『様』付けからやはり、俺の身分が高いらしいのも分かった。

 

 とりあえず、こいつからさらなる情報を聞き出そうかと振り返った瞬間――

 

「――ッッ!!」

 

 彼女の顔を見て、俺は稲妻に打たれたような衝撃を受けた。

 

 流れるような銀色の長髪。

 知的な印象を受ける右目のモノクル型ウェアラブルデバイス。

 身にまとっているのは隙のない軍服で、その美貌は純氷のように整っている。

 

 衝撃の原因は彼女が超銀河級に美しかったから、とかそんな単純なものじゃない。

 いや、確かに美しくはあるのだが、もっと衝撃を受けるくらいの重大な情報がその容姿にあったからだ。

 

 端的に言えば、このゲームのことは全く知らないが、俺は彼女のことを知っていた。

 

 間違いない。

 

「SNSでいつも、バニーガール姿のファンアートが流れてきてた人だ!!」

 

 俺は唯一、この世界について知っている情報と出会った。




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