「以上がことの顛末だ。なぜ、あいつがソリッドビジョンを実体化させられたのか不明。あいつが所持していた謎のカードはディスクに記録はあることが海馬コーポレーションのメインシステムから分かったが実物は消失。あいつもいまだに気絶し意識は回復していない」
「・・・わかりました。報告ありがとうございます。もういいですよ」
・・・
「隠しているつもりですか?」
「何のことですか?」
俺の目をごまかせると思っているのか?
こいつが俺に向けているのは軽蔑の目だ。おおかた自分の流派の禁じ手のカードを使われていることが気に入らないのだろう。
この鮫島校長。かつてはサイバー流という流派の師範をしていたという。
サイバー流とは、サイバー・ドラゴンを主力とし、カウンターによるパーミッション、効果ダメージを与えるバーン、ロック戦術、コントロール奪取などを外道とし、相手に全力を出させそれを打ち破り、相手を尊重するというリスペクトデュエルを重んじる流派だ。
そんなこと俺に言わせれば「なんだその寝言は」だ。
相手に全力を出させるなど、早々できるわけがない。
仮にそれを出させたとしても、それを叩き潰すことのどこにリスペクトがある?
そして、外道とする戦術に勝てば先述の存在を否定し、負ければそれを卑怯と非難するという話を聞いている。ペガサス会長もこの精神を持つものが増えたことで自分のカードの一部が非難され捨てられている現状を嘆いていた。
「そう言えば、遊城や丸藤に校外から呼ぶデュエリストとの制裁タッグデュエルを言い渡したらしいですね?負ければ退学だとか」
「・・・・ええ、そうですがそれが何か?」
「あんたは本当の無能だな」
「なんですと?」
「聞こえなかったのか?無能といったんだよ」
俺はこの話を虚や明日香から聞いた。
罪状は立ち入り禁止区域に指定されている廃寮に入ったので退学ということらしい。
だが、初日に確認したこの学校の警備体制は正直言ってヒドイの一言に尽きる。
校内を巡回する警備員はたった二人の交代制。寮の管理に関しては寮長の教師に一任している。
校外については十数機設営されている監視カメラのみ。故になぜか怪しい研究所が勝手に設営され、放置されている。
この中で、立ち入り禁止になるほど危険な廃寮を監視できるか?
応えは否だ。
あんな立ち入り禁止テープのみでは誰かが入ることを止めることはできない。
そもそも生徒手帳には廃寮には立ち入り禁止ということしか書いていない。なのに退学というのはおかしすぎる。
管理がおざなりなくせにこれはいくらなんでもふざけているとしか思えない。
「加えて、今回の事件において犯人確定の方法、時間、理由、対応すべてが最低だ。まず、犯人を匿名の電話による通報のみで決めつける。これは不確定すぎる。事実として天上院明日香、前田隼人の両名もいたのに報告されなかったのはおかしい。特に前田隼人は常に遊城、丸藤両名とともに居たのにかかわらずだ。
次に時間。先ほど述べた4人全員に廃寮を出た時間を聞いたところ午前4時ごろ。そして、倫理委員会が連行したのは6時半。いくらなんでもこの短時間で犯人を確定することなどできるわけない。FBIのトップ捜査官でも不可能だ。なのに部屋のドアを爆破してまでの強行突入に踏み切る証拠でもあったのですか?
理由、は、さっき言った通りの生徒手帳と校則の曖昧さ。
そして、対応。こういったことはまず、なぜ立ち入り禁止なのか理解させ、反省文なり、謹慎させるなりしてこれからの学生生活で生かさせるのが一般的であり最良だ。いきなり有無を言わさず退学というのは生徒の未来を奪う教師として最低の手段だ。本来なら、何度も校則を違反した生徒に取られる最終手段なのだからな。今回の件も制裁デュエルで退学させるのではなく、レポートや反省文で罰を与えるべきだ。
さて、これらの決定権は倫理委員会だけでなく、校長にも与えられているはずなのになぜこれらを正さなかった?それはあんたがこんなことに気づけなかった無能だからだ」
「ぅう・・・」
俺の言葉に何も言えないようだな。
「ちなみにこのことはペガサス会長や海馬に報告済みだ。精々、言い訳を考えておくんだな」
校長室を出た後、俺はデッキ作りに入ったのだが行き詰まり、気分転換に釣りをしていた。
釣果は今のところカサゴ5匹、べら7匹、タコ1匹といったところだ。なぜタコが釣れる?
そうしていたらなぜか、眼鏡こと丸藤がやってきていかだを造り始めた。
なにやってんだ?
すると携帯端末にメールが来て開いてみると遊城からで
『翔がどっかいっちまった。探すの手伝ってくれ』
と書かれていたので
『眼鏡なら目の前でいかだを作って自殺しようとしている』
と返信した。ここからいかだで出行くなんて自殺行為以外の何物でもないからな。
しばらくしたら、遊城たちがいつの間にか来て、なんか熱いことをいい、どこからか湧いてきたこの学園の
ちなみにこのやり取りの間にべらがさらに3匹、そして、クロダイが釣れた。これにはさすがに驚いた。
ポイントを変えてみるとそこでは遊城とカイザーがデュエルをしており、《サイバー・ツイン・ドラゴン》がいた。サイバードラゴンか。
で、遊城は《E・HERO マッドボールマン》で耐えようとしたのだがパワーボンドで攻撃力8000《サイバー・エンド・ドラゴン》を召喚してデュエルは終わった。
「カイ君、何をしているのですか?」
おそらく遊城のメールで呼び出されたのだろう虚が俺を見つけて聞いてきた。結がいないのはまだ安静にしていないといけないからだろう。
「息抜きの釣だ。ちなみにクロダイが釣れた」
「凄いですね」
俺と虚がそう話していると
「・・・火渡カイだな」
カイザーが話しかけてきた。
「ああそうだが」
俺は応えながら釣りの準備を続ける。日が沈んだのであまり期待できないが一時間は粘るつもりだ。
「俺とデュエルしてほしい」
「それはお前がサイバー流の後継者だからか?」
エサはオーソドックスにゴカイをつけ大きく振りかぶって投擲。いい位置だ。リールを回しながら竿を動かす。
「確かに俺はサイバー流の後継者だ。故になぜおまえがサイバー流の裏デッキを使うのか興味がある」
「校長から聞いたのか?」
「ああ、さっき聞いた。そして、その時に君を倒せとも言われた」
あの狸爺。愛弟子に気に入らない俺の相手をさせ、腹いせをする気だな。
「それ俺に行っても良かったのか?」
「正直俺は師範の考えには反対だ」
お、竿に反応アリ。
にしてもまさかこいつがこんなこと言うとは。てっきりあの狸爺の意見を全面的に肯定すると思っていたのだが。
「最初は師範の相手をリスペクトするという精神に従って、そしてその教えに従ってデュエルをしていたが一度道場を離れ、中等部や高等部で様々な相手や戦術と相手をしていると、外道と教えられた戦術を使う相手も俺と同じくカードを愛しているということに気が付いた。だから俺は今まで教えられたリスペクトに疑問を持った」
そうだ。カードや戦術に外道も卑怯もない。カードとして存在しているならそれを否定する権利なんて誰にもない。
「だからこそ知りたいんだ。サイバー・ダークを使う君のカードに対する思いを」
「・・・わかった」
「ならば「だが!」」
俺の言葉にうなずき、ディスクを起動させようとするカイザーを止める。
「俺のデッキは今作成中だ。持ってきているデッキにはサイバー・ダークのカードは一枚も入っていない。デュエルなら次の月一試験の時だ」
「わかった。君とのデュエル楽しみにしている」
そういってカイザー、否、丸藤亮は去って行った。
「・・・お、釣れた。・・・・タコか」
それから数週間後、制裁デュエルの日がやってきた。
何の因果か、追一試験の日に。なんでも呼び寄せたデュエリストの都合のつく日が今日だったらしく実技試験の前にやることになったらしい。
そして、この制裁デュエルの条件がいくつか変更になった。
遊城と眼鏡が敗北した場合は退学だったのが、一か月間の謹慎とレポート300枚と二週間の奉仕活動。勝った場合は奉仕活動とレポート100枚ということだ。
海馬やペガサス会長がいろいろアカデミアの対応を指摘し問題点をあげた結果だ。
あ、あと倫理委員会が無くなった。
遊城たちを連行する際の強硬手段を俺が報告し、結が過去のデータを洗ったところ過激な連行行為を何度も行っていたことが分かったため、委員会の上層部の何人かがクビにされていった。
で、今は遊城と眼鏡のタッグデュエルが終わったところだ。
相手は
そして、今から行われるのはもう一つの制裁デュエル。
受けるのはあの
意識を取り戻した
説明するまでもないがあのバカの罪状は先日の一件だ。
No.に欲望を暴走させられていたと言ってもそれで許されるわけはない。結果
女子寮への侵入。壁の破壊。不特定多数の女子生徒にわいせつな行為を働こうとしたという証言。今までの迷惑な態度と注意しても一向に直す気が無し。
それらが重なり、退学ということが決定された。
これには海馬たちも納得している。というか海馬は自分の経営する学園でそんな生徒が幅を利かせようとしていたことに怒りを隠せず、さらに鮫島校長に今まで何をしていたのかと画面越しに怒鳴りつけたという。
そしてその相手は
「ふぅん、貴様が火渡の言っていたカスか」
そう、海馬ボーイだ。
『それでは制裁デュエル第二試合。オシリスレッドの皇剣対海馬コーポレーション海馬瀬人社長のデュエルを開始するノーネ』
「「デュエル!」」
海馬:LP4000
バカ:LP4000
「先攻は貴様だ」
「へへへ、このデッキなら楽勝だぜ。俺のターン、ドロー!」
相変わらずのかっこつけドローだ。
「手札を1枚捨ててチューナーモンスター《クイック・シンクロン》を特殊召喚。さらにさっき捨てた《ボルト・ヘッジホッグ》の効果発動。チューナーがいるとき特殊召喚できる!」
クイック・シンクロン
ATK:700
ボルト・ヘッジホッグ
ATK:800
「レベル2のボルト・ヘッジホッグにレベル5のクイック・シンクロンをチューニング!集いし怒りが忘我の戦士に鬼神を宿す。光さす道となれ!シンクロ召喚、吠えろ!《ジャンク・バーサーカー》」
ジャンク・バーサーカー
ATK:2700
「《チューニング・サポーター》を守備表示で召喚。カードを一枚伏せてターンエンド!」
バカ
手札2
ジャンク・バーサーカー
チューニング・サポーター
伏せ1
「ふぅん、俺のターン、ドロー!」
海馬がカードを一枚ドローする。その姿はさすが伝説のデュエリスト。貫禄が出ており、バカとの差は一目瞭然だ。
「手札から魔法カード《手札抹殺》を発動!お互いの手札を墓地に捨て、同じ枚数分デッキからドローする」
いきなりの手札交換に周りの生徒は、海馬が手札事故をしたのかと騒ぎ始める。
全く、少しは落ち着け。
手札交換=手札事故の方程式は絶対じゃない。
「さっき捨てられた《
海馬:手札5→8
「そして、魔法カード《古のルール》を発動!手札のレベル5以上の通常モンスター
ATK:3000
青い眼を持った白い龍が現れ、会場にその咆哮をとどろかせる。
「《正義の味方 カイバーマン》を召喚!」
正義の味方 カイバーマン
ATK:200
「このカードをリリースすることで手札から
カイバーマンが消え、もう一体の
その光景はまさに圧巻の一言だった。
「
「罠カード発動!《屑鉄のかかし》。相手の攻撃を無効にする。そして、このカードは再びセットされる!」
「ふぅん、防いだか。だが、ブルーアイズはまだいる。もう一体の
「くぅ」
バカLP4000→3700
海馬はなぜか客席の俺を見る。しかし、すぐに視線を前に戻す。
「俺は、これでバトルフェイズを終了する。がまだ俺にはやることがある」
「やることだと?」
「ふぅん、いい機会だ。貴様には当て馬になってもらう。二体の
「なんだと?!」
海馬の言葉に俺は驚いて、声をあげてしまった。
二体の
「二体の
渦が白い光を放ちながら爆発し、そこから一体の白いドラゴンが現れた。
ATK:3500