ミリ知ら転生超銀河悪役領主   作:新人X

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第7話:白衣とギャルとロボット

 ……作るか! 人型機動兵器(ロボット)

 

 そう思い立ってからの俺の行動は速かった。

 善は急げ、そして死にたくなければもっと急げだ。

 

 まず、ヒルデに指示をして、兵器開発に精通した機械工学の専門家を探してもらうように頼んだ。

 現状の俺のレベルはまだ低く、一人で開発に必要な全てのスキルを賄うことはできない。

 足りない部分を補う、スペシャリストたちのチームが必要だ。

 

 だが、そんな都合の良い人物が簡単に見つかるわけが……あった。

 ヒルデが端末を叩いてものの数分で掘り出した情報は、まさに灯台下暗し。

 なんと、現在この本星ローレライにドンピシャな人物が潜んでいた。

 

 ライラ・ブラウン博士。

 かつて、帝国中央の工科大学で次世代推進装置の研究をしていた機械工学の専門家。

 しかし、研究内容の異端さと素行不良によって追放され、今は自前の宇宙船で少数のチームと共に銀河を旅して各地の環境データを収集しているらしい。

 

 それが、ちょうどライン家の本星に停泊していたとは、なんたる僥倖か。

 最悪の状況から一転して、俺の方へと風が吹いてきているのを感じながら、俺はその人物のもとへと向かった。

 

 ***

 

 案内されたのは首都ドラッヘンブルクの第三宇宙港。

 その片隅に停泊している中型の輸送船だった。

 

 外装には派手なグラフィティアートが描かれ、改造に改造を重ねたであろう歪なシルエットは、まさに『異端』といった趣だ。

 

 タラップを登り、船内へと入っていく。

 中は雑多な機材が転がる船内ラボという感じの様式になっていた。

 

 その奥から、気怠げな声が響いてくる。

 

「んぁ~……誰が来た~……? 超眠いから後にして欲しいんだけど~……」

「この惑星ローレライの領主クラウス・フォン・ラインだ。事前に連絡はしてあったはずだが?」

「あ~……? 領主様ぁ……? 事前の連絡……あったようななかったような……。てか、何の用っすかぁ? 停泊料ならちゃんと払ってるはずですけど~……」

 

 眠そうにしながら奥の扉から現れた人物を見て、俺は目を疑った。

 

 ギャル。ギャルだ。

 それもコテッコテの平成ギャル。

 

 白衣の下は、露出度の高いキャミソールとショートパンツ。

 金髪をベースに、絵の具を盛ったパレットをぶち撒けたようなマルチカラーヘア。

 工作作業には不向きそうなデコラティブなネイルに、ルーズソックスまで履いている。

 

「……これが本当に、例の博士なのか?」

「はい、こちらが帝国機械工学界の異端児……ライラ・ブラウン博士本人に間違いありません」

「うぇ~い……天才美少女科学者ライラ・ブラウンで~す……ふぁ、ねむ……」

 

 欠伸をしながら決めセリフっぽいものを放つギャル。

 

 異端すぎるだろ。

 ただ、このキャラの濃さから絶対に原作の中心人物の一人だなと確信できた。

 

「はじめまして、ブラウン博士。高名な貴方に、こうしてお会いできて光栄です」

「どもども~。で、何の用っすかぁ?」

「時間は少ないから単刀直入に言わせてもらう。俺と一緒にロボットを作らないか?」

「はぁ? ロボットぉ?」

 

 彼女はまだ半分だけ目にかかっていたアイマスクを持ち上げ、呆れたような顔で俺を見る。

 

「あー……領主様もそういう趣味(オタク)の人? でも、現実とアニメをごっちゃにしちゃダメだよ。ロマンはロマンとして――」

「俺は本気だ。宇宙空間で運用可能な、有人搭乗型の人型機動兵器。これを開発したい」

 

 俺が熱っぽく構想を語ると、博士は『あー、はいはい』と手をひらつかせた。

 

「あのさぁ、領主くんさぁ……。それ、無理だから諦めなー」

「無理? 理由は?」

「まさか兵器開発の歴史も知らずに言ってんの? 人型兵器なんて、過去に何百回も模索されて、その全部が失敗してんだから」

 

 彼女は爪先で落ちていたデバイスを蹴り、空中にデータを表示させた。

 

「確かに、ロボはロマンだよね。だから、みーんな、作りたいのよ。巨大ロボからパワードスーツまで、これまで色んな形で試されてきてんの。でも、結論は一つ。宇宙空間での戦闘においては『的でしかない』ってこと」

 

 彼女が続けて俺に、『如何に人型有人兵器が無力であるか』を語っていく。

 現在の戦闘艦が標準搭載している高度な射撃管制システムの前では無力に等しい。

 いくら姿勢制御技術や推進力が高度になったとしても、人の操作ではAIによる統制された射撃の的にしかならない。

 

 砲撃に耐えられるように機動力を捨てて、装甲を厚くするならわざわざ人型機動兵器である必要がなくなる。

 結局どのようにしようとも、長距離高出力砲撃を是とする現在の宇宙艦隊戦のドクトリンを覆すことはできない。

 

「……というわけで、全部時代の徒花として消えてったわけ。確かに、今の兵器は如何に早く見つけてどれだけ遠くから先に高出力の砲撃を行うかの一辺倒でつまんないけどさ。有人機動兵器なんて、無理無理カタツムリ。そんなおもちゃに使う金があったら、自爆ドローンでも量産しなー。じゃ、話はこれで終わりってことで。おつまるすいさ~ん」

 

 手をひらひらと振りながら、奥の部屋へと戻っていくギャル。

 

 完璧な正論だ。

 この世界の常識に照らし合わせれば、彼女の言うことは100%正しい。

 俺もそこまでは調べたし、検討した上で不可能だと判断した。

 

「まあ、待て。これを見ても同じことが言えるか?」

 

 俺は手元のデバイスを操作して、宙空にホログラムを展開させる。

 そこに表示されているのは、俺が描いた青写真。

 だが、それは彼女が切って捨てた『単なるロボット』の仕様書ではない。

 

「『U.S.E.R.搭乗型』の人型機動兵器……?」

 

 それを見た博士の目の色が、科学者のそれへと変わっていく。

 

「そうだ。俺が提唱するのは、人の感覚で操作可能な『U.S.E.R.』が持つ理外の戦闘能力をそのまま転化したロボットだ」

「……確かに、その発想は過去にもあったよ。U.S.E.R.の戦闘能力や星源術の力をフィードバックした機動兵器ね」

 

 へぇ~……やっぱり、宇宙は広大だな。

 俺と同じことを考える奴もいるんだ……と、感心する。

 

 対して博士は、『でもね』と続けていく。

 

「コストが全く見合わない。U.S.E.R.がどれだけ希少か分かってる? 知的生命体がおおよそ1京人いて、その中に1人いるかどうかって存在だよ。現状、観測可能宇宙で確認されている個体はほんの100人未満……そんな銀河一つよりも重い価値のものを、戦術兵器の一パーツとして使うなんてできるわけが――」

「できるんだな、それが」

 

 呆れる博士の声に被せて、俺は断定的に言う。

 U.S.E.R.がそこまで希少だったのは少し想定と外れているが、それでも計画の遂行には支障がない。

 

「これ、ブリュンヒルデ。ライン家に仕える首席補佐官で、俺の忠実な部下」

 

 俺は一歩下がって待たせていたヒルデを博士の前へと出す。

 

「んで、戦闘能力特化型のU.S.E.R.でもある。ヒルデちゃん、この話を俺から聞いた時にどう思った?」

「超銀河級のバカかと思いました」

 

 相変わらずの辛辣な言葉選びで第一声を発したヒルデが、更に続けていく。

 

「ですが、やれと言うのであればやります。私はライン家の血の守護者です。堕ちたそれを断つのが私の役目であるなら、命を賭して尊きそれを繋ぐのもまた私の役目なれば」

 

 一切表情を変えずに、ガンギマリの激重覚悟を発露するヒルデ。

 博士も若干引いているが、その顔にはやや狂気じみた異端研究者の笑みが滲んでいた。

 

「他に、足りないものは?」

 

 俺も不敵な笑みを浮かべ、博士にもう一度問う。

 

「領主くんさぁ……」

 

 ポリポリと寝癖のついた頭をかきながら、俺の前まで歩み寄ってくる。

 長い爪の指先が、俺の胸元をトンと突いた。

 

「それ、めっちゃテンション上がるじゃん」

 

 ニカッと笑った彼女の手を握り、硬い握手を交わす。

 

「おーい! 全員起きろ~! 仕事だ仕事~! 超絶ヤバいパトロンが見つかったよ~!」

 

 彼女が後ろのラボに向けて、大きく声を張り上げる。

 それを合図に、雑多な機材の陰から、これまた個性的な研究員たちがぞろぞろと顔を出す。

 どうやら彼女のチームも、類は友を呼ぶで変人揃いのようだ。

 

 こうして、U.S.E.R.搭乗人型機動兵器(仮)の開発は第一歩を踏み出した。

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